ついに電気が止まってしまった。 ブレーカーもしっかり上がっているから、料金未納からくるものだろう。 私は一人この部屋でついため息をつく。 そして、改めて全体を見渡して見てみた。 殺風景なベージュの壁、必要最低限しか置いていない家具。油でベドベドに汚れたガスコンロに、少しカビの臭いがするお風呂場。 これらがもう二度と使われることがないんだと考えると、つい切なくなってしまった。 季節がまだ春だから暑くて寝れないってことはないけれど、さっき見たときポストに水道の請求書が入っていた。 きっと明日には水道も出なくなるのだろう。 家賃がよく持ったなと、つい思って……フッと笑った。
この部屋は私が借りたものではない。キーが借りたものだ。 キーは細身で妙にひょろっとしていて、表情も青白い。 けれどニッコリと笑った表情がとても綺麗で……印象的なのだ。 私はそんな彼にちょうど一年前拾われた。少し風が強くて……冷たい、そんな春だった。
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