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Your Friends 作者:一之瀬 芽衣

第5回   朝子バイバイ
  この日で朝子の話は終着を迎えることになった。理穂が朝子をうらやましいといっていたと聞いた。『めっちゃ芽衣に好かれてるんやもん』と言っていたらしい。それを聞いて嬉しくて恥ずかしくなった。でも自分のことを好いてくれている人がいるいることをもっと実感できたような気がした。

「芽衣が自分を傷つけることがうちらにとって一番傷つくし、傷つけられたって思う」

律も前にそんなことを言ってくれた。だから私は少しでも彼女たちを傷つけないためにも少しでも自分を好きになろうと思った。


「芽衣が朝子のこと好きでもいいで、でもうちらのこと好きになって!!」

この日は日曜日、4人で集まって話し始めると、律がまたいつものように私に言ってくれた。でも私はまだその言葉を素直に受け取ることは出来なかった。

「うち、やっぱ朝子のこと好きやねん」
「あんたはほんまにバカやわ!!でもそんなバカが好きなうちもバカや!!」

律と私は常にそんな言い合いを繰り返した。本当はすごく嬉しかったんだよ。ただ私は恐かった。大好きな人に裏切られるのはもう嫌だった。そんなことする相手じゃないってわかっていても恐かった。

「・・・うちは不安や。この人たちの中にいて置いていかれへんか。嫌いになられへんやろかって思ってる」

ここにいたのは私、律、凛、唯の4人だった。そんなことがあるわけない!!ってかあってたまるもんか!!

「朝子のことが好きな芽衣でも、自分を責めていても守ってやりたいっていうかずっとそばにいたい!!」

こんなことを言ってくれる人を少なくとも心の底から嫌いになるなんて死ぬことくらい難しい。言葉では意地を張って言えないけど、本当はずっと素直になりたかった。
「私もみんなが大好き」
そう言いたかった。だからこう言えばわかってもらえると思った。

「あたし、もう何もなかったように思うようにする」

最初からそう思えばよかった。そう思っていたらこんな風に何も悩まなくてすんだ。私が心の中で私を責めることで終着を迎えればいいんだってそう思った。でも律は私の心の中を見透かしていた。

「自分のこと責めへんな?」

律には私の心が読めるのだろうか?私は器用じゃない。うまく生きれる人間じゃない。だから誰かを責めずに解決なんて出来ない。でも誰かを責めることなんて出来ない。だったら自分を責めることしか出来ない。

「そんなこと絶対に認めんからね!!」
「大丈夫、忘れられるよ」
「ほんまに忘れられるん?」

そう言ったのは唯だった。ずっと律と私のやりとりを聞いていてそう思ったのだろう。律も私に言った。

「ほんまに本心で言ってんのか?」

全部知られてしまうのが恐かった。かっこ悪いとこや情けないとこなんてもう見られたくない。そんな自分をこれ以上見られたくない。だからそういう風に自分に言い聞かせて終わらせたかった。
「それはあんたのプライドが高いからやで。自分がしてあげたから自分もしてもらえるなんて思ってるからそんなことしかできへんねん」

母親も話に入ってきた。そう。私はそう思っていた。でもそれのどこがいけない?見返りを期待するのは誰だって当たり前じゃないの?自分が好きなら相手にも好きになってもらいたいのは間違ったことですか?

「あんたは過去に自分を頼ってくれた人が自分を好きでいてくれたから誰でもそうやって思ってるだけやろ?」

母親は何でも知っている。だから友達のように優しい言葉だけじゃなく、きつい言葉も掛けてくる。それを聞いていた律が言った言葉を私は全く違う意味で捉えていた。

「人はみんな違う・・・割り切ろう」

あ、そっか。律はこう言ったんだ『もうそんな話ばっか聞くの嫌やねん』あー私はどれだけみんなに甘えていたんだろう。ごめんなさい。

「ごめん、もうこんな話ばっか聞くの嫌やろ」
「・・・・芽衣はそんな風に思ったんや」

もう夜は9時を回ろうとしていた。私たちの話しあいももう私の家の前でやっていた。そしてみんなの家ももう心配しているそう思ったから。

「もう遅いから帰ったほうがいいで」

誰一人立ち上がらなかった。もう私のことでこんなに迷惑掛けたくないのに・・・

「早よ帰れって言ってみいや」
「早よ帰れ?」

そんなこと言えるはずがない。他の人ならともかく・・・あなたたちにはそんなこと絶対に言えない。言えるはずがない。そんな風に言えたら朝子のことだってこんなに苦しむはずはなかった。

「もう大丈夫やからまた何かあったらは相談に乗って」
「芽衣、うちらの目見て言ってみ」
「嘘にしか聞こえんで」
「・・・うちはそんな考えの芽衣嫌いや」

もう全て話した。この言葉が欲しかったわけじゃない。でもこの言葉ではっきりと気づいた。本当はもっとそばにいたい。もっと好きになってほしいと思っている自分に。そして朝子に対する気持ちはもう少しずつ消えた。でも律に言われた言葉を引きずっている自分はいた。

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Novel Editor