■ トップページ  ■ 目次  ■ 一覧 

七色しゃぼんに夢のせて。 作者:夏麻

第3回   2.向日葵のように強く。
 高校二年、夏休み。

 僕たちはすぐに打ち解けた。
元々音楽が好きで周囲の反対を押し切りギターを鳴らしている僕にとって、君は同じ感性を持っている唯一の味方だったのだ。
逆に、バイオリニストとしてプレッシャーを与えられ続けていた君にとって僕は、唯一の安らぎだったようだ。僕の前ではいつも笑顔で、歪んだ…泣きそうな顔は滅多に見せたりしなかった。
 お互いがお互いを支え合えている、良い関係だった…それは今でもそう思う。
あんな関係はもう二度と、作る事は出来ないだろう。
「あたし、バイオリン好きだよ。」
 何度も開かれたコンサートの中で何度目かに開かれたコンサートの後、君は僕に呟くように言った。
「知ってるよ。」
 笑いながら言う僕の口を、君は自分の唇で塞いだ。
「でも、あなたの方が好き。」
 初めてのキス。
「僕はギター好きだよ。」
 君は複雑そうに眉を歪めた。
「知ってるよ。」
 僕は君の唇を、自分の唇で塞いで笑いながらも言ってみせた。
「でも、君の方が好きなんだよね。」
 君の顔が、笑顔に変わった。
 どんなに嫌な事があっても、決して折れなかった君の瞳から少しだけ涙が零れたのが見えた。 僕たちは胸を張って付き合う事になった。
 蝉がまだ煩く鳴り響く季節、
 僕が君だと称した向日葵がまだ太陽を向き続ける季節。
 あの…真夏の季節。

 僕たちは最高の幸せを分かち合った。

← 前の回  次の回 → ■ 目次

Novel Editor by BS CGI Rental
Novel Collections