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道端の花 作者:依鈴

最終回   エピローグ
ミーン・・・ミーン
夏の風物詩の蝉の声。
小さな寺から聞こえてくる声だった。
制服を着た少年、少女。
少女の手には大きな百合の花束がある。
二人はひとつの墓の前に立った。
『常田家墓』
「美奈が死んで・・・もう4ヶ月ね」
小さな声で、そして少し懐かしく告げる麻穂。
「美奈、遊びに来たよ」
そう言いながら麻穂は百合の花を捧げる。
直人は桶に入っている水を墓石にかけた。
「久しぶり・・・美奈」
複雑な思いで言う直人。
二人とも・・・来てくれたんだ)
美奈は墓石の上に座り、二人を見る。
「私、自分の家の方のお墓も見てくるから」
そう言い、麻穂はその場を離れた。
直人は麻穂が居なくなるのを見ると墓石の中央にしゃがみこむ。
「今・・・飯田さんと仲良くやってる」
美奈はうなずく。
「これが恋かどうかはわからない。でも仲良くやってる」
美奈は少し複雑な気分でうなずく。
「美奈・・・これからも見守ってな?」
直人は笑いながら言った。
「もちろんよ」
美奈は墓石から飛び降り直人に抱きついた。
その感触に直人は気づくことは決してなかった。

蝉の泣き声が聞こえる暑い日。

直人は何故か暖かい気持ちになっていた。


〜Fin〜

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Novel Editor