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道端の花 作者:依鈴

第1回   プロローグ
花びらが舞う。
花びらが舞うこの季節に
血の悲劇が起こるなど、誰が予想しただろうか。
ピーポーピーポー・・・
救急車の音。
白い服を着た救急隊員が倒れている少女に近寄る。
そしてそっと少女の口元に手を置いた。
息が・・・ない。
なま暖かい風は、少女の口から漏れなかった。

交通事故だった。
ただ歩いていた少女。
そこに大型トラックが突っ込み、小さな命は消えた。
救急隊員の一人がそっと少女を抱く。
「かわいそうに・・・。」
ポツリと呟く救護隊員。
「常田美奈14歳。市立S中学校の生徒のようです。」
1人の救助隊員は血の海に落ちていた生徒手帳を見て言った。


あれ・・・・
私はどうしたんだろう。
美奈はふわっと地面から浮いていることに気づいた。
手も透けて見える。
何故?
美奈は首を傾げながらふっと足を見た。
足が・・・ない・・・。
ひざから下がよく見えなかった。
そこだけないように見えた。
何故?
するとシクシクと泣く声が聞こえてくる。
それは友人麻穂の声?
麻穂・・・?どうして泣いてるの?
それは麻穂だけの声ではなかった。
えっと美奈は耳を疑った。
その声は親族の声、友人の声、そして好きな人の声・・・・
みんなの声だった。
どういう・・こと!?
そして美奈は写真を見た。
笑っている少女。
それはまぎれもなく自分『常田美奈』であった。
私・・死んだの!?

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