『花』
飢えた獣のような目で僕は花屋を眺めていた
美しい花のいくつかを買ってみたけれど
ズボラな僕はそのうち手入れを怠るようになり
だいたいが美しい花を枯らしてしまうんだ
そのうちに花屋からも足は遠のいていった
花を嫌いになったわけじゃない
花を枯らしてしまうことが怖かったんだよ
生花を諦めた僕は造花を眺めて微笑んでいた
満足じゃない 不満じゃない それでいい
そんな風に思っていた 思い込もうとした
忘れた頃に庭を眺めてみると花が咲いていた
僕が植えようとしたわけじゃないんだ
それでも、花は力強く咲き誇ろうとしていた
せっかく咲いた花を枯らすわけにはいかない
僕は気付けば、こまめに水をやっていた
よくよく見てみれば、僕の足元に妙なひもがついていた
ひもをたどっていけば地面の下まで続いているみたい
行き着く先はどうも庭の花の樹の根っこのようだった
目に見える枝葉で触れ合っていたとしても素敵だけれど
地下茎のようにつながっていられたことがなんだか嬉しい
目の前の鮮やかな花びらがいつか散ったとしても
その樹の新緑だって紅葉だって楽しめると信じていたい
そして季節は巡り、来年には新たな花を咲かせるのだろう
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