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ねぶの詩集2 作者:ねぶ

第32回   『タイタニック』
『タイタニック』

行き先もわからず、海辺を流されている一隻の船

僕らの乗っているこの船には穴が空いている

その穴からは澱んだ水が次から次へと流れ込む

穴を補修しなければ、この船は早晩沈むだろう



この事態に焦った僕は周りを見渡してみたけれど

乗客のみで船長や乗組員などは見当たらない

乗客の中にはこの穴に気づいていない人もいる

そんな中で僕の不安はますます募っていく



船内放送や休憩室にある雑誌によれば

船長や乗組員は穴を補修するでもなく

船内で最も穴から遠い場所へ逃げているらしい

そして1隻だけのゴムボートで脱出の計画だとか



そんな船員たちではアテにならない

僕らは素人作業でこの穴を補修するしかない

とりあえず穴の存在を大声で叫んでみるとしよう

本当に手遅れになってしまう前に……

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【あとがき】
穴も問題なのですが、乗客が穴に気づいていない、
あるいは穴に無関心であることが問題かと思います。
身辺に水が押し寄せてきたらもう手遅れなんですが。

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