「ふぅ・・・。」
カナが、溜め息をついた。難しい問題を抱えているからなのだろうか?なんだか、カナの表情が、とても暗く見えてきた。
「大丈夫?」 「あぁ、大丈夫。・・・大丈夫なんだけど・・・、彼女、精神的にかなり弱ってるから、心配でね。」
そっかぁ・・・そうだよね。まだ、若いのに、辛い経験をしてしまっているんだもの。ただ、いとこに精神科医のカナがいたのは、不幸中の幸いだったのかもしれないけれど。
「彼女、たまに、元彼の写真を見たりしててさ。まだ、完全に忘れたわけじゃなくって。もし、彼女の両親が、全てを許してくれたとしても、彼女の心のケアは、難しいんじゃないかなって、そう思うんだ。」
聞いているうちに、私まで辛くなってきた。寒さも身にしみるし。
話をしていると、あっという間に駅に着いてしまった。しかも、私とカナは、反対方向の電車に乗る。
「じゃ、またね。」 「カナ、頑張ってね。」 「ありがとう!じゃね!」
手を振って、それぞれのホームへと向かって行った。
私がホームにつくと、すぐに電車が来たので、反対側のホームにいるカナを探すことなく、電車に乗った。
吊革につかまりながらも、カナが気になった。カナのいとこもだ。大変な問題を抱えていると思うと、助けてあげたい。だけど、どうすればいいのだろう?今は、励ましの言葉をかけることしか、私には思い浮かばない。
地元の駅に着くと、駅前のコンビニからお父さんが出てきた。
「あっ。」
私が、声を出すと、すぐにお父さんが気付いて、私のほうを見た。
「おお、咲子、今、帰りか?」 「そうだけど、何を買ったの?」
そう言うと、コンビニの袋を渡された。
どれどれ・・・
中を見ると、中華まんがたくさん入っていた。いろんな種類の中華まんを買ったんだ。お土産に人数分の中華まんを買ったみたい。だけど、誰が何を好んでいるのかまでは気にしていない様子。
「これは、肉まんで、これはピザまんかな?」
弟二人は、二人ともあんまん好き。だけど、あんまんは、一つしか入っていない。
「あんまんは、一つしか買わなかったの?」 「あぁ、食べたかったか?」
いやぁ・・・、私じゃなくて、竜と優のことだったんだけどなぁ。けんかしなきゃ良いけど。もう、そんな年でもないかなぁ?
「竜と優が、取り合いにならないと良いんだけど。」 「そうか。二人ともあんまんが好きだったんだなぁ。」
すっかり忘れていたみたい。前にも同じようなことがあったなぁ。同じようなことだらけとも言えるけれど。
「ただいまぁ。」 「おかえり、あら、一緒だったの?」
お母さんが、驚いて迎え入れてくれた。私は、何故かコンビニの袋をずっと持たされていた。手渡されてから、ずっと持っていたんだっけ。返しておけばよかったなぁ。
「これ、お父さんのお土産。」
そう言って、テーブルの上に置くと、お母さんが竜と優を呼んだ。二人は、すぐにやってきた。
さぁ、ここからが問題。二人は、あんまんを取り合うのでしょうか?もうそんな年じゃなければいいんだけど・・・。
ガサッ
竜が真っ先に袋を開けると、あんまんを見つけ、手にとり、すぐに頬張った。それを見ていた優が、あんまんを探し始めた。しかし、あんまんは、一つだけ。それを知った優は・・・。
「あんまん、一つしかなかったのかよ・・・。仕方ない、肉まんで我慢するか・・・。」
けんかはしなかったけれど、優は落ち込んでた。恨めしそうに竜を見ながら肉まんを優は、頬張った。
ピザまんは、私が、カレーまんはお父さんが、エビチリまんはお母さんが食べましたとさ。
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