■ トップページ  ■ 目次  ■ 一覧 

きゃっと・メモリー 〜人だった猫の恋〜 作者:糊塗霧 隙羽

第5回   5
『サスラ』は『流離猫』だから、そう呼ばれている。

たびたびどこかに居なくなって、ふと気づけば帰ってきている。

行き先は誰も知らない。謎が多い猫だ。

さらに、その『サスラ』だが、実際に姿を見た者は居ない。

声だけ、影だけ、匂いだけ・・・。性別すら知らない。

それも全て曖昧な情報ばかり。

さらに、かなりの偏屈な性格らしく、気に入らない奴は叩き潰す。

まともに話を聞いてくれる事が少ないという凄まじい奴。

しかし、あちこち流れ歩き、仕入れた情報は半端無い。

そうそう聞く事は出来ないが、どんな情報も知ってると言われる程。

この町の事だって、サスラなら、きっと知っているだろう。

しかし…果たして、私達如きにあのサスラが情報をくれるだろうか。

それがとても心配だった。

「おい、急げー!」

何も知らない奴は暢気でいいな…。

っていうか、別に急がなくてもいいんじゃ?

逃げる訳でも・・・・いや、突然旅立つかもな。

とにかく、私達はサスラがよく居る廃墟へと進んでいくのだった。

「・・・マリア〜。どっちに行けばいいんだー?」

「知らないで先頭走ってたんかい!自重しろ!!」










廃墟に到着した。

ここは、元々人間が体の悪い所を治す為に来る、『びょういん』

とかいう建物だったらしい。しかし、お化けが出るとかで潰れた…。

「・・・・。」

凄く嫌な雰囲気が漂う。怖い。怖すぎる。

オオオォオオォオオオオ・・・

何か変な声が聞こえる・・・・もう帰りたいよぉ・・・・。

「マリア?早く来いよw楽しそうだぜ!」

ほざけ、単細胞万年お花畑野郎。何でこの嫌な感じを感じない。

何で普通に楽しそうなんだ。てか、置いてくな。怖い怖い怖い!!









ギィ・・・ギィ・・・

「ひぃ!?」

「落ち着けよまりあー。ただ風で窓が開いたり閉まったりしてるだけだろ。」

「いや!あんたこそ落ち着いてよく見ろ!!風吹いてないよ!!」

「・・・・ぎゃぁああああ!!!!」

怪奇現象に襲われながらも、私達は進んでいった。

バキィッ!!

「床抜けたーー!!!ぎゃぁああああ!!」

「ちょ!!マリア!!助けて!!叫んでないで助けて!てかなんで叫ぶの!?」









スゥ・・・

「何か!おおきな猫が!!ふわふわ浮いて通った!」

「き、気のせいだろ・・・」

オォオオオオォオオオ・・・

「って!!レオン!!後ろ後ろ!!」

「え!?ちょ!!!ぎゃあああああああああ!!!」









この廃墟は、マジでお化け屋敷だ・・・・。




私達はその後も何度も何度も襲われた。

そしてやっと、最後の部屋。

「ここにきっと、サスラが居るはず・・・。」

「もし居なかったらどうするよ?」

「帰る。そこの窓から飛んででもして帰る!」

「普通にもどらねーの?」

「また何か出るかもしれないじゃない!!」

とにかく、最後の扉を開こうとする。だが・・・

「・・・・・。」

ええ、ドアノブに手が届きませんよ?

何とか協力して開けようと試みるが足りない。高さが足りない。

どこかに棒でも落ちてないかと探す。しかし、何も無い。

「さっき抜けた床持って来るか?」

「そこまで行くのー・・・?やだよ・・。」

すると突然、誰かが来て、ドアを開けた。

「あれ?人間だ・・・・。でも何でここに・・」

どうやら♀のようだ・・・ゆっくりとこっちを振り向く。

その顔を見て仰天した。血まみれだ。

しかもその顔は・・・見覚えがある。

前世の・・・私?!

「ぎゃぁあああああああああああああ!!!!!」

腹の底から声を絞り上げるようにして叫んだ。思いっきり叫んだ。

そしてダッシュで逃げる。

「お、おい!!マリア!!俺一人にしないでくれよ!!」

慌ててレオンが追って来てるようだが、全然追いついてこない。

アイツ足遅いんだな。・・・ってそんなことより!!

「何で私が居るの!!?」

信じられない者を見た時ほど、恐怖したり、仰天したりする事は無い。

もう私は完全にパニック状態だった。さらにそこへ・・・

「待って・・・・」

!?

なんと、私がいつのまにか前に立っている!!

「うわあぁああああああああ!!!!」

もう嫌だ!本気で嫌だ!サスラどうでもいい!前世もういい!

だから帰らせて!!!お願い出して!!ここから出してーーー!!

別に閉じ込められた訳ではない。でも、心の底から本気でそう思った。

「いや・・・死にたくない・・・」

呟きながら、前世の私は助けを求めるように私のほうへ近寄る。

「来ないで来ないで来ないで来ないで来ないで来ないで来ないで!」

必死に唱えるが、聞こえてないようだ。私は近づいてくる。

「おい・・・てかないで・・・」

「いやぁあああ!!!」

「宝田君・・・助けてよ・・・置いてかないでよ・・助けて!!」

・・・たからだ・・くん?

「マリア!!大丈夫か!!」

レオンがやっと追いついてきた。

その時、前世の私は寂しそうな顔で消えていった。

「宝田君…助けて…くれなかった…。」

この言葉が、何か引っかかった。

前世の事・・・さらに何か思い出しそうだ。

けど、思い出せない。・・・いや、一つだけ思い出した。

私の彼。名前は、宝田・・・・幸樹。(たからだこうき)

優しいけど、口が悪い男の子・・・。

それだけ考えつつ、私はぼんやりしていた。

「マリア?マリア!おい、返事しろって!おい!!」

おっと、レオンの事忘れてトリップしてた。

「あ、ごめん。大丈夫だよ・・。」

「本当かよ?ぼーっとしてたけど・・・。」

「大丈夫大丈夫。ほら、行こ。」

と、また扉の前まで行こうとするが・・・・

「ォオオオオ・・・・」

またもお化け。もういい加減うんざりだ。慣れたし。

もはや、恐怖より怒りを感じる。さっきから鬱陶しい。

「トエエエエイ!!」

バキィ!!

「ちょ!マリア!?」

私の怒りのキックはお化けにクリティカルヒット!!

「ぐぅおおおーーー・・・・!!!」

お化けはそのまま床に倒れた。

「よっしゃぁ!!」

「きゅ、急にどうしたんだよ・・・。てか、お化けって倒せるんだ・・・ん?」

レオンが何かに気づく。

「何?どうしたの?」

「このお化け・・・足があるんだけど。」

「・・・・え?」

本当だ。確かに足が。ってことは・・・。

私はお化けの皮を引っ張る。皮・・・と言うか実際は白い布だった。

そして布の中には一匹の猫。

「これって・・・・。」

「つまり、あれだろ。全部コイツがやってたと。」

「全部偽者ーーー!?」

さらに今まで怖がっていたのが馬鹿馬鹿しくなる。

「おい!起きろぉ!!よくも私を散々怖がらせたなぁあああ;;」

胸倉をつかんで思いっきり揺さぶる。

すると猫は目を覚まし・・・

「や、やべっ!逃げろ!!」

走って逃げていってしまった。

「マテやコラぁーー!!私に謝らんかいコラぁーー!!」

・・・もちろん、戻って来ることは無かった。

「・・・マリア、早く行かね?」

「・・・うん。」

そして、私達はまたドアの前へと進む。

・・・・開いている。さっきの前世の私(偽と推測)が

開けてくれたから当然だろう。

奥へと進むと、中は真っ暗で一箇所に光が当たっていた。

そこに座っているのがおそらく・・・

「よく来たねぇ・・・ま、座んな・・。」

サスラだ。


つづく

← 前の回  次の回 → ■ 目次

Novel Editor by BS CGI Rental
Novel Collections