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すきあらば。 作者:糊塗霧 隙羽

第3回   終末の夜。
山にたどり着いた。

「ここであってるか・・・・?」

「あってるだろ。車あるし。てか汗臭い。よるな。」

やっとこさ親父とお袋を見つけたが、山に逃走。さらに面倒になった。

「なー、一つ言っていいか。」

「何?田原。」

「山の中に何か、要塞が見えるのは俺の目がおかしくなったからか。」

「いや、俺にも見えている気がする。」

コレは明らかな環境破壊だ!とかそういうことは置いといて、

いったいなんなのだこれは。

『ざーっ・・・ガッキーン!あーあー。聞こえますかー。』

「おばさんの声だな。」

「何のつもりだあのクソババァ。」

『千春ちゃーん。元に戻りたかったら、この中にはいっておいでー。』

『私たちはこの奥よー。』

もう回りは真っ暗。夜だ。なのにこの馬鹿は・・・近所迷惑だろうが!

『さぁ、どこまでいけるか、見せてもらおうじゃない・・・・・』

『あんたがただの餓鬼じゃないなら、きっとたどり着けるわよ・・・。』

「ちょ、待て!俺普通の子供だから!何、その仙人を試してるかのような台詞!」

『さぁ、スタートよ♪』

ガパッ

その一言とともに、俺たちの足元が開いた。

「えぁ!?」

『さぁ、ここまで来て御覧なさい・・・・。』

「うわぁああああああああああああー!!」

まっさかさまに落ちていく俺たち。

そしてたどり着いた場所、それは・・・・・

「何?このアスレチックコースは・・・」

「これ、越えて行くのか?俺達・・・・・無理だろ。」

「ン・・・?いや、田原、お前なら出来るだろ!マッハのスピードで自転車こげるし!」

「いや、それとコレとは話が違うから!」

「どのへんが違うんだ!とにかく行けお前から!そして見事に下の池に落ちろ!」

「おま・・・成功するって微塵も思って無いじゃん!」

『あーあー、聞こえるかしら・・・。』

「また!?」

『そのアスレチック、二人じゃないといけないわよ』

「は?」

『頑張ってね。』

『ガガーーッブツン!』

「仕方がねぇ行くぞ!ハゲ!」

「はげてない!カツラでもない!」

俺たちは普段はありえないほど協力しまくり、何とか後一つのアスレチックの前まで

たどり着いた。最後は巨大な壁を越えるというもの。かなり辛い。

「コレが最後・・・・?」

「俺もう無理・・・・ゼェゼェゼェ・・・」

「諦めるな千春!まず俺からいく!」

タンッと、華麗なジャンプで、壁の上へ行く田原。てか、お前絶対人間じゃない。

「ほら、お前も!」

「無理ー!!」

「いや、お前ならいける!がんばれ!」

「全然届かないよ!」

そこに田原が手を差し出す。

「つかまれ!そしたら上げてやる!」

「えー!いや、手を差し伸べられても届かないよ!」

「いいから、行け!」

「・・・・ッ!えーい!」

出来る限りのジャンプ。ギリギリ田原の指をつかめた。

「くっ!」

「ガンバレ田原!つーか、お前の指汗ですげぇ滑る!」

ずるずると少しずつ落ちていく俺。

「くっ・・・うぉおおおおおおお!」

それをぶん投げる男田原。

「よっしゃぁ!あがった!」

「いや、上げすぎだから!うわぁあああーー!」


ガシッ


「セーフ!怪我ないか?」

「あ、うん・・・・・アリガト・・・。って、お前のせいじゃんコレ!」

「いや、まぁ受け止めたから許せ。ほら、お前の両親の部屋行くぞ。」

とうとう、終わるのである。この一日の戦いが。

ゆっくりと扉を開ける俺達。そこにたっていたのは二人のマッドサイエンティスト。

もとい、俺の両親。

「あらぁー、クリアできたのあれ!?」

「絶対無理だと思ったのになぁ。」

「うそでしょー!うそよね!」

「えーい、うるさい!ちゃんとやったわ!薬!はよよこせ!」

「ハイこれよ。」

ついに、元に戻る薬が手に入った。良かった・・・・

しかし、そこで予期せぬ事体が発生する。

さっきの田原の汗のせいで俺の手はかなり湿っていた。そのせいか、ズルッと俺の手から

薬のビンが抜け落ち、そのままゆっくりと床へ・・・・

落下していくビンが地球の引力に逆らえるはずも無く、そのまま床へと・・・・


ガシャァアァン!!

「うわぁああああ!薬がぁああ!!」

「ああ!?」

「もう薬無いわよ!作り直さなきゃならないのよ!」

「・・・・・・・うーん、まぁいいや。」

「え。」

「千春ちゃん?今なんて?」

「もういいよコレで。面倒だし。」

「え・・・本当に?」

「うん。」

「いいのか、千春・・・。」

「いいよ。別に。あ、そうそう。田原!」

「ん?」

「お前に惚れたわ。」

「えっ!?いや・・嘘・・マジで!?」

「俺を彼女にしたまえ。」

「彼女居ない歴=年齢の俺がついにーー!いや、でも元男ってどうよ?え?」

「まぁ、いいじゃん?」

「うーん、そうだな。」



そう、別にいいのだ。

昔から俺も、少し女の子に産まれたかったって思ったこともあった。

名前だって千春だし、からかわれるのいやだし。

そう、女なら丸く収まるんだ。俺はそう考えた。

だから、もうこのままでいいんだ。

このままで・・・・。








「いやー、上手く行ったね、ママ。」

「ええ、パパ。」

「やっぱり恋は人を変えるんだね。」

「そうねぇ。パパ。」

「初心に戻って、デートでもしよっか?」

「そうしましょう。」

「フフフフ・・・・ウフフフフ・・・」
















おわり。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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