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道端の花 作者:依鈴

第3回   第二章
どうしよ・・・。)
美奈は思った。
直人の家はセコム付きマンション。
インターフォンを押さないとはいれな・・・・くなかった。
クスクスと美奈は笑ってしまう。
自分は霊だった。
きっと壁など通り過ぎることくらい簡単にできてしまうだろう。
少し勇気がいるが、美奈はチャレンジしてみることにした。
予感通り、意図も簡単に入れてしまった。
ますます・・・人間離れ技だなぁと自分でやりながら納得してしまう。
エレベーターに乗り、13階を目指す。
途中、3階に止まり、おばさんを乗せ7階へ行った。
おばさんは7階を降りるとすぐに上に向かうエレベーターを不思議に見た。

ついに直人の家の前についた。
当然ながらインターフォンは鳴らせない。
ここは気が向かないが不法侵入することにしよう。
どうせ霊には不法侵入罪など関係ない。
見つかったところでそんな寝言を信用するような大人もいない。
ドアはしっかりとしまっていたが、すり抜けることができた。
玄関には直人の靴が置いてある。
突き当たりにはトイレがあるが、さすがにいたらヤバイと思い、見るのを止めることにした。
美奈はとりあえずリビングに向かった。
リビングには誰もいなかった。
大きなテレビにPS2やゲームソフトが散らばっている。
ただ時計の秒針が聞こえる。
チクタク・・・チクタク
16時・・・おやつの時間過ぎてるなぁと美奈はのんきな事を思う。
お腹がすかないということは何もたべなくていいことだ。
美奈は部屋を見てみることにした。
どの部屋も開いて人気がない。
ところが一つだけキッチリと閉まっている部屋があった。
直人の部屋の場所を美奈は知らなかったので、きっとここがそうなのだろう。
美奈はそう確信し、部屋に入った。

青い部屋だった。
でも濃い青ではなく、空のような色。
タンスや、ベッド、そして小さなテーブルが置いてある。
小さなテーブルの上には無造作に漫画が置いてあった。
この漫画・・・私が読みたいって言ってた漫画だ・・・・。)
直人はその事を覚えていたのだろうか。
美奈は漫画から視線を離すと、まっすぐと前を見た。
そこには彼がいた。
後ろ姿で表情も見えないが、それが植村直人の後ろ姿だと美奈は分かった。
「直人・・・。」
言っても聞こえない言葉。
「美奈・・・美奈・・・」
え?)
直人は小さな声でそう言ってたように聞こえた。
美奈は直人の机を見た。
何十枚もの葉書がばらまかれている。
そして
直人が持っていた葉書は美奈が今年あげた年賀状であった。
美奈が一生懸命選んだ申の年賀状。
年賀状にはお決まり文句の「あけましておめでとうございます」が書いてある。
美奈が一言添えた文章は濡れていて読めない。
私・・・何書いたんだろ。)
「漫画・・・まだ貸してないのに、ゲームやろうっていったのに、また遊ぼうって・・・そう・・・・そう美奈は・・・言って・・言ってくれた・・・の・・・に・・・。」
直人・・・。)
美奈は直人の泣いている姿を見てただただ悲しくなった。

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Novel Editor