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きゃっと・メモリー 〜人だった猫の恋〜 作者:糊塗霧 隙羽

第6回   6
言われたとおりその場に座る。どうやらここは古いお風呂。

水は当然無いが、それらしい感じがする。

「あ、地べたじゃなく。そっちの座布団つかいなよ・・・。」

座布団?あ、本当だ。置いてある。

「うぃ、マリア。お前のぶん。」

何気にレオンが持ってきてくれた。気が利くな・・。今日だけは(ぉぃ

「よく、ここまで来たねぇ・・・。フツーの猫じゃぁ、途中で帰っちゃうのに…。」

シルエットしか見えないが、こいつがサスラ。何となく確信できた。

そんな雰囲気が漂っているのだ。間違いない。

「で、ここに来た理由・用事は何かねぇ?」

そうだ!ちょっと雰囲気に流されて忘れてた!

私達は船に乗る為に、船がある所に向かっていくトラックを探しているんだ!

「あー、あれかい?前世の記憶がどうたら・・・が関係してるのかい?」

「!?」

何でサスラがその事を知っているの!?

「大体の情報は手下達に調べさせてるんでねぇ・・その辺の猫の会話とか、大体筒抜けだよ・・・。」

さ、さすが流離の猫、サスラ・・・(関係ない

「それで、何を調べて欲しい?その"前世"の住んでた場所とかかい?」

「いや、それは調べられたの。その次、移動手段を調べてるの。」

「移動・・ねぇ。どこに行くんだい?」

あれ?何か、すんなり教えてくれるっぽい。噂と違うな・・・。

「えと・・・オオイタって言う名前の国に・・・。」

「オオイタ・・・また、随分遠い所にいくんだねぇ。」

オオイタの事についても知ってるんだ!!

「それで!」

「どうやって行けばいいんだよ!」

途中からレオンが入ってきた。意外と真剣に私の前世について探してくれてるんだな…。

その時のレオンの心の中(何か楽しそうだし、超行きてぇ!!)

「オオイタねぇ・・どう行ったかねぇ・・何しろ5,6年前の話なんでねぇ・・・。」

5,6年!?一体あんた何歳だ!!

とっさに光が当たっている場所へ向かう。カーテンで仕切られているが払いのける。

「あ、何すんだいあんた!シークレットだよ!アタシの姿は!!」

と、そこに居たのはかなりヨボヨボのおばあちゃん猫。

しかも、何か、普通にその辺にいる猫よりかなり小さい。

「さ、サスラってこんなのだったんだ・・・・。」

「こんなのとはなんだい!別に姿なんかどうだっていいだろう!」

じゃぁ隠すなよ。気になるし。

「全く、そんなんじゃ教えないよ?」

いや、あんた元々忘れてたんだろ。行き方。

「すいません。」

でも、一応謝る万が一、思い出したりしたら困るかもしれないし。

教えてくれなくて色々やんなきゃいけなくなったりで。

「まぁ、教えよう。えーっと、アタシはね、自作の船漂ってたらついた。」

や、役に立たないじゃん!結局!!

少し苛立ったので肉球を振り上げる。

「お、落ち着きな!まだ続きがある!」

「続きも何もあるかぁ!一発殴らせろ!」

「おい、マリア落ち着け。一応聞かないと。」

レオンに止められてやっと我に返る。そうだ、唯一の手がかりなんだ。

どんなくだらないことでも聞かなきゃいけない。せめて方角とか聞ければ・・・。

「ごめんなさい。続き、お願いします。」

「は、はいよー・・・。じゃぁ話すよ・・・。」

ゆっくりとサスラがまた話し始める。

「漂流中にね、アタシは人魚に会ったんだ。」

「人魚!?」

・・・・・・

「って、なに?」

ズシャァーー!

サスラが凄い勢いでずっこけた。え?そんなにおかしい?

「人魚はねぇ、半分魚の人間さ・・・。伝説上の生き物なんだけどね、まさか居るとは。」

「それで、その人魚が何か関係してるの?」

「その人魚はね、凄く頭が良くてね。どんな言葉も話せるし、どんな事も覚えれるんだ。」

凄いんだなー、人魚って。けど、それが何か関係あるんだろうか。

「で、オオイタへの道のりも知ってるんだよ。っていうかアタシはその人魚に導かれたんだ。」

!!

「じゃ、じゃぁ人魚に会えばオオイタに行けるの!」

「んー、多分。けども・・・・どうやって会えばいいんだろうのう。」

一番重要なところをサスラは知らなかった。

「調べてくれないの?それは。」

少し調子に乗って聞いてみる。

「んー、そこからは料金アリじゃ。払わにゃ教えん。」

「今までは教えてくれたのに!」

「まぁ、そこら辺は同類の好でな、特別だよ。」

そっか・・・って、ん?

「同類・・・ってなにが?」

「アタシも前世の記憶があるんだよ。人間の時の。しかも前世の知識もな。」

な、なんと!それであんなことが出来たんだ!猫の手口にしては利口過ぎる偽お化けとか!

「アタシには、会いに行きたくなるような人は居なかったから猫で生きとるけども…」

「あんたは、人としても猫としても幸せになって欲しい。」

「な、なんで?」

「あんたはアタシに似てる。」

・・・・・・?

「にて・・る?」

「だから、同じように枯れて行って欲しくないんだよ。判るかい?」

いや、全くよく判りません。

「・・・・・とにかく、頑張ってな。アタシが昔に会った人魚の名前は『ミコト』だ。」

「・・・・はい!」

こうして私達の目的はトラックから船へ行く方法から人魚を探す方法へと変わった。

これから先、どうなっていくのか。私達は知る由も無い。




つづく



「所でサスラ、私の前世の姿まで知ってたんだね。」

「え?」

「あの、最後の方の人間の私の偽者は本当に驚いたよー。」

「何の事だい?」

「・・・え。」

「アタシが作ったのは猫とか布お化けとかそんなのばっかりで人の形のものなんかないよ?」

じゃ、じゃぁ・・・・あれは、本物の・・・幽霊・・・いや、私はここに居るし・・。

「あれは何!?」

その後、ここに居た全員で恐怖し、叫んだのは言うまでも無い・・・・。





つづく

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Novel Editor by BS CGI Rental
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