高校三年、初夏。
君と共に一年の歳月を過ごした。 一緒にいれた事に感謝し、これからも一緒に居れる事を望んだあの日を今思い返しても懐かしく思う。 君の母親は僕の父親を虫けらの如く嫌っているから、僕の事も余計に許せなかったのだろう。 普通の親からみても愛し合う姉弟なんて気持ちが悪い異端の者だろうけど、僕たちは出会ってしまったのだから…諦めて欲しかった。 お互いがお互いを好きになってしまった瞬間から、僕たちは僕たち以外の誰かがどうなっても、関係ないとさえ思った。 僕と言う子供は死んだ事にして、放っておいて欲しかった。 「その傷、どうしたんだよ。」 最近多くなった君の傷、気付いてないわけじゃないしどうしたのかも想像がつく。 だけど、はっきりと言えなくて君から頼ってくるのをずっと待っていた。 「何でもない。」 意固地にそう口を開かない君。僕の身に襲いかかる事なら、一体どんな事が起ころうとも我慢出来る。 …だけど大切な君だけは。 何があっても守ろうと決めた君だけは、傷付けたくないんだ。だから…。
この時は、何も考えられなかった。君を守る…そのことしか。
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