ザザン・・・。波の音が聞こえてくる。
そうだ、私たちは確か、ある国を目指し、無茶な事にいかだで旅立って・・・。
人魚に出会い、途中からは先導されながらさらに国を目指し・・・。
大雨に遭って・・・。それから・・・。
ふと、あたりを見回す。そこは何処かの小屋。私の隣にはレオン。と、見知らぬ女性。
「・・・?」
ここどこ?私たちは海に居たはずじゃ・・・。
訳が判らず,うろうろしていると、見知らぬ女性が目を覚ました。
「あら良かった。無事だったのね。起きないからどこか怪我したと思って心配しちゃった。」
それよりも、あんた誰よと。私は聞きたかったけど、聞いた所で人間には通じない。
「私よ、私。ま・り・あ・ちゃん♪」
え、もしかして・・・。
「ミコトさん・・・ですか?」
「そうっ!当たり!」
人間の姿にもなれたんだ・・・。てか、人魚の時と顔違う・・・。
「あ、いや変身したりしたんじゃないのよ?この体は"借りてるの"」
借りてる?ってことは、どういう事?
「・・・その姿は他の人のものなんですか。」
「そうそう♪さすが、元人間なだけあって利巧だね。マリアちゃん。」
エー・・・でもそれがどう言う事なのか判らない・・・。
「本当のこの人はね。ちょっと私の体を使ってるわ。交換って所。」
わ、わかんね―・・・。っていうか、人魚の体を気軽に貸して大丈夫なのか?
「まぁそれより。本当に大丈夫?」
「はぁ、まぁ・・・。って何があったんですっけ?」
「覚えてない・・・のか。」
「はい・・・。」
どうも、ミコトさんによると、私達はまた沈んだらしい。
それを何とかここまで連れてきた・・・との事。
「もう、一番速く泳いだわよ?今までで。・・・いや、本当に。」
「よく私たち体持ちましたね。」
「うん、だから体心配してるのよ。」
ああ、なるほどね。
「まぁ、レオン君は大丈夫みたいなんだけどね。」
「え?」
言われてレオンの方を見てみる。何とも幸せそうな顔で眠っていた。
「おいおい・・・そんなに俺、食えねぇーっつーの。止めろよ・・・。ぐああ・・・」
うなされてるのか、どうなのか微妙な夢だ。何?どんな状況?
「や・・・やめろ・・マリア・・・苦し・・・ぐはっ・・・」
えぇえー・・・犯人私か。何してんだレオンの夢の中の私・・・。
「た、たこは一匹丸ごとは食えねぇ・・・押し込むな・・やめろ・・・」
何で私そんなんしてんだー!!?
「起こした方がいいんじゃない?よく判んないけど。」
「いえ,日ごろ振り回されてるんでもう少し、夢の中で私にやられるべきです。」
と、それはそうと今居る場所は一体何処なのだろうか?
「ん?どうしたの?」
突然外に出ようとし始めた私を見てミコトさんが呼びかけてくる。
「今の場所は何処なのかを知りたくて・・・外に・・・。」
「ああ、ここ?」
そういうとすっとミコトさんが立って窓を開ける。そこには砂浜。
「大分の・・・。とある、海岸にある海の家・・・だよ♪」
って、言う事は・・・
「ついに、ついたぁーー!!」
あまりの嬉しさに私は飛び上がって喜びを表現する。
そのどたどたで何かまたレオンがうなされてるが知らない。
「ぅう・・・止めろ・・・たこで地震を起こすなマリア・・・(?」
私はそのまま外へと走り出した。
そして海岸を見てふと蘇る、あの頃の記憶。
彼とココで遊んだ記憶。
「ちょっと待ってよー!」
「遅っーい!速く着てよねー?水着くらい。男なんだし―。」
「男=早着替えの考えはおかしいと思うんだけどな?」「つべこべ言わない!行くよ!」
「ああ!だから待っててばー!!」
「・・・・・・。」
私は間違いなく、この国に住んでいた。
彼と・・・幸樹とこの国に・・・。
「マリアちゃん・・・。」
ぼうっとしていた私を少し心配げに見るミコトさん。
「私・・・記憶が・・・。」
「うん・・・。」
ミコトさんは静かに頷いた後、私を抱き上げ、撫でてくれた。
その心中はよく判らない。けど。とりあえず、私は甘えていた。
「うぅーん・・マリア・・そのたこ怪獣何処から連れてきた・・・食えねぇ。それは食えねぇ。」
撫でられて温かい気分になりつつ、私は改めて動き出す。
「・・・行かなきゃ。彼の・・・所へ。」
冬の風はとても寒かったけど、何故か熱は冷めなかった。
私の、大切な宿命が終わりに向けて近づいて行っている今だから・・・。
つづく。
「マリア〜・・・マリア〜・・・怪獣つれて何処に行くんだ―・・・。」
「いや、そろそろ起きろ。そしてその夢の中で何があったか話せ。」
続く。
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