ふぁ〜あ!
昨日は、なかなか寝付けなかったなぁ。結局、どれくらい寝たんだろう?最後に時計を見たのが、2時でしょう・・・起きたのが、6時・・・。と言っても、時計を見た後、なかなか寝付けなかったんだから、普段と比べると、かなり眠れてないなぁ。
足が重い。市原君と顔をあわせたくないなぁ。でも、大丈夫。きっと、何とかなるはずだから。
「おはようございます。」
人気の少ない職場に入ると、大きな声で、挨拶をした。 真っ先に、自分の席に着いた。何だか、市原君の席を見たくない気分。もう来ているのかどうかも確認が出来てない状態。それくらいはって、思うんだけど・・・。
コトッ
ひざの上に、まだ、かばんを置いた状態で、突然、机の上にカップが置かれた。
まさか・・・。
きっと、大沢さんだわ!って、大沢さんが、朝からお茶を入れてくれるなんてこと、あったっけ?
頭の中で、いろんなことが駆け巡るけれど、それよりも、一言忘れる前に・・・。
「ありがとう。」
そちらを見ずに、言うと・・・。
「どう致しまして。」
低い声が、返ってきた。これは、まさしく市原君の声だ・・・。どう声をかけていいのかわからないなぁ・・・。
何も言葉が出ないので、かばんを整理して、パソコンをつけて、女子トイレへと向かった。 その間、一度も市原君を見なかった。と言うよりも、見られなかった。昨日の今日だもん。私には、無理だよ。
気分を入れ替えて、すぐに自分の席に戻ると、大沢さんが来ていた。
「おはよう。」 「あ、おはようございます。」
大沢さんが、何かを探しているらしい。そうだ!返さないとね。
「大沢さん、昨日、時計忘れていったでしょ?」 「あー!良かった。無くしたかと思っちゃいましたよ。どうもすみませんでした。」
苦笑いしている大沢さん。時計を受け取ると、腕につけずに、机の上に置いていた。また、忘れなければいいんだけど。
「ねぇ、先輩・・・。」
お昼休みに、二人でいつものように、誰もいない会議室でお弁当を食べていると、大沢さんが、不気味な笑顔で話し掛けてきた。
「な、何よ。一体、どうしたの?」 「昨日・・・、聞いちゃったんですよねぇ・・・。うふっ。」
うふって、一体、なんのこっちゃ?全く、想像がつかない。
「どうしたのよ。はっきり言ったらどう?」 「実は・・・、市原さんと先輩が、話しているのを聞いちゃってぇ。」
話?昨日?嫌な予感がしてきた。
「話って・・・まさか・・・。」 「先輩ったら、隅に置けないんだからぁ。もう、やっぱり、市原さんとそう言う仲だったんじゃないですかぁ。」
そう言う仲!?って、一体、どういう仲だ???
「ち、ちょっと待ってよ。何をどこまで聞いたのかはわからないけど、勘違いしてない?」 「勘違いって?だって、私、市原さんが、先輩に告白してるのこの耳で、聞いちゃったんですからね!」
そう言えば・・・、何か物音が聞こえたんだったっけ。あれって、大沢さんだったのか。まさか、聞かれていたとは・・・。
「言っておくけど、私は、市原君のことは、何とも思ってないんだから。」 「えぇっ!?じゃあ、付き合ってないんですか?」
私の言葉を聞くと、大沢さんの表情が、見る見るうちに暗くなっていった。しかも、驚きの表情も覗かせていた。
「もちろん。断ったわよ。」 「そうだったんですかぁ・・・。」
何故か、大沢さんは、肩を落とした。そんなに、私と市原君に付き合ってもらいたかったんじゃ?
それは、無理ね。きちんと終わらせてないものがあるんだから、私には。無理な話だけど、終わらせられるものなら、終わらせたい。
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