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Your Friends 作者:一之瀬 芽衣

第4回   私の父親
  私は父親が好きだ。だからどんなこと、恋愛のこと以外は全て相談してきた。そして、父親は過呼吸の経験者でもあったのでそのことを一番理解してくれていた。父親との話し合いは夜中まで続いた。そして学校を休んでも考えてみたほうがいいと言ってくれた。

朝子と私の考え方が根本的に違うと父親は指摘した。【友達】の意味の取り方が・・・。

「なぁ芽衣、朝子さんにとって友達って何やと思う?」
「・・・・ワカラナイって言ってた」
「それは多分本心ちゃうかな」
「え?」
「朝子さんは多分ただの話し相手=友達やと思ってんちゃうかな?」
「そうなん?でも友達に嘘ついたりせんやろ?」
「嘘をつくことは自分のためならかまわないんやろな。それに悩みもたまたま聞いてくれるんが芽衣やったから話しただけで誰でもよかったんやと思う」
「・・・・でも間違ったら謝るって」
「多分芽衣が傷ついたりしていることもそれが間違いやということにも気づいてないんちゃうかな」

私の思いをかき消すかのように父親は言った。そう言われてもっと早く気づくことができなかったんだろうと自分に後悔した。

「あの子は多分普通の考え方じゃないんよ。人のことなんて全く考えていない。自分さえよければそれで全ていいんよ」

前、唯がそう言っていたのを思い出した。朝子は過去に何かあったらしい。そして傷つけられたこともあるといっていた。ならどうして同じことを人にするのだろう。朝子は多分人を信じられなくなってしまったのだろうと思った。それがすごくかわいそうに思えてきた。でも利用された律や私の気持ちはどこに持っていけばいいのだろう。朝子にすれば『信用したほうが悪い』で終わりだろうがそれで解決?それで終わってしまうのだろうか。

「そんなん絶対にいや!!」

私は父に声を荒げて主張した。それだけは絶対に嫌だった。律と私が悪かった。人を、朝子を信じて真剣になってた私たちが悪い?普通友達を疑ったりなんかしない。疑い始めたらキリがなくなるしそこで終わってしまう。私はともかく律はどうして私と同じように朝子の相談に乗ったのだろう。私は律が言った言葉を頭の中から思い起こした。

「相談された人は相談してる人の気持ちになって考えるんやってうちは思う」

その言葉がはっきりと脳裏を横切ったとき、私は律がそれを朝子に貫いていたんだと思った。私もそうだった。記憶喪失なんて病院に行って検査して初めてわかるもんなんだって思う。でもそのときは朝子がすごく辛くて心細いんだろうと真剣に考えた。結果論が嘘だったけれどそのときは必死だった。毎日必死に真剣に考えて自分のこと忘れるくらい親身に話を聞いていた。

朝子のこと傷つけたいそんな気持ちはまだ消えていない。でも、朝子の気持ちが少し分かった以上、『何も信じられない気持ちを無理に捨てなくてもいい。でも朝子のことを本当に信じている、思っている人がいる!』それを伝えたかった。ただそれを伝えるためにきっと私は律の話をしてしまうに違いない。
「朝子さんと話すとしても自分のことしか話したらあかんで」
「何で?」
「朝子さんにしてみたら人のことを何であんたに言われなあかんのってことになってしまうから」

そう父親に言われた。だから今は何もいえない。いやもう何もいえない。それは私が私以上に律のことで朝子に腹を立てている以上は・・・。

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Novel Editor