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HARUKAZE 作者:依鈴

第1回   プロローグ
ついに電気が止まってしまった。
ブレーカーもしっかり上がっているから、料金未納からくるものだろう。
私は一人この部屋でついため息をつく。
そして、改めて全体を見渡して見てみた。
殺風景なベージュの壁、必要最低限しか置いていない家具。油でベドベドに汚れたガスコンロに、少しカビの臭いがするお風呂場。
これらがもう二度と使われることがないんだと考えると、つい切なくなってしまった。
季節がまだ春だから暑くて寝れないってことはないけれど、さっき見たときポストに水道の請求書が入っていた。
きっと明日には水道も出なくなるのだろう。
家賃がよく持ったなと、つい思って……フッと笑った。


この部屋は私が借りたものではない。キーが借りたものだ。
キーは細身で妙にひょろっとしていて、表情も青白い。
けれどニッコリと笑った表情がとても綺麗で……印象的なのだ。
私はそんな彼にちょうど一年前拾われた。少し風が強くて……冷たい、そんな春だった。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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