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きゃっと・メモリー 〜人だった猫の恋〜 作者:糊塗霧 隙羽

第3回   3
朝。私は体が重苦しい中、目を覚ました。

「ZZzz・・・ZZZzz・・・」

・・・・・・・

     ♂
寝相の悪い男だ。思いっきり私の背中に寝ている。

「重い!!!起きて!!」

かなりイラッとした私は、思いっきり体を揺すり、

乗っかってた馬鹿を振り落とした。

「いてぇー・・・何するんだよ〜・・。」

「何するんだよじゃない!人の上に寝てたくせに!!」

「無意識でやってるんだから怒られてもどうしようもねぇーよー・・・。」

「ふんっ!」

イライラしたまま、私はさっさと歩き出した。

「おい、どこ行くんだよー!」

「昨日説明したばっかりでしょ!」

もう一度いう気にはならないので、それだけ言って歩く。

「待てよー!」

後ろから慌てて着いて来てるようだけど私は振り向かない。

さらに速度を上げて、歩いていく。

「・・・あ!待て!そっち・・・」

聞く耳持たない。私はさらに速度を・・・

べちゃっ

・・・・ん?

「そこ、何か時間たつと固まる泥があるから行かないほうがいい・・だから待てって言ったのに・・。」

灰色の泥は思いっきり私の前足についてしまった。

いや、その前に・・・足が抜けない。はまった!?

「うぅううう〜〜!!」

このままではマズイ。必死に前足を抜こうと頑張るが、

もう固まり始めてるのか、全然抜けそうにない。

「俺も手伝うよ!」

「いや、いい!!てか、触らないで!!」

「やだ!」

「ちょっと!?」

「困ってる人が居たら助けないといけないんだ!だから手伝う!」

・・結構いい奴なのかもしれない・・・。

そんな事はともかく、必死に足を抜こうと力を入れる私。

さらに後ろから私を引っ張る男。

満身の力を込めて、ついに私の足は抜けた。

少し、傷ついてるけど、大体大丈夫らしい。

「それ洗い流さないと固まるよ」

「ええ?!じゃ、じゃぁ水!」

「ない!」

「うわぁ、どうしよう!?」

これはすぐに何とかなった。昨日雨でも降ったのだろうか、水たまりが近くにあった。

泥を落として、一段落。私たちはその場に座り込んだ。

「ふぅ・・・・よかった・・・。」

「あの・・その・・ありがと・・。」

「ううん、いいよいいよ。困った時はお互い様だし!次俺が困ったら助けてね!」

もう助けたろ。宿貸して。(だから貸してないって

「ねぇ、そういえば聞いてなかったけど、貴方・・名前は?」

「え、俺?」

お前しかこの場にいねぇよ。

「俺は・・んー・・家では『レオン』って呼ばれてたな。」

「じゃぁ、レオンね。」

「んで、あんたは?」

野良にゃ名前はねぇよ。落ち込むから聞くなよ阿呆。

「…野良だから名前はない。」

「んー…じゃぁ、何か昨日はなしてたじゃん?」

「え?」

「あのー、ほら、前は人間だったとか何とか。」

ああ、前世の記憶の話か。

「うん、そうだよ。」

「その時の名前は何て言ったの?」

私が人間の時の名前?

「それを名前にすればいいと?」

「いいでしょ?」

「…うん。」

「でーはー、貴女の名前はぁ〜?」

あれ?何か急激に鬱陶しい…。でも、答えないのは失礼だし…

「・・・マリア。」

「マリオか。」

「ア!」

「よろしくな、マリオ。」

「アです!!」

「で、マリオ」

「だからア…」

「これからどうするん?マリオ。」

「・・・・。」

まずはお前に私の名前を覚えてもらいたい。間違わずに。

「とりあえず、今日も情報収集。『オオイタ』に行く方法を探さないと・・・。」

「え?『大分』?」

「知ってるの?」

「俺が住んでたの、『大分』だよ?引っ越してここに来た。」

なんという偶然だろうか。都合よすぎて恐ろしいくらい。

それでも私は素直に喜ぶ事にした。

「やった!じゃぁ、どうやって行けばいいか判る!?」

「それは知らない。」

一気に下がるテンション。湧き上がるやるせなさ。

私希望は見事に打ち砕かれた。

「な、そ、そんなに落ち込むなって!どう来たかは判らないけど、どうやってここに来たかは判るよ!」

それもかなり、オオイタに行くヒントに成り得る。

「じゃ、じゃぁどうやって来たの?」

「えーっと、何か『船』って言う乗り物に乗って、来たと思う・・」

曖昧だけど、それは結構いいヒントだ。

「じゃぁ、『船』に乗る事が出来れば、オオイタに行けるかも!!」

「おお!そうかもな!」

次に目指すは船がある場所!私の過去を探る旅が始まる・・・。

「おい、早く行こうぜ!マリア!」

「あ、ごめん。すぐに・・・って、今マリアって呼んだ?!」

「しまったっ!!」

「って事はさっきのはわざとか!レオン!!ちょっと来なさい!!」

「・・・・やだ!!」

「待てコラーー!!」



続く

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Novel Editor by BS CGI Rental
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