高校三年、梅雨。
僕たちは、姉弟だった事実を知る。
幾ら訪れた君の母親が、僕の母親の面影を持っていても。 君と僕、似ている所がたくさん合ったとしても信じなかった。 僕たちはそれでも、愛し合ったのだから。 「ねぇ。あたし達が惹かれ合う理由が分かったね。」 君が、罪悪感の無いいつもの無邪気な笑顔を見せた。 僕もその笑顔に答えるように、必死に作った笑顔。 だけど、上手く作れなかった。 「そうだね。僕は生まれた時から君といるんだから。」 彼女の全てを受け入れて、彼女と一緒に逃げられると思った。 何処までも逃げられると思った。 そんなの…無理な事だなんて知らずに。
彼女の―僕の―母親はしつこい女だと言う事をすっかり忘れていたのだ。
「何もかも棄てて…逃げるなら一緒に行くよ?」 君に、そんな事を言わせたかったわけじゃない。 何もかも棄てる覚悟、僕にも在ったけど君に全てを棄てさせる覚悟は残念ながら持っていなかった。 まだ18になったばかりの僕に 君の未来すべてを背負う程の自信がなかったのだ。 君と出会ってそろそろ一年、僕たちは絶対離れない事を左手の薬指に誓いあった。
そして季節は、梅雨も終わりを迎える事となる。
|
|