高校二年、夏休み。
僕たちはすぐに打ち解けた。 元々音楽が好きで周囲の反対を押し切りギターを鳴らしている僕にとって、君は同じ感性を持っている唯一の味方だったのだ。 逆に、バイオリニストとしてプレッシャーを与えられ続けていた君にとって僕は、唯一の安らぎだったようだ。僕の前ではいつも笑顔で、歪んだ…泣きそうな顔は滅多に見せたりしなかった。 お互いがお互いを支え合えている、良い関係だった…それは今でもそう思う。 あんな関係はもう二度と、作る事は出来ないだろう。 「あたし、バイオリン好きだよ。」 何度も開かれたコンサートの中で何度目かに開かれたコンサートの後、君は僕に呟くように言った。 「知ってるよ。」 笑いながら言う僕の口を、君は自分の唇で塞いだ。 「でも、あなたの方が好き。」 初めてのキス。 「僕はギター好きだよ。」 君は複雑そうに眉を歪めた。 「知ってるよ。」 僕は君の唇を、自分の唇で塞いで笑いながらも言ってみせた。 「でも、君の方が好きなんだよね。」 君の顔が、笑顔に変わった。 どんなに嫌な事があっても、決して折れなかった君の瞳から少しだけ涙が零れたのが見えた。 僕たちは胸を張って付き合う事になった。 蝉がまだ煩く鳴り響く季節、 僕が君だと称した向日葵がまだ太陽を向き続ける季節。 あの…真夏の季節。
僕たちは最高の幸せを分かち合った。
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