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にんぎょうがはこんだしあわせたち 作者:糊塗霧 隙羽

第5回   第4話 町での出会い
ノイジは町の至る所を見て回ることにしました。

しかし、流石に町は広い。すぐに一周するのは無理なので

ノイジは何日もかけてゆっくりと町の隅々を見て回りました。

そんな中で、一人の少年がノイジの中で気になり始めました。

まじめに煙突掃除などをやり、服は汚れて灰色。着替える暇も無く、

いつもそのままなので皆から『グレー』と呼ばれる少年でした。

彼はとてもまじめで、ひたすら仕事をこなしていました。

そんな彼がノイジにはとても素晴らしく見えました。

「あんなこと,自分には出来ない。」

ノイジは彼を見習おうと、ずっと彼を近くで見ていました。

ところが……近くで見ていてグレーの別の顔が見え始めました。

人とすれ違う時、慣れた手つきで、彼は財布を抜き取りました。

そう,彼のもう一つの顔は常習犯のスリだったのです。

見ていたノイジはグレーに対し、とても怒りを覚えました。

「まじめなふりして裏でこんなことをやるとは!許せん!」

自分には出来ないようなことをやってのけるグレーに対し、

憧れを抱いていたノイジには、これは『裏切り』のように感じました。

信じていたのに…彼があんな事をするとは…

そんな想いから、彼はとてもとても怒っていました。

「そうだ、あいつを捕まえれば…一人スリが減り、皆喜ぶだろう。」

ふと、そんなことを思いついた彼は早速、グレーの元へ向かいました。

そして、彼を見つけると…

「おい!お前!灰色の!」

「…僕かい?人形さん。」

「そうだ。この泥棒め!」

「……まぁまぁ、落ち着いて。そこの裏で話そうよ。裏で。」

そういってグレーは、人目の少ない路地裏へノイジを連れて行きました。

「で、なんだっけ?」

「お前,すれ違いざまに財布を盗んだろう。」

単刀直入、ストレートにノイジはいいました。それに対し彼は…

「・・・ああ、盗ったよ。確かに。」

と、あっさりと自分の罪を認めました。


つづく

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Novel Editor by BS CGI Rental
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