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均しきさだめ 作者:奇伊都

第32回   頷き

 魯粛は夜になってから亮を連れて行こうとした。
 曰く、ようやく周瑜が帰ってきたという。
 明日は孫権の目の前で会議になる。その前に一度目通しをしておくべきだという。
「孔明殿、彼女も連れて行かれるのか?」
 当たり前のように亮の後ろについてきている均実をみて、魯粛は困惑したような声をだした。
「そうですが?」
 亮は何か問題が?という雰囲気を含ませて言った。
 一人にしておくのは不安だった。
 離れていると、どこかに何も言わずに行ってしまいそうな気がした。
「何かあれば責めは私が受けますよ。」
 亮がそういうと、魯粛はそれ以上何も言わなかった。
 だが屋敷に入る前に、家人に止められた。
 亮と魯粛以外は通すなといわれているらしい。
「困ったな……」
「供をつけますから、客舎のほうに均実殿だけ戻っていただいては?」
「しかし――?」
 亮が困惑していると、均実は彼の着物の袖を軽くひっぱった。
 見ると、屋敷の庭のほうを指差している。
 家人に聞くと、庭ならばいれてもいいと言われた。
「庭で待っていてくれるのかい?」
 亮がそう聞くと、均実は小さく頷いた。

 そう、ただ頷いた。
 亮の不安を和らげるような微笑もなく。
 ただ均実は頷いたのだった。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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