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きゃっと・メモリー 〜人だった猫の恋〜 作者:糊塗霧 隙羽

第7回   7
サスラと会った後。私達の目標はトラックを見つける事から人魚を見つける事に変わっていた。

「しっかし、人魚ってどんな感じなんだろうなぁ?」

「判んない・・・。」

「せめてそれだけは聞いてくればよかったな・・・。」

「そうだね・・・。」

まぁ、今更もう、完全に手遅れなのだが。

何故なら私達は・・・海のど真ん中に居るからだ。

こうなる数時間前の私達は確か・・・サスラの住み着いてる屋敷を出て、

これからどうするかを考えていた・・・。。

「人魚・・・魚なんだし、水の中に居るよな?」

「多分ね。でも、何処に居るんだろ・・・。」

「少なくとも、水溜りの中には居ないと思う。」

「わ,判ってるよ!レオンじゃないんだからそんな馬鹿な事しないし!」

「ヒデェ。」

とりあえず、水のある場所は全て行ってみた。

しかし、人魚は何処にも居ない。色んな猫に話を聞いてみたりしたが、全く情報無し。

「どうしたらいいんだろ・・・。」「何処に居るんだ・・・?」

探し疲れた私たちは自分の寝床に戻り、とりあえず疲れを癒す為に寝転んでいた。

その時だ。レオンが何かを決心したような顔をしてバッと立ち上がった。

どうせろくな事考えていないだろう。でも、一応聞く。

「どうしたの?」

「こうなったら、俺たちも海をひょうりゅうするしかねぇ!!」

「はぁ!?」

     ♂
この馬鹿男は、漂流の意味判ってるのか!?・・・私もよくは判らないけど。

「で、でもいつまでも人魚が現れなくて、漂流しつづけたらどうするの!?」

「大丈夫だって!ほら、えーっと・・あの、マリアの知り合いの猫の・・・。」

「フウタ?」

「そーそー!あの人に聞いたんだけどさ!海はさかながいっぱい居るんだって!」

「・・・・で?」

何となく先は読めた。けど、一応聞いてやる。

「腹が減ったらとればいいじゃん!!」

ほーらやっぱりだ。絶対言うと思ってた。

「・・・でも、船はどうするの?さすがに用意するのは・・・」

って、ふと見ればそこに木で出来た船があるではないか。

「フウタさんに貰った!!ここまではフウタさんの友人さんたちに運んでもらった!」

   ♂
この男は何を考えてるんだ本当に・・・・。

「これで海に行こうぜ!さぁ、出発だぁ!!」

「え?あ、ちょ、ちょっと!いや、さすがに・・・」

慌てて反論しようと思ったがフウタの友人(本当は多分手下)に無理矢理引きずられ,

私とレオンは船に乗せられ、出発してしまった・・・・・・・。

























「しかし、海は広いな!なぁ、マリア!」

そして、現在に至る。

あれから随分と時間がたった気がするけども,一向に人魚が現れそうな気配は無い。

いや、それよりも寒い。冬に水の上に居るのは本気で寒い。

自慢のふわふわな毛皮も若干凍ってる気がする。これはマジでヤバイんじゃない?

「何でレオンそんな元気なの・・・?寒くない?」

「いや!俺はもう,ワクワクしてて!寒さなんて感じねぇ!!」

単純な奴だ。私はそんなワクワクなんて出来ねぇ。

それに、少しなんか水が暴れだした。船は凄く揺れるし、怖いし、気分悪い。

「ちくしょぉおおおお!負けるかぁああ!!」

何と戦ってる気分なんだお前は。

水の動きは激しくなる一方。全く止む気配は無い。

海は気配が無い事が多すぎると思う。

「レオン・・・これ、本気で危ないと思うんだけど・・・。」

「いいや!俺が居るから大丈夫だ!」

何?その根拠の無い自信。まぁどの道、その自信虚しく・・・・

ザパーン!

「どわぁああああ!?(レオン」

「ぐごわぁああああああああおあああおおおういいいいいい!?(マリア」

船は沈んでしまった。私たちも沈んでいく。

ああ、まさかこんな馬鹿らしい事で死んでしまうなんて・・・・。

          ♂
心の底からあの馬鹿男を恨みたい。私は前世の彼に会えなかったとしても

他のもやりたい事が沢山あったというのに・・・ああ、死にたくない。












           助けて。











・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・。

ん?なんか、息が苦しくない・・・・。

「ぐぇええ・・・。」

あ。レオンの声だ。何で居るんだろ。もしかして、一緒に天国に?

コイツと一緒ってなんかやだなぁ・・・・。

「しっかりして?死んじゃ駄目!」

・・・・誰?

そっと目を開けてみる。すると私達が居たのは何処かの岩場。

多分、何処かの島か何かなんじゃないだろうか。

隣にはレオンと・・・下半身が魚の、綺麗な女の人間。

あれ?これって、もしかして、もしかして・・・・。

「ゲホッ!ガフッ!ゲホッ!」

「良かった、生きてるみたいね・・・。」

「あなたは・・・人魚?」

「そうよ。」

「・・・私の言葉が判るの?」

「生物の言葉なら,大体判るわ。伊達に長生きしてないのよ。」

「・・・。」

とても頭がいい。

「あの・・・お名前は・・・?」

「ミコト。」

名前はミコト。

「昔に、猫に会いませんでした?漂流してた・・・。」

「ああ、あの猫さんのお友達?」

サスラの事を知っている。

まさしくこれは・・・私達が探していた人魚の、ミコト!!

「見つけた!!やった!!」

「え?ど、どうしたの?私が何か・・・・」

「ええ、色々と用事がありまして!!」

「・・・?(あの猫さん、なんか変な事でもいったのかしら・・・。)」

こうして私達は、ついに、オオイタへの道の有力情報(の持ち主)の人魚に出合うことが出来た

これで、私の前世の事について、調べやすくなるはず・・・って、ん?私・・・達?

「うぶううう・・・・。」

「ヤベ。レオン忘れてた。水吐かせないと!」

「いや、飲んでなかったと思うし、私がある程度は吐かせたわよ・・・?」

「えい!えい!えい!!」

「ぐはっ!ごはっ!ぐはぁああ!?」

「・・・・・・いや、ちょ。話聞け。」



つづく

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Novel Editor by BS CGI Rental
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