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 後二日。
 
 私とハルカさんの寿命は後二日。
 
 ケンタクンは黒天使。
 
 ハルカさんの恋の相手はケンタクン。
 
 私はどうする・・・・・・私は・・・・・・
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 「天使さん・・・天使さん?」
 
 「ん・・あ、ごめん・・・。考え事してた。」
 
 「ねぇ、私・・・・・・あと何日で死ぬ?」
 
 「・・・・・・・」
 
 「時間無いでしょ?」
 
 「!?」
 
 「判るよ。凄い体調悪いもん。」
 
 そう、もう時間が無い。私も彼女も。全く時間は無いのです。
 
 「ケンタ君との恋・・・諦めようかなぁ。」
 
 「何言って・・・?」
 
 実際、黒天使であるケンタクンから離れれば、呪いが薄まって、
 
 寿命が延びますが・・・・それでも、恋を諦めていいの・・・?
 
 「恋が叶っても短すぎるもん。悲しいだけだよ。今までの思い出だけで良いよ。」
 
 「・・・・駄目!」
 
 「・・・・なんで?」
 
 「せっかく恋をしたんだから最後まで・・・やるだけやろうよ!」
 
 本当は諦めた方が良いのに・・・・
 
 何で私・・・二人をくっ付けようとしてるんでしょう・・・・・・?
 
 くっつけばとりあえず、心は暖められるだろうから?
 
 例えこの後死んでも、この恋さえ叶えば幸せだろうと、私が思ってるから・・・・?
 
 『暖まりさえすれば後はどうでもいい。自分はこれで助かるから。』
 
 心の中でそう思ってるから・・・・?
 
 違う。私はただ・・・ハルカさんが幸せなら・・・これで幸せになれるだろうから・・・
 
 え・・・?あれ・・?それじゃぁやっぱり、『自分はこれで助かるから』
 
 って思ってるってコトじゃない・・・?
 
 こんな考えで・・・本当に『ちゃんとした天使』になれる・・・?
 
 ・・・・・・・・・なれない。
 
 こんな嘘で固めて"作られた"幸せで人の心を暖めても・・・
 
 そしてそれで『ちゃんとした天使』になれても・・・
 
 それは『本当の天使』なんかじゃない!!
 
 私はそんな騙してなれる『ちゃんとした天使』になんてなりたくない!
 
 
 
 
 「・・・どうしたの・・?天使さん。急に黙って・・・。」
 
 「えっと・・・・その・・・ごめんなさい。私が口出す事じゃないのに・・」
 
 「・・・ううん。そんなことないよ。元気付けてくれてありがとう。」
 
 ハルカさん・・・・・・。
 
 「・・・・・・・・私・・・・行かなきゃ。」
 
 そういって、ドアのほうへと歩いていく私。
 
 「え?どこに行くの?ケンタ君今、先生と話してて居ないと思うけど・・」
 
 「うん、まぁ、大丈夫。さようなら、ハルカさん。」
 
 適当な相槌と、別れの言葉。これにはハルカさんも不審だと気づいた。
 
 「え・・?どういう・・・あ!ちょっと、天使さん!?待っ・・・・」
 
 私は彼女が止めるのも聞かずに部屋を出ました。
 
 ・・・・決心がついたので、すぐに行動に移そうと思ったのです。
 
 私は、人を騙してまで『ちゃんとした天使』になんてなりたくありません。
 
 だから、自分を犠牲にしても・・・私は嘘をつかない!!
 
 だから・・・・・・・・
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 キィー・・・・ガチャ。
 
 「ん・・・?ああ、またお前か。今度は何をするんだ?ハルカに告白でもさせるか?」
 
 「そんな事はしません。必要ありません。」
 
 「え・・・?お前・・・まさか!何を!?」
 
 何か違った雰囲気をケンタクンは感じ取ったのでしょう。
 
 まだ何もする前から彼は私から離れました。
 
 「貴方を・・・黒天使を消します。」
 
 「なっ・・・!?正気かお前!そんな事したら・・ハルカは悲しむ・・そして・・」
 
 
 
 「悲しませたお前は、消えてしまう事になるんだぞ!?」
 
 「覚悟は出来ています。貴方も覚悟してください。」
 
 彼を消せば、ハルカさんの恋は叶わなくなるでしょう。
 
 しかし、彼を消せば、ハルカさんの病気は治る。
 
 そうすれば、新しい人生が始まり、恋も出来る。
 
 だから、私は、黒天使を消す!
 
 「・・・・・イヤダ!!ヤメロ!!俺はまだ、人々を苦しめてそれを見て笑って・・」
 
 黒"天使"と言っても、心は悪魔とそう変わりませんね・・・・
 
 「俺はまだ消えたくない!!」
 
 「黙りなさい。」
 
 ドン!私の手から放たれた衝撃波が、黒天使の頬を掠めた。
 
 「あ・・・・・」
 
 へなへなと床に座り込む彼。
 
 「待ってくれ・・・・判った・・・。もうしない・・・。だから・・・・助けてくれ・・」
 
 「・・・・・そこまで言うなら。」
 
 何が何でも私は彼を消すつもりでしたが、やはり、無駄な殺生はいけない。
 
 私にも慈悲の心があります。彼がもう、人を呪わないなら見逃そうと思いました。
 
 「さぁ、早くこの病院から出て行きなさい。」
 
 しかし、この黒天使に慈悲の心は見せるべきではなかったかも知れません・・・。
 
 バチィッ!!
 
 電気が弾ける様な音。背中に走る激痛。
 
 私の隙をついて、黒天使が私に背後から攻撃をしてきたのです・・・。
 
 「へへっ・・・・誰が出て行ったりするもんか・・・。」
 
 「くっ・・・黒天使・・・あなた・・」
 
 「うるせぇー。早くくたばりやがれ。お前の魂も食ってやるからよぉーケケケッ!」
 
 このまま死んでたまるか!!私は力を振り絞り、奴に向けて最大の衝撃波を撃ちました。
 
 「なぁ・・・!?しまっ・・・・」
 
 当然ながら避ける暇はありませんでした。
 
 「ギャァアアあぁアアああァあ!!!!」
 
 凄まじい叫び声を上げ、衝撃波の直撃を受けた黒天使は灰となり消えました。
 
 よかった・・・これで、ハルカの病気は治るはず・・・・。
 
 私とケンタクンのことは忘れて、素敵な人生を送って欲しいで・・す・・
 
 あ・・・・もう・・い・・しき・・が・・・・きえ・・・る・・・・・
 
 
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 美しい光の中、私は目を覚ましました。
 
 そこに居たのは、私の監視役・・・つまり、神様。
 
 「神様・・・?なぜ私は・・」
 
 「君は、よく頑張り、ついに羽を手に入れた・・・。だからここに居る。」
 
 羽を・・・?でも・・・私は・・・。
 
 「私は心を暖められず、消えたはずでは・・・?」
 
 「いいや、暖めたよ。しっかりとな。わしの心を暖めた。」
 
 「じゃ・・・じゃぁ、私は・・・消えなくてもいいのですか・・・?」
 
 「うむ。これからも頑張って仕事をしてくれ。」
 
 「・・・・・・はい!」
 
 
 
 
 これは後から聞いた話ですが・・・
 
 実はこれは、神様が私たち天使全員をテストしていたらしいのです。
 
 最後の一回となったとき、自分を犠牲にするか、相手を犠牲にするか
 
 それを見ていたんだそうです。そして、このテストで相手を犠牲に
 
 してまで、生き残ろうとしたものは悪の心が生まれ、黒天使となるのです。
 
 だから、黒天使は羽が無くとも存在することが出来たのです。
 
 1000回人の心を暖めることは出来たから。
 
 でも、それは、本当の心を暖めると言うことにはならないため、
 
 "黒天使"なのです・・・・・・・。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 それから私は、それを飛ぶのもすぐに出来るようになり、
 
 『ちゃんとした天使』となれました。
 
 その後も、しっかり、人の心を暖める仕事を頑張っております。
 
 「ふぅー・・・次は・・・あっ!」
 
 おや、懐かしい・・・・・・
 
 「うむ、天使よ。次はあの少女の心を暖めるか。」
 
 「はい、頑張ってきます!」
 
 「よしよし、しっかりやってくるのだぞ。」
 
 「はい!」
 
 
 
 
 
 
 「今度は、ハルカの恋をきっと叶えます!!」
 
 「うむ、頑張れ。」
 
 「はい!」
 
 「(別に恋じゃなくとも心は暖められるんだがな・・。)」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 おしまい。
 
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