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| 『サスラ』は『流離猫』だから、そう呼ばれている。 
 たびたびどこかに居なくなって、ふと気づけば帰ってきている。
 
 行き先は誰も知らない。謎が多い猫だ。
 
 さらに、その『サスラ』だが、実際に姿を見た者は居ない。
 
 声だけ、影だけ、匂いだけ・・・。性別すら知らない。
 
 それも全て曖昧な情報ばかり。
 
 さらに、かなりの偏屈な性格らしく、気に入らない奴は叩き潰す。
 
 まともに話を聞いてくれる事が少ないという凄まじい奴。
 
 しかし、あちこち流れ歩き、仕入れた情報は半端無い。
 
 そうそう聞く事は出来ないが、どんな情報も知ってると言われる程。
 
 この町の事だって、サスラなら、きっと知っているだろう。
 
 しかし…果たして、私達如きにあのサスラが情報をくれるだろうか。
 
 それがとても心配だった。
 
 「おい、急げー!」
 
 何も知らない奴は暢気でいいな…。
 
 っていうか、別に急がなくてもいいんじゃ?
 
 逃げる訳でも・・・・いや、突然旅立つかもな。
 
 とにかく、私達はサスラがよく居る廃墟へと進んでいくのだった。
 
 「・・・マリア〜。どっちに行けばいいんだー?」
 
 「知らないで先頭走ってたんかい!自重しろ!!」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 廃墟に到着した。
 
 ここは、元々人間が体の悪い所を治す為に来る、『びょういん』
 
 とかいう建物だったらしい。しかし、お化けが出るとかで潰れた…。
 
 「・・・・。」
 
 凄く嫌な雰囲気が漂う。怖い。怖すぎる。
 
 オオオォオオォオオオオ・・・
 
 何か変な声が聞こえる・・・・もう帰りたいよぉ・・・・。
 
 「マリア?早く来いよw楽しそうだぜ!」
 
 ほざけ、単細胞万年お花畑野郎。何でこの嫌な感じを感じない。
 
 何で普通に楽しそうなんだ。てか、置いてくな。怖い怖い怖い!!
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 ギィ・・・ギィ・・・
 
 「ひぃ!?」
 
 「落ち着けよまりあー。ただ風で窓が開いたり閉まったりしてるだけだろ。」
 
 「いや!あんたこそ落ち着いてよく見ろ!!風吹いてないよ!!」
 
 「・・・・ぎゃぁああああ!!!!」
 
 怪奇現象に襲われながらも、私達は進んでいった。
 
 バキィッ!!
 
 「床抜けたーー!!!ぎゃぁああああ!!」
 
 「ちょ!!マリア!!助けて!!叫んでないで助けて!てかなんで叫ぶの!?」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 スゥ・・・
 
 「何か!おおきな猫が!!ふわふわ浮いて通った!」
 
 「き、気のせいだろ・・・」
 
 オォオオオオォオオオ・・・
 
 「って!!レオン!!後ろ後ろ!!」
 
 「え!?ちょ!!!ぎゃあああああああああ!!!」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 この廃墟は、マジでお化け屋敷だ・・・・。
 
 
 
 
 私達はその後も何度も何度も襲われた。
 
 そしてやっと、最後の部屋。
 
 「ここにきっと、サスラが居るはず・・・。」
 
 「もし居なかったらどうするよ?」
 
 「帰る。そこの窓から飛んででもして帰る!」
 
 「普通にもどらねーの?」
 
 「また何か出るかもしれないじゃない!!」
 
 とにかく、最後の扉を開こうとする。だが・・・
 
 「・・・・・。」
 
 ええ、ドアノブに手が届きませんよ?
 
 何とか協力して開けようと試みるが足りない。高さが足りない。
 
 どこかに棒でも落ちてないかと探す。しかし、何も無い。
 
 「さっき抜けた床持って来るか?」
 
 「そこまで行くのー・・・?やだよ・・。」
 
 すると突然、誰かが来て、ドアを開けた。
 
 「あれ?人間だ・・・・。でも何でここに・・」
 
 どうやら♀のようだ・・・ゆっくりとこっちを振り向く。
 
 その顔を見て仰天した。血まみれだ。
 
 しかもその顔は・・・見覚えがある。
 
 前世の・・・私?!
 
 「ぎゃぁあああああああああああああ!!!!!」
 
 腹の底から声を絞り上げるようにして叫んだ。思いっきり叫んだ。
 
 そしてダッシュで逃げる。
 
 「お、おい!!マリア!!俺一人にしないでくれよ!!」
 
 慌ててレオンが追って来てるようだが、全然追いついてこない。
 
 アイツ足遅いんだな。・・・ってそんなことより!!
 
 「何で私が居るの!!?」
 
 信じられない者を見た時ほど、恐怖したり、仰天したりする事は無い。
 
 もう私は完全にパニック状態だった。さらにそこへ・・・
 
 「待って・・・・」
 
 !?
 
 なんと、私がいつのまにか前に立っている!!
 
 「うわあぁああああああああ!!!!」
 
 もう嫌だ!本気で嫌だ!サスラどうでもいい!前世もういい!
 
 だから帰らせて!!!お願い出して!!ここから出してーーー!!
 
 別に閉じ込められた訳ではない。でも、心の底から本気でそう思った。
 
 「いや・・・死にたくない・・・」
 
 呟きながら、前世の私は助けを求めるように私のほうへ近寄る。
 
 「来ないで来ないで来ないで来ないで来ないで来ないで来ないで!」
 
 必死に唱えるが、聞こえてないようだ。私は近づいてくる。
 
 「おい・・・てかないで・・・」
 
 「いやぁあああ!!!」
 
 「宝田君・・・助けてよ・・・置いてかないでよ・・助けて!!」
 
 ・・・たからだ・・くん?
 
 「マリア!!大丈夫か!!」
 
 レオンがやっと追いついてきた。
 
 その時、前世の私は寂しそうな顔で消えていった。
 
 「宝田君…助けて…くれなかった…。」
 
 この言葉が、何か引っかかった。
 
 前世の事・・・さらに何か思い出しそうだ。
 
 けど、思い出せない。・・・いや、一つだけ思い出した。
 
 私の彼。名前は、宝田・・・・幸樹。(たからだこうき)
 
 優しいけど、口が悪い男の子・・・。
 
 それだけ考えつつ、私はぼんやりしていた。
 
 「マリア?マリア!おい、返事しろって!おい!!」
 
 おっと、レオンの事忘れてトリップしてた。
 
 「あ、ごめん。大丈夫だよ・・。」
 
 「本当かよ?ぼーっとしてたけど・・・。」
 
 「大丈夫大丈夫。ほら、行こ。」
 
 と、また扉の前まで行こうとするが・・・・
 
 「ォオオオオ・・・・」
 
 またもお化け。もういい加減うんざりだ。慣れたし。
 
 もはや、恐怖より怒りを感じる。さっきから鬱陶しい。
 
 「トエエエエイ!!」
 
 バキィ!!
 
 「ちょ!マリア!?」
 
 私の怒りのキックはお化けにクリティカルヒット!!
 
 「ぐぅおおおーーー・・・・!!!」
 
 お化けはそのまま床に倒れた。
 
 「よっしゃぁ!!」
 
 「きゅ、急にどうしたんだよ・・・。てか、お化けって倒せるんだ・・・ん?」
 
 レオンが何かに気づく。
 
 「何?どうしたの?」
 
 「このお化け・・・足があるんだけど。」
 
 「・・・・え?」
 
 本当だ。確かに足が。ってことは・・・。
 
 私はお化けの皮を引っ張る。皮・・・と言うか実際は白い布だった。
 
 そして布の中には一匹の猫。
 
 「これって・・・・。」
 
 「つまり、あれだろ。全部コイツがやってたと。」
 
 「全部偽者ーーー!?」
 
 さらに今まで怖がっていたのが馬鹿馬鹿しくなる。
 
 「おい!起きろぉ!!よくも私を散々怖がらせたなぁあああ;;」
 
 胸倉をつかんで思いっきり揺さぶる。
 
 すると猫は目を覚まし・・・
 
 「や、やべっ!逃げろ!!」
 
 走って逃げていってしまった。
 
 「マテやコラぁーー!!私に謝らんかいコラぁーー!!」
 
 ・・・もちろん、戻って来ることは無かった。
 
 「・・・マリア、早く行かね?」
 
 「・・・うん。」
 
 そして、私達はまたドアの前へと進む。
 
 ・・・・開いている。さっきの前世の私(偽と推測)が
 
 開けてくれたから当然だろう。
 
 奥へと進むと、中は真っ暗で一箇所に光が当たっていた。
 
 そこに座っているのがおそらく・・・
 
 「よく来たねぇ・・・ま、座んな・・。」
 
 サスラだ。
 
 
 つづく
 
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