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探偵少女AI 作者:真樹

第7回   (6)振り出しへ戻る
AIが探偵事務所につくとやはり両親とも不在で前回のこともあり、事務所には数ヶ所に
施錠がされていた。その上注意書きまでしてあった。
「錠前破りは娘でも犯罪だ」
そう書かれた札を指ではじいて、AIはその場で父に携帯を入れた。
でも、YUIに掛けた時と同じようにこちらも留守番サービスに繋がれて「ピー」と鳴っ
た。
「パパ!YUIからSOSが…」と、そこまで言いかけ電話を切った。
「ダメだ。YUIは自分で助け出さなきゃ」
AIは携帯をしまい駆け出していった。
向かった先は学校。
すでに校門は閉鎖され施錠されている。
門には小さな扉があり、それは鍵はかかっていなかった。
一連の学校への不審者事件で防犯カメラが設置されている。
AIはカメラの前でニッコリしてピースサインをした。
このカメラは職員室のビデオに繋がれている。
廊下にもいくつかの防犯カメラがあり、探偵研究会のある図書室の入り口にもそれは取り
付けられていた。
「まず、出発地点はここ」
AIは指を指したのは探偵研究会の部室。
YUIが自分で退会届を持ってきたなら、AIに会わずに帰るのは変。
すぐに職員室へ行き、ビデオ探し当てた。
再生させ、早回しで見ていった。
「あっ!!岡田さん」
岡田はYUIの専属ドライバーでさっきYUIの乗っていないベンツで走り去るのを目撃
していた。
「YUIの家に行って見よう」
岡田がSOSのあぶり出しを持ってきたのなら、何か事情を知っているのかもしれないと
AIは岡田に会いにYUIの家に行った。岡田はベンツを水洗いしていた。どうみても、
YUIに危険が迫っているという雰囲気じゃなかった。
AIは岡田をひっつかまえ血相を変えて怒鳴りつけるように言った。
「YUIはどこ!!」
「な、何をするんです」
「あんたがYUIの退会届を部室に持ってきたのは分っているのよ」
「こ、声が大きいです。それにここでは…」
岡田はさっきまでとは打って変わった表情と態度になった。これは何かを隠しているに決
まっていると、AIは感じた。
岡田はこそこそと、ベンツのスチール製の車庫へAIを連れて行きしゃがみ込ませヒソヒ
ソと語った。
「お嬢様は、旦那様に部屋へ閉じ込められました。あなた様と探偵ごっこをさせないため
にです。ですから、あなた様がここへこられたら、きっと警察か警備員に連絡をされるで
しょう。お嬢様からの言伝があります。『先生たちはAIの事を見くびっている』とおっ
しゃっていました」
「岡田さん。わたしの名前ここへ書いて」と、手帳とペンを渡した。
岡田はうなずき、手帳に『AI』と書きゆっくりと頷いた。
AIは岡田の言っている事が真実だと感じた。そして、岡田は自分達の事を信じていると
確信した。
YUIは自室に閉じ込められているなら命の危険はなさそうだ。しかし、これが不正をし
ている先生たちの仕業ならこっちの動きを察知されたのだろう。尾行して先生と目が合っ
てしまったのが、その原因。でも、先生はわたしを見くびっていると、YUIからの伝言
は、察知しているわけでもなさそう。それなら、YUIぬきで調査を続行する。それに、
YUIを助け出すには先生の不正を明らかにして、自分達に向けられた誤解を解く必要も
ある。YUIは理事長である父親に、探偵ごっこをしていると先生から告げ口をされたに
違いない。AIたちが実際の調査をしているなどと、理事長が知る由もないのだから。

AIは自分の部屋に戻るとこれからの事を考えた。春原綾からの依頼金はYUIの手元に
ある。学校へ行ってからYUIと話はできるのか分らない。先生たちの不正を暴く事を止
めて春原綾に調査をやめたいって言おうかと、本気で考えた。
YUIからの伝言『先生たちはAIを見くびっている』って。
「わたし見くびられているの?」
AIは机の上のぬいぐるみを持ち上げ問いただした。
「絶対に先生たちの不正を暴いてやるのよ」
ぬいぐるみを手で動かせながら、AIはつぶやくのだった。

次の日、やはりYUIはAIをさけている。クラスの男の子がYUIからのメッセージを
持ってやってきた。
「これ三上に渡してくれって保浦に頼まれた」
AIはメモを受け取り開いて中を読んだ。
「AIラブYUI」
「普通、アイラブユーだよな。それに、おまえらレズ?」
男子はそのまま立ち去った。ラブは愛ではなく、テニスのラブゲームを指している。これ
もAIとYUIだけの暗号だ。AIとYUIは無二の親友であるとYUIからのメッセー
ジだった。AIはYUIの助けを借りることができなくなり、資金もなくなってこれから
の調査を振り出しにもどすことにした。

授業が終ると探偵研究会の部室へと自然に足がむいた。部室の前にふたりの男子生徒が立
っていた。ノッポとチビデブのデコボココンビだ。
「あんた達誰?」
「入部希望なんですけど先輩」
「ここがなんのクラブだか知って言っているの?」
「探偵研究会」
「そう、遊びじゃできないよ…」
「遊びじゃないんですか?」
「もちろん、依頼が来て報酬もある、ビジネスよ」
「学校でそんな事しちゃやばいんじゃないですか?」
「だったら、さっさと帰って」
「待ってください先輩」
ふたりの入部希望者は勝手に部室へ入って勝手に腰掛けた。
AIは置くのテーブルに着きあらためてふたりに向き直り言う。
「だから、もう帰ってくれないかしら、わたし忙しいの」
「探偵って、すごく興味があるんですよ。将来は探偵になりたいんです」
ふたりはそろってそう言う。
「そう、わたしの両親はふたりそろって探偵しているけど…」
「えっ、それって本当ですか!すごい。先輩ってすごいんですね」
ちょっと、待て待てとAIは冷静にふたりを見た。ただの冷やかしかもしれないし、本当
に探偵になりたいと思っているのかもしれない。先生たちに対抗するにも、今はたった一
人になってしまったし、スタッフも必要だ。それなら、このふたりをテストするのもいい
かもしれないとAIは考えたのだ。
「探偵は口がかたくなけりゃなれないのよ。あなたたちがどれほど信用できるかをテスト
するわ」
AIはメモを二枚書きふたりに渡し部室を後にした。
「明日の放課後またここで会いましょう」

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Novel Editor by BS CGI Rental
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