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道端の花 作者:依鈴

第2回   第一章
どうしてみんな泣いてるの!?
どうして私の遺影があるの!?
美奈はただ立ち尽くした。
麻穂・・・お父さん・・・お母さん・・・学校先生・・・友人達
みんなみんな大切な人。
美奈は歩いてそっと家族の所に近寄る。
母は白いハンカチを持ち、歯を食いしばり涙を見せないようにしている。
その姿が痛々しく、美奈は見ていられなくなった。
みんな・・悲しんでくれてるんだね。)
美奈はそのことにうれしさと悲しさを感じた。
美奈の遺影の前で上げられるお焼香。
自分はここにいるのに見るのは変なカンジだ。
クラスメートが次々を上げていく。
普段いじわるする男子やいじめ好きな女子が泣きながらお焼香を上げる。
その光景が寂しかった。
これから私の教室の机にはきっと花が添えられるのね。)
そんなことを思いながら見ていたら、寂しそうな顔をしながらお焼香をする少年を見た。
「あ・・・」と美奈は思った。
髪型も、服装もきちんとしている少年。
「なお・・・と」
しゃべっても消して聞こえないのに美奈は声を出し、その名を呼んだ。
植村直人。
好きだった人だった。

「植村君。」
麻穂は葬式を終え、帰ろうとする直人に話しかけた。
「火葬場、いかないの?」
火葬場・・そっか、私焼かれるのね)
美奈はふむふむと納得している(自分の体なのにね・・・。)
「別に・・。」と立ち尽くす直人。
「一緒に行こ。きっと美奈も喜ぶよ。」
「そんなのわからない。」
「わかるよ!美奈は・・・・」
その続きを麻穂は言えなくなってしまった。
言おうとしても大粒の涙が邪魔をする。
麻穂言いたい事がいえず、もどかしかった。
「ごめん、飯田さん。」
そういうと直人は去っていった。

どうしよ・・・っと美奈は考えていた。
自分がどのように火葬されるかは非常に気になるが、はやり直人の事も気にかかる。
でも・・・私なんで天に召されないんだろ・・・)
浄土真宗に入っている美奈はいつでも天国に逝けることになっている。
それなのに美奈はここにいる。
ということは・・・私、浮遊霊なのね。自縛霊のはずないし・・・)
浮遊霊とは、自分のやりたいことをやり遂げていないため、天に召されない霊のこと。
私の・・・やりたいことってなんだろ・・・。
美奈はそう考えるようになった。


とりあえず美奈は下界を見ることにした。
私は・・・もう人じゃないもんね。)
美奈は悲しくて涙が出そうになるが、急いで拭う。
よし!直人の家に行こう!
そう思い浮いていった。

直人の家はセコム付きのマンション。
13階建てで直人は13階に住んでいる。
ここの景色・・・いいんだよね〜☆)
美奈は2.3回直人の家に来ていた。
学校帰りに来ることが多かった。
ゲームをやったり、茶を飲んだり。
楽しかったなぁ・・・)
彼は・・・私の事をどう思っていたのだろう。
つい美奈はそう思ってしまった。
そして首を振る。
そんな事思っても意味がないと。
自分がそこにいた。
でももういない。
もう足跡しか残っていないのだから。
前にも進めないし、だからといって後ろにも行けない。
だがら
彼に会いに行こう!

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Novel Editor