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Your Friends 作者:一之瀬 芽衣

第6回   心の傷のほうが痛い
 次の日、警報で学校が休みになったので久しぶりに全員で集まった。朝子の話はもうすることがなかったが気持ち的に律とはギクシャクしていた。そして、また言われた。

「うちのこと避けとうやろ?」

答えずに帰ろうとすればみんなに持ち物を奪われた。私はどうしてこんな私なのだろう・・・。

「昨日そんな考えの芽衣は嫌いって言ったやろ?あたしはそんな考えを全てやめたわけちゃうから律の顔は見れない」

そう言った。中途半端な付き合いはしたくない。そんな考えのままなんて付き合えない。ただ分かっていた自分のやっていることが一番律を傷つけていることくらい。だからもうこんな状態を続けるわけにはいかない、そう思った。そして律が納得するように私を傷つけてくれればいいと思った。

「あたしのことたたいて!律を傷つけた分だけあたしを傷つけてや」
「うちは何も傷つけてられへん」
「でもあたしこのままじゃ・・・」
「・・・分かった」

律はそう言って自分の頬を3回平手打ちした。そこにいた誰もが言葉を失い、驚いた。

「うちが自分のことたたいてどう思った?嫌やったやろ?はいこれでチャラね」
「・・・な、何でそんなことするん!?」
「だって傷つけて欲しいって言ったやん。うちは何も傷ついてないし心の傷のほうが痛いやろ?」

真っ赤になったほっぺたを氷で冷やしながらそう言われると言葉も出ずに、ただ涙を流すことくらいしか出来なかった。その姿をみて理穂が言う。

「芽衣、自分の納得するようにし」

私は頷いて律が自分にしたことを私も自分にした。律は結局私をたたかなかった。そして

「許してくれるんやったら握手しよう」

そう言って律は手を出してくれた。固く握られた手は暖かかった。

私は思った。こんなに私のことを真剣に考えてくれている。思ってくれている。必要としてくれている。好きでいてくれている。これ以上望めば私は完璧な罰当たりだと。今、私はやっと友情の幸せを掴んだ気がした。

この人たちを失いたくない。この気持ちがずっと続いてほしい。出来ることなら一生友達でいたい。未来は分からないけどこの先もずっとずっと一緒にいたい。でもこの気持ちが大きくなればなるほど不安が募った。だからこんな言葉がでたのかも知れない。

「形だけの友達でいよう」

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Novel Editor