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道端の花 作者:依鈴

第4回   第三章
自分の為に泣いてくれる人。
でも美奈はそんな人に声をかけることなどできない。
「直人・・・ありがとう・・・。」
どうせ言っても聞こえない。
でも美奈は言わずにはいられなかった。
「え?」と言いながら振り返った直人。
直人はまっすぐと美奈を見る。
美奈も驚いた。
「見え・・・るの?」
「あぁ・・・見える。見えるよ!」
直人は泣きながら言った。
「美奈、僕の所に来てくれたんだね!」
直人は美奈を抱きしめる。
しかし、直人が彼女の感触を感じられたのはほんの一瞬。
すぐに空気のように感触は消え、空気を掴むような形になった。
「ごめんね、直人。」
美奈は直人に謝った。
「それはこっちのセリフだよ。」
「でも」
美奈は言った。
「ありがとう。」
笑いながら美奈はそう言ったのだ。
直人も笑った。
その時だった。
美奈の姿が消えかけてきたのは。
「消えてきてる!」
そう直人に言われ、急いで美奈は手を見る。
透けていた手がどんどん薄くなっていくのが分かった。
「きっと・・・火葬が始まったから。」
自分でも考えられないくらい冷静に美奈は告げた。
「・・・逝くのか?」
とまどいを隠せないような顔で直人は言う。
美奈の答えはひとつだった。
「うん、私はもう人じゃないから。」
「もう・・・会えないね。」
「そんなこと・・・ないよ・・・」
そう言いながら涙目になる美奈。
「私・・・ずっと直人の事見てる。直人は私の代わりに勉強や運動や・・・恋。がんばってね」
直人はうなずけなかった。
「私のこと。忘れて良いから。」
直人は黙っている。
「それじゃあ・・・私逝くから。」
美奈はニッコリと笑うとそう言うと後ろを向き、歩き出した。
「美奈!」
直人に呼ばれても美奈が振り返ることはなかった。

ありがとう・・・直人・・・・
私のこと・・・想ってくれて・・・・
美奈はそのまま天へ召された。
その頃、ちょうど美奈の遺体は火葬が終わり
彼女の遺骨が残った。

花びらは舞う。
何を思い 何を感じ
花びらは舞うのだろうか。
もしかしたら
彼女の思いも
花のように舞うのだろう。
小さな道端の花でも
舞うことができるのだから。

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Novel Editor