彼岸花の別名は
「曼珠沙華」
「死人花」
「捨て子花」
「石蒜」
「天蓋花」
「天涯花」
「幽霊花」
「かみそりばな」
有毒植物ながらも、外用薬にもなる。
秋の彼岸に咲き乱れることから、花の名前が名付けられた。
花が美しく咲く秘訣は…。
その土手には、彼岸花がとても美しく咲き誇っていた。
見る者の眼を惹き付けて放さない、美しい彼岸花。
そこの土手には、1人の少女がいる。
見た目15・16ぐらいの少女は、彼岸花の群れの中に立っていた。
愛おしそうに彼岸花を見つめる姿は、1人の男子高校生の目を惹いた。
その視線に気付き、少女は少年に微笑みかける。
―その次の日も、少年は少女に会いに、土手へ訪れた。
その次の日も、また次の日も、休みの日も…。
やがて少年は、学校もサボるようになった。
彼岸花が咲く中、少女と一緒にいることがとても大事で、嬉しく思えたからだ。
だがやがて、彼岸花がしおれてきた頃、少女の顔色が悪くなっていることに気付く。
体の具合も悪そうだ。
少年は少女に訪ねた。
どうしたの?―と。
しかし少女は首を横に振り、儚く笑うだけ。
そして次の日、少女は少年に別れを言い出した。
けれどまた、ここへ戻って来ると少女は言った。
しかし少年は嫌がった。
ずっとキミと一緒にいたい―と。
すると少女は少し考えた。
そして言った。
二人がずっと、一緒にいられる方法を。
そして、少年の姿は消えてしまった。
警察や周囲の人々が一生懸命捜しても、見つからなかった。
やがて彼岸花も枯れてしまい、少女の姿も土手から消えてしまった。
だが周囲の住人達は、ボソボソと険しい顔で話をしていた。
あの土手のことを―。
昔、あの土手が死体を埋める場所だったことを。
その死体の大半は、食料が無く、見捨てられた子供が生きながらに埋められたことを。
いつの頃か、土手には彼岸花が咲くようになり…死体の数だけ花の数は増えていったということを。
やがて…彼岸花が咲く時、1人の美しい少女が現れるということを。
そして彼岸花が枯れる頃、若い男性が必ず消えてしまうことを…。
一年後。
土手には再び彼岸花が咲いた。
昨年よりも数が増えていることには、誰も気付かない。
そして再び、少女は現れた。
彼岸花を愛おしむように見つめている。
その足元には…白骨の手が土から出ていた。
少女は視線を感じて、顔を上げる。
背広を着た若い男性が、こっちを見ている。
少女はゆっくりと、微笑んだ。
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