ガチャッ
お!お客さんだ!・・・と思いきや、ドアのところに立っているのは、カナだった。
「あー!カナ!」 「あー!サキじゃん!驚いたじゃないの!」
それは、こっちの言う台詞!と思ったけど、これを言うと、話が終わらないので、それは言わないで置いた。
「カナ、久しぶりじゃない。何か、食べる?」
まりっぺの言葉に、カナは、コートを脱ぎつつ、私の隣の席に座り、すぐにメニューを手にとって見た。が、しかし・・・。
ジローッ
私が注文したミートソースを作っている厨房をまじまじとカナが見た。すると・・・。
「私もサキと同じのにする。」
出ました!人が食べているのを見ると、それが食べたくなる病。と言っても、今回は、まだ食べてないけど。
「そうそう、サキ・・・年下の君とは、その後どうなのさっ!」
突然、カナが、嬉しそうに話し出した。しかも、年下の君って?これは、きっと牧野君のことだ。私が、相談したばっかりに、勘違いされるだなんて・・・。
「どうもこうもないわよ。その年下の彼は、依然として元気がないのよね。無理しないようにとは言ってみたけど、あんまり効果がない見たい。」 「ふむ・・・。私の病院に連れてきたら?」
病院かぁ・・・。それが一番良いのかもしれないけれど、きっと、牧野君は嫌がるだろうなぁ。突然、私が病院を紹介したら、牧野君は驚くに違いない。
「行かないと思うなぁ。」 「そう?精神科とかって、偏見持ってる人もいるから。でも、そんなことを言ってる場合じゃないでしょう?早めに治療するのが一番よ。」 「そう言われてもねぇ・・・。」 「大して重い症状でなくても、来てる人はいるのよ。」 「そうだろうけど・・・。でも、いざ行くとなると、どうかなぁ・・・。」
私は、牧野君を病院へ連れて行く自信がない。ただでさえ、「大丈夫」と言って、それ以上の話をしないのだから。
「なんだか、深刻そうな顔して・・・。」
コトッ
まりっぺが、出来立ての料理を私たちに出した。料理を出されると、二人してすぐに食べ始めた。
「どうかしたの?」
まりっぺが、心配そうに言うと、カナが話し出した。
「サキの後輩のことなんだけど、うちの病院にその人を連れてきたら?って言ってたところよ。」 「カナの病院ってことは、精神科?」 「そう。だけど、きっと、彼は着いてきてはくれないと思うんだ。」 「わかるなぁ。なんか、精神科って言われると、ちょっとねぇ・・・。」
私たちの言葉に、カナはあまり嬉しくない様子。
「そうやって、放って置いて、取り返しのつかないことにならなきゃ良いけど。早めに、治療させた方が、絶対に良いと思うから。」
確かに、カナの言うとおりだと思う。とは言え、本人に行く意志がなければ、仕方がないのでは?
パクパク
ミートソースを二人して食べていて、ふと思った。
「ねぇ、まりっぺは、いつ食事してるの?」 「私?早めに、夕食は済ませてるのよ。昼間は、お姉ちゃんが手伝ってくれるから。帰る前に、夕食を済ませてるから。」
なるほどねぇ。一人で、全部やっているってわけじゃなかったのか。一人でやっていると思っていたから、いつ、どうやって食事してるのか、気になっていたのだった。
「サキも、変な質問するねぇ。」 「変・・・かなぁ?」
カナに突っ込まれた。気になったから、聞いただけだったのに。
「昼間は、お姉さんが手伝ってくれてたんだ。全然、知らなかったよ。」 「これでも、一応、家族経営ってやつだから。お姉ちゃんが手伝ってくれたり、お母さんが手伝ってくれることだってあるしね。」 「で、これからは、サキの弟がそこに加わると。」 「おいおい!」
3人で、話が盛り上がってきた。周りのお客さんはというと、別に気にしていないようだった。黙々と食事をしたり、インターネットをやっていたり。
「そう言えば、弟といえば、事故で友達を無くしたのって、優君だったっけ?」 「ううん。竜の方だよ。」 「そっかぁ。」
カナが、質問してきた。すっかり忘れていたことだった。竜が、親友を亡くしたことを・・・。
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