突然、隣の席に座ってきた市原君。どうも、良い印象が沸いてこない。
引き気味の私をよそに、市原君が、私のお弁当を覗き込んできた。ちなみに、私のお弁当は、弟の優が作ってくれた特製弁当。栄養も彩りも抜群!そんな素敵なお弁当をいつも作ってくれるんだから。好きじゃなきゃ、やらないだろうなぁ。
「おっ!うまそうだなぁ。でも、これだけで足りるのか?俺の弁当で好きなのがあったら、取っていいから。」
そう言われても・・・。そんなにたくさん入らないでしょう。私の特製お弁当は、2段重ねだし。男じゃないんだから、そんなに要らないでしょう。
「遠慮しとく。」
と、私が言うと、大沢さんが、もの欲しそうに・・・。
「私、から揚げが好きなんですよ。もらってもいいですか?」 「あぁ、良いよ。どうぞ。」
二人のやり取りを見ていて、牧野君は、今ごろどうしているのかが気になった。私は、いつも市原君を二人で食べていると思っていたから。
「市原君。牧野君は、どうしたの?」 「牧野?一人で、飯食いに行ったみたいだったよ。」
行ったみたいだった・・・そこまでよくは知らないのか。
「いつも、二人で食べてるんでしょう?」 「いや、そうでもないぞ。」
あれ?違うの?想像もしていなかった展開になってきた。それを聞いていた大沢さんも、驚いた表情になっていた。
「私も、市原先輩と牧野君が一緒に食事していると思ってましたよ。そうじゃなかったんですか?」 「あぁ、最近はな。お互いに、食べたいものも違ったりするし、一人の方が、気も楽だしな。」
まぁ、一人の方が気が楽かもしれないけど。女と男って、やっぱり違うんだなぁって、思ってしまった。
それよりも、大沢さんが、食べ終わる前に、私が食べ終えなければ!
って、どうしてか?大沢さんが、先に食べ終われば、きっと、「お先に失礼します」とか言って、私と市原君を二人きりにさせるだろう。
嫌よ、そんな状況、私、苦手だもの。
三人の中で、一番最初に食べ終えて、さっさと自分の席に戻ろう!そう思って、大急ぎで食べた。
「おい、江田。そんなに急いで食べない方が良いぞ。」
市原君に言われたけれど、無視して食べ続け、最初に食べ終えた。食べたら、さっさと弁当箱を片付けて、席を立ち・・・。
「じゃ、お先に〜。」
とだけ言って、自分の席に戻ることにした。その時の二人の表情も見ずに。
|
|