高校三年、終夏。
僕たちの恋は失くなった。
反対に耳を傾けなかった君に散々、一方的な暴力を振るい続けていた僕たちの母。 ずっとその暴力に絶えていた君が零した言葉が、耳の奥に残って今でも消えないで残っている。 「あたしたち、何も悪い事してないのにね。」 小さな声で笑ってみせる君の、弱々しい姿を見た僕は涙を必死に堪えた。 僕以上に辛い君が泣かないのに何故僕が泣けるのだろう。 …僕は泣くわけにはいかなかった。必死に、涙を堪える震えが、君を心配させる事になろうとも。 こんなボロボロになっても僕たちの正義を、僕たちの未来を主張する君が…哀しかった。 夏が終わる頃には、君に中々会う事が出来なかった理由、僕は遠に気が付いていた。 君は母親に監禁されていたり怪我をさせられていたり…その度心配する僕に笑顔で「大丈夫」と怪我の理由さえ僕に言わない君を見ているのにも、限界だった。 取り敢えず、今は別れを決断し大人になったら僕たちの事を誰も知らない地で二人暮らそう、そう誓い合った矢先…僕は彼女に二度と会う事が出来なくなった。
夏も終わり心地よい風が吹き付ける季節、君は僕の前から姿を消した。僕はただ、涙を流す事しか出来なかった。
|
|