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にんぎょうがはこんだしあわせたち 作者:糊塗霧 隙羽

最終回   最終話 全うした人生
彼らは…あの兵隊は、実は、本当に人間ではありませんでした。

人形師が作った、戦うためだけの、『生き人形』だったのです。

…そして、この人形を作ったのは、あのノイジを捨てた人形師。

各地の侵略を目指す国の国王に、命令され,無理矢理作らされていたのです。

彼はこんな人形を作ることを望みませんでした。

なので、人形に,まともな感情は無く,ただ、命令通り動くだけの

まさに操り人形しか、作りませんでした。









そんなことはともかく,ノイジは念の為自分の体を修復していました。

また兵隊が来たときのために備えての行動です。

そんな彼を見て,数人の町人は、彼の修復を手伝ったりしましたが、

深く刻まれた傷…複雑な構造の体…それのせいで殆ど、何も出来ませんでした。









ノイジの活躍のおかげでしょうか、兵隊はまったく来ませんでした。

ノイジはいつでも町への入り口にある橋を見張ってましたが,

まったく襲撃をしてきそうな兵隊は来ませんでした。

「諦めたのだろうか。」

とりあえず、兵隊達が来ない間、ノイジは束の間の休息を取っていました。









ゴゴゴゴゴゴゴゴ!

突如、大量の人形兵士が町へと攻め込んできました。

今まで攻めて来なかったのは,数を増やすための制作期間。

それが終わった今,攻める以外に、ありません。

奴らはどんどんと町に近づいていき,とうとう、橋の前までやって来ました。

ノイジは気合で奴らに突撃していきましたが、

やはり、多勢に無勢。ノイジはどんどん傷つき,兵隊達はどんどん

町へと近づいて行きました。しかし、それでもノイジは奴らを止めようと

必死に挑みました。何度も攻撃を受け、満身創痍のノイジ……

『怪我をしたくない』と、町に隠れていた町人はそんなノイジを見て思いました。

『自分達は隠れていて,助けもしないのに…そんな自分達の為に、ノイジは戦っている…』

『このまま,隠れているだけでいいのか?!』

そして、ついに町人達も、戦いに加わりました。

決意を固めた町人は、凄まじい力を発揮しました。

どんどんと、人形兵士の数は減っていきます。

「…凄い…よし、俺も…」

ノイジも再び、戦線に加わろうとしましたが、

「お前は十分頑張った。後はこっちでやるから休んでろ!」と

無理矢理橋の下に降ろされてしまい,戦いを見物することになりました。

なので、どうすることもなく、ノイジは休むことにし、ゆっくり目を閉じました…









町人達は、犠牲を出しつつも,ついに人形兵士達を全滅させました。

町人は口々に「ノイジのおかげだ!」「彼のおかげで勇気が出た!」

と言っていました。そして、皆で橋の下で寝ているノイジに

「ありがとう!」と全てをまとめた気持ちの言葉を伝えました。

しかし、ノイジは目を閉じたままで,返事をしません。

「熟睡してやがるのか?おい、起きろ。礼を言いたいんだ俺達は。」

と町人はノイジを起こそうとしました。しかし、叩いても蹴っても

ノイジは反応を示しません。そこで初めて皆、ノイジが『死んだ』

事に気がつきました。さっきの戦いでの傷で、既に限界だったのです…









「その後、彼は町の守り神として,大切に祭られてたんですが、どっかの不届き者がそれを奪い去ってしまったのです。」

「それが、流れに流れてこの店へとやって来た訳なんですよ…」

「…」

「これでお話は終わりですよ?お客さん。」

「…そうか。」

「で、こいつ、買います?」

「・・・ああ。」

「まいどあり。」

「なぁ、一つ聞きたいんだがな。」

「はい?」

「あんた,何者なんだ?」

「……」

「流れに流れてここに来たんなら,さっきの話の町は、ここじゃない筈だな。それにまるでノイジと一緒に旅でもしてたかのように話していたが…どういう…」

「……さぁてね?私はただの骨董品屋のしょぼくれた爺ですよ。」

「……まぁ、いいだろう。で、御代は?」

「要りません。」

「おい、いいのか?商売なんだろ?」

「良いんですよ…。私は彼を『自分の居場所』に返したかっただけですから…」

「じゃぁ、貰っていくぞ…。」

「はい、この先の旅も気をつけて…」

「旅は終わりだ…」

そういうと旅人は、そのまま無言で店を出た。

…………

ふと、急に後ろが気になり、振り向いてみる。

しかしそこには、40年は使われて無いだろう、廃屋が立っていて、

さっきまでそこにあったはずの骨董品屋はどこにも無かった…









あの、店長は何者だったのだろうか。何かの妖怪変化だったのかも知れない。
結局、どうなのかは、定かではないが,旅人は別に気にしていなかった。
全てが手元から無くなり,行方が判らない中で,やっと見つけた
自分の"最後の作品"を自分の手の中に抱いていられるだけで、
もう、真実など必要としないほど満足だった。
旅人の中であの店長に対する感情といえば、
『自分の作品を見つけてくれた』として、感謝の気持ちだけだった…。


「…ここは…?俺はどうなってしまったんだ…?」

「おはようノイジ。そして。おかえり・・・。」

こうして目を覚ましたノイジは、やっと『自分の居場所』を見つけたのだった。



























おしまい

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Novel Editor by BS CGI Rental
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