「こんなんじゃ、諦められないよ。」
市原君の激しい表情に、恐怖を覚えた。いつもとは違った表情で、私にはとても怖かった。
しかし、市原君の言うことが、理解できる。その反面、はっきりとその気はないと断っているのだから、好い加減に諦めて欲しいと言う気持ちもある。
温かいミルクティを手に、自分を落ち着かせた。
「その彼のことがなかったとしても、市原君とは付き合うことはなかったと思う。だから・・・。」 「本当にそうかな?もし、そうだったとしても、諦められないよ。ずっと、好きだったんだ。もっと早く、告白しようと思っていたけど、なかなかチャンスがなくて、やっと言えたんだ。」
まっすぐに見つめる市原君の目を見て、辛くなった。チャンスかぁ・・・。私には、それすら与えてもらえなかった。そんなことが、脳裏に過ぎった。
「だからって、私の気持ちも考えてよ。それに、私にだって、相手を選ぶ権利はあるでしょう?」 「・・・。」
市原君が、言葉を飲んだ。
ずっと、市原君の気持ちばかりを押し付けられていたわけで、私の考えもわかってくれたのかどうか・・・。
「そんなに、俺じゃだめなのか?」
弱気な表情の市原君。か細い声で、私に聞いた。 そんな顔で、そんな声で、そんなことを言わないでよ・・・。
「・・・ご・・・。」 「待つよ。江田が、振り向いてくれるのを待つよ。それに、その思い出の彼のことも、忘れる日が来るだろうから。」
そう言って、市原君と別れた。
一人、自動販売機の前で、ミルクティを飲み続けた。
ハァ
一つ溜め息をついた。
高梨さんは、今、どこで何をしているのだろうか・・・。全く、わからない。どう変わっていったのかも、何もかも。
それでも、思い続けている私って、変よね。自分でも思う。思うのに、止めることも出来ない。
もしかしたら・・・、思うことを楽しんでいるのかもしれない。高梨さんと両思いになることを望んでいる?そう思っていたけれど、冷静に考えたら、違うのかもしれないって。
だけど、日記を開くたびに、あの時の思いが蘇ってきてしまう。
だから、やっぱり、今は、他の人を思うことなんて、無理だと思う。
|
|