■ トップページ  ■ 目次  ■ 一覧 

きゃっと・メモリー 〜人だった猫の恋〜 作者:糊塗霧 隙羽

第10回   10
ザザン・・・。波の音が聞こえてくる。

そうだ、私たちは確か、ある国を目指し、無茶な事にいかだで旅立って・・・。

人魚に出会い、途中からは先導されながらさらに国を目指し・・・。

大雨に遭って・・・。それから・・・。

ふと、あたりを見回す。そこは何処かの小屋。私の隣にはレオン。と、見知らぬ女性。

「・・・?」

ここどこ?私たちは海に居たはずじゃ・・・。

訳が判らず,うろうろしていると、見知らぬ女性が目を覚ました。

「あら良かった。無事だったのね。起きないからどこか怪我したと思って心配しちゃった。」

それよりも、あんた誰よと。私は聞きたかったけど、聞いた所で人間には通じない。

「私よ、私。ま・り・あ・ちゃん♪」

え、もしかして・・・。

「ミコトさん・・・ですか?」

「そうっ!当たり!」

人間の姿にもなれたんだ・・・。てか、人魚の時と顔違う・・・。

「あ、いや変身したりしたんじゃないのよ?この体は"借りてるの"」

借りてる?ってことは、どういう事?

「・・・その姿は他の人のものなんですか。」

「そうそう♪さすが、元人間なだけあって利巧だね。マリアちゃん。」

エー・・・でもそれがどう言う事なのか判らない・・・。

「本当のこの人はね。ちょっと私の体を使ってるわ。交換って所。」

わ、わかんね―・・・。っていうか、人魚の体を気軽に貸して大丈夫なのか?

「まぁそれより。本当に大丈夫?」

「はぁ、まぁ・・・。って何があったんですっけ?」

「覚えてない・・・のか。」

「はい・・・。」

どうも、ミコトさんによると、私達はまた沈んだらしい。

それを何とかここまで連れてきた・・・との事。

「もう、一番速く泳いだわよ?今までで。・・・いや、本当に。」

「よく私たち体持ちましたね。」

「うん、だから体心配してるのよ。」

ああ、なるほどね。

「まぁ、レオン君は大丈夫みたいなんだけどね。」

「え?」

言われてレオンの方を見てみる。何とも幸せそうな顔で眠っていた。

「おいおい・・・そんなに俺、食えねぇーっつーの。止めろよ・・・。ぐああ・・・」

うなされてるのか、どうなのか微妙な夢だ。何?どんな状況?

「や・・・やめろ・・マリア・・・苦し・・・ぐはっ・・・」

えぇえー・・・犯人私か。何してんだレオンの夢の中の私・・・。

「た、たこは一匹丸ごとは食えねぇ・・・押し込むな・・やめろ・・・」

何で私そんなんしてんだー!!?

「起こした方がいいんじゃない?よく判んないけど。」

「いえ,日ごろ振り回されてるんでもう少し、夢の中で私にやられるべきです。」

と、それはそうと今居る場所は一体何処なのだろうか?

「ん?どうしたの?」

突然外に出ようとし始めた私を見てミコトさんが呼びかけてくる。

「今の場所は何処なのかを知りたくて・・・外に・・・。」

「ああ、ここ?」

そういうとすっとミコトさんが立って窓を開ける。そこには砂浜。

「大分の・・・。とある、海岸にある海の家・・・だよ♪」

って、言う事は・・・

「ついに、ついたぁーー!!」

あまりの嬉しさに私は飛び上がって喜びを表現する。

そのどたどたで何かまたレオンがうなされてるが知らない。

「ぅう・・・止めろ・・・たこで地震を起こすなマリア・・・(?」

私はそのまま外へと走り出した。

そして海岸を見てふと蘇る、あの頃の記憶。

彼とココで遊んだ記憶。


























「ちょっと待ってよー!」

「遅っーい!速く着てよねー?水着くらい。男なんだし―。」

「男=早着替えの考えはおかしいと思うんだけどな?」「つべこべ言わない!行くよ!」

「ああ!だから待っててばー!!」


























「・・・・・・。」

私は間違いなく、この国に住んでいた。

彼と・・・幸樹とこの国に・・・。

「マリアちゃん・・・。」

ぼうっとしていた私を少し心配げに見るミコトさん。

「私・・・記憶が・・・。」

「うん・・・。」

ミコトさんは静かに頷いた後、私を抱き上げ、撫でてくれた。

その心中はよく判らない。けど。とりあえず、私は甘えていた。

「うぅーん・・マリア・・そのたこ怪獣何処から連れてきた・・・食えねぇ。それは食えねぇ。」

撫でられて温かい気分になりつつ、私は改めて動き出す。

「・・・行かなきゃ。彼の・・・所へ。」

冬の風はとても寒かったけど、何故か熱は冷めなかった。

私の、大切な宿命が終わりに向けて近づいて行っている今だから・・・。





つづく。



「マリア〜・・・マリア〜・・・怪獣つれて何処に行くんだ―・・・。」

「いや、そろそろ起きろ。そしてその夢の中で何があったか話せ。」


続く。

← 前の回  次の回 → ■ 目次

Novel Editor by BS CGI Rental
Novel Collections