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均しきさだめ 作者:奇伊都

第42回   家族を思い……

 数日間、牽制に兵を出したりしていたらしい。
 いくつかの案をだしては、それを実行する手を打った。
 本格的なぶつかり合いというのはない。それはあちらが水上戦に慣れていないためでもあるだろう。
 亮は思案しつつ、ある丘に登った。陸からは遠くの曹操の陣を見ることはできないのだが、考えをまとめたいと思ったのだ。
 だがそこには先客がいた。
 それに気付いた時、亮は一瞬歩みを止めた。
 しかしその地面に座り込み、立てひざに顔をのせた姿勢の後姿は不定期に揺れている。
 そっと前にまわり、正面からみると……均実が舟をこいで寝ていた。手には笛を持っている。亮がいないため、あまり人のこないここで、笛を吹いていたのだろう。
 時折姿がみえないときがあるが、ここに来ていたのか。
 すこし微笑み、目を覚まさぬように横に座る。
 そしてまっすぐ曹操の陣があるであろう方向を見据えた。
 しかしこれからの戦の構想を練ろうとしたとき、
「ん……」
 均実が声を出したので、亮は起こしてしまったかと彼女を見た。だが別に起きたわけではなかったようだ。
 ほっとしつつ、亮は均実の顔にかかっていた髪を横にわけてやった。声がでるようになってから、均実は一応一つくくりに髪をまとめるようになったが、きちんと結ぶのが面倒なのかほつれてきている。
 異世界から来た娘。
 何年もこの世界で過ごし、そしてこの世界で生きていくことを選んでくれた。
 何より嬉しかったが、
「評兄ぃ……芳兄ぃ…」
 驚いて彼女の顔を見た。
 つぅーっと筋をつくって涙が目から落ちた。
「ごめん……」
 寝息を立てつつ、謝っている。
 涙をぬぐってやると、一瞬微笑むような顔をして再び涙が流れた。
「ごめんなさい……」
 家族……か。
 亮はふたたび寝息をたてはじめた均実から目をそらした。
 また自分が配慮していなかったことに気付く。
 均実にだって日本に家族がいるだろう。
 それを自分のために諦めてくれたのは嬉しいが……それが均実にとっていいことだったのだろうか。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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