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探偵少女AI 作者:真樹

第3回   AIちゃん初手柄の再UP
AIはヘアピンを鍵穴に差込み、慎重に回転させ微かな音も聞き逃さないように、人差し指を口にあてがいYUIに静かにするようにと知らせた。
ほんのわずかな時間で、部屋の鍵は開かれてしまったのだ。

「AI!あなたったら、泥棒の素質があるんじゃないの?」
「冗談でしょう。この事務所はわたしの両親の仕事場なんだから、言うならば我が家に入るのと変わりないんだから、泥棒とは違うんだな」
AIはYUIをひっぱって事務所の中に入った。

それを、見ていた男はひたりに襲い掛かる機会を失い歯ぎしりした。
事務所の戸のドアノブをひねると、鍵は掛かっていない。
扉を少し開いて中を覗くと、AIとYUIが事務所の中で何かを探している。
探偵事務所の中は、書類と機器類がひしめき合っている。

「なんだか、別世界に迷い込んだみたいだ。何かの映画で見たような、いろんな機械があるんだね」
「そりゃ、そうよ。探偵事務所だもん」
無線機のようなものや、パソコンやら、カメラや盗聴器らしき機器が散乱している。
男の視線は、角にある監視カメラに目が行く。

とっさに顔をそむけ、事務所の扉を閉じた。
少女ふたりも、監視カメラを発見した。
「なんか、やばいんじゃないのこれ」
YUIが、監視カメラを指差す。
「バカね。事務所の中を監視してどうするのよ。ただの飾りに決まってるじゃないの」
AIは監視カメラなどにひるまずに、探偵道具をかき集めていた。

護身用のスティックは、皮のホルダーベルトに納まっていて、取り出すと直径3センチの長さ25センチほどの棒だが、一振りすると伸びる仕掛けになっている。
グリップの場所にボタンが付いていて、それを押すと瞬時にもとの長さに戻る。
それを、クルクルと回し、腰に付けたホルダーに収める。
まるでカーボーイがガンをガンホルダーに納めるようにAIはポーズをつけた。

「まさか、それで、闘うつもり?」
「もちろん襲われたら闘うわよ」
「相手は拳銃を持っていたりしたら、それじゃかなわないわ」
「探偵は相手に見つからないように隠れて仕事をするんだから、狙われるような事はめったに無いわよ」
AIのその説明は今の彼女達には当てはまらないが、実際は尾行したり、張り込みをしたりする相手は気付かないはずで、拳銃で狙われることはないだろう。

YUIはテーブルの上にのっているスプレーに気が付いた。
「これって、催涙スプレー?」
「そうそう、これも現場に行く時はちゃんと持っていかないとダメなんだよ」
スタンガンとか、護身用の道具も沢山事務所にはあった。

盗聴器やら隠しカメラも、AIはYUIに事細かに説明していると、ふいに扉の閉まる音がした。
「あっ、お父様達が帰って来たのかもよ」
扉の方へ向かおうとするYUIを止めるAI。
「違うわ。パパなら鍵の掛かっていない扉を音を立てて閉めるはずがないわ」
「どういうこと」
「中にいるのが、泥棒かもしれないって、そぉーっと入って来て『こらー』って言うはず」
「じゃー、誰?」
「分らないわよ。パパじゃない誰かが事務所の中に入ってきたって事だわ」
「どうしようAIちゃん」
「隠れるのよ」

ふたりはテーブルの下にもぐって様子を見ている。
確かに誰かが部屋の中に入って来ている。
カツリ、カツリと、靴の音が近づいてきている。
「まさか、もう実践でこれを使う事になるなんて…」
AIは護身用スティックを握り締めた。
YUIも催涙スプレーを抱きかかえ、応戦準備をしている。

ふたりのいる部屋の扉はいっきに開かれ、そこに立っていたのはがっしりとした大男だ。
血走った目で部屋の中を探している。
「ぐぉぉーーーっ」
大声を上げ、ふたりの隠れているテーブルを持ち上げた。
男の狙いはYUIの方だ。

YUIを捕まえようと手を伸ばす。
AIはその手をスティックで払いのけ、YUIの前に立ち男を阻止しようとしたが、あっけなくはらいのけられてしまった。
顔を背けながら、催涙スプレーを振りまくYUI。
スタンガンを握り締め男に目掛け突進するAI。

大男がスタンガンでもんどりうって転げると、事務所の中は書類の紙吹雪が舞い上がった。
男は、むっくりと起き上がり、何事も無かったように、ふたりに向かってくる。
「なんて、タフな奴。スタンガンがきかない」
「AIちゃん。怖いよ」
AIにしがみつくYUI。
「どうしよう。どうしよう…」
AIは部屋の中を見回した。
どの道具も狂気の大男に対抗しうるものには思えなかった。

そんなふたりにおかまいなしの大男はジリジリと間合いを詰めて来ている。
「ぐはははぁー、痛い目をみたくなかったら、おとなしく掴まりな。そっちのお嬢ちゃんは大金持ちのご令嬢だそうだな。身代金をたくさんいただけるそうじゃないか」
「やっぱり、お金持ちの娘をさらおうとする卑劣な男が現れたわ。こう言う時は…」
AIは、一生懸命にいろんなことを考えている。
その時、あのペンの事を思い出した。
ある日、父の持っているペンをかまっていた時、父に叱られた事があった。
「お父様、このペンってもしかして、Mr.ビーンのあのペンと同じものなの?」
「そうさ。このペンで麻酔針が飛び出して、象だって眠らせる事ができるんだ」
そのペンは、確かデスクの引き出しの中にあった。

大男の動きを見ながら、手探りでペンを探している。
「何を探しているんだい」
その時、あの金色に光るシャープペンシルが見つかった。
それを握り締め、大男に狙いを定めている。
「そんなもんで、何をしようってんだい」
「こうするのよ!」

カチカチと、ダイヤルを合わせ、ワンプッシュすると芯の代わりに麻酔針が発射された。
見事、大男の首筋に針は刺さった。
「何だこりゃ!!」
大男は目をグルグルと回し、腰砕けして、一瞬にして眠り込んでしまった。
その物凄い音で、一階のラーメン屋のおばさんや、沢山の人が押しかけてきた。
その後ろから、AIのパパとママもやじうまを押しのけて入ってきた。
呆れ顔の両親、得意満面のAIちゃん。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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