AIはヘアピンを鍵穴に差込み、慎重に回転させ微かな音も聞き逃さないように、人差し指を口にあてがいYUIに静かにするようにと知らせた。 ほんのわずかな時間で、部屋の鍵は開かれてしまったのだ。
「AI!あなたったら、泥棒の素質があるんじゃないの?」 「冗談でしょう。この事務所はわたしの両親の仕事場なんだから、言うならば我が家に入るのと変わりないんだから、泥棒とは違うんだな」 AIはYUIをひっぱって事務所の中に入った。
それを、見ていた男はひたりに襲い掛かる機会を失い歯ぎしりした。 事務所の戸のドアノブをひねると、鍵は掛かっていない。 扉を少し開いて中を覗くと、AIとYUIが事務所の中で何かを探している。 探偵事務所の中は、書類と機器類がひしめき合っている。
「なんだか、別世界に迷い込んだみたいだ。何かの映画で見たような、いろんな機械があるんだね」 「そりゃ、そうよ。探偵事務所だもん」 無線機のようなものや、パソコンやら、カメラや盗聴器らしき機器が散乱している。 男の視線は、角にある監視カメラに目が行く。
とっさに顔をそむけ、事務所の扉を閉じた。 少女ふたりも、監視カメラを発見した。 「なんか、やばいんじゃないのこれ」 YUIが、監視カメラを指差す。 「バカね。事務所の中を監視してどうするのよ。ただの飾りに決まってるじゃないの」 AIは監視カメラなどにひるまずに、探偵道具をかき集めていた。
護身用のスティックは、皮のホルダーベルトに納まっていて、取り出すと直径3センチの長さ25センチほどの棒だが、一振りすると伸びる仕掛けになっている。 グリップの場所にボタンが付いていて、それを押すと瞬時にもとの長さに戻る。 それを、クルクルと回し、腰に付けたホルダーに収める。 まる
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