「チョコレートって甘くてうまいよなー☆」  学校からまっすぐ幼なじみである雅人の家に直行し、 ベットで黙々と雑誌を読んでいる、相棒・穂高雅人にポテっと もたれかかって呟いてみる。
   毎年の恒例行事だが、今年のバレンタインデーも凄かった。  なんせ俺の幼なじみは、全国模試でもトップ1で、眼鏡の似合う氷の王子様 なんて乙女達に言われているんだから。
   そんな雅人に本命チョコを渡そうと、待ち受けている女の子達の あの手この手の攻撃をかいくぐり、俺たちはやっとの雅人の家に帰宅したのだ。
 
   幼なじみだった雅人は、子供の頃からむやみやたらと女にモテた。  ガキの頃から同じ飯を食って、同じテレビやマンガを観て泣いて笑って。  なのにアイツばっかりグングン背が伸びちゃって、声も鳥肌たつよーな低め のハスキーボイスで。  俺なんて生まれから16年間、一度も手作りチョコなんかもらった事ないのに!
  「あ〜あ。俺も欲しいな…。チョコレート」  上目使いで雅人を見上げながら、俺はうらめしそうな声で呟いてみる。  机の中、下駄箱、バック、ロッカー。  考え得る限りのスペースというスペースに、みっちり詰め込まれた チョコレートを、アイツは一瞥もくれずに、捨てようとしたから。  そんなアイツの所業に、俺が怒って持って帰らせたんだよね。  ありえない…つーか神様はズルイ。
  「全くお前は…。赤の他人にチョコレートもらって嬉しいのか? 押し付けがましいし、第一下心がみえみえだろう」 「下心上等! すっげー欲しい。めちゃめちゃ欲しい。俺だったら、わざわざチョコをくれたら、何でも言う事聞いちゃうね!」  だって女の子が俺のためにわざわざ選んでくれたり、作ってくれたりするんだろ?  そんな甲斐甲斐しい女の子が現れたら、何でも言う事聞いちゃいますよ。
   俺の言葉にピクリと反応した雅人が、ゆっくりと俺に向き直る。 「な、なんだよ。怖い顔して」 「チョコレートごときで奴隷になる、つまりそう言う事だよな?」 「奴隷って…。どうしてそんな単語がで出てくるんだよ」 「お前が言ったのはそうゆう意味だからだ。全く…。救いようのないアホだな、お前は」  カッチーン! (喧嘩売ってんのか、テメー) と思わずワイシャツの袖をたくしあげ、雅人を睨みつける。
  「じゃあさ、勝負しよーぜ! 俺が勝ったらお前のチョコ全部くれ」 「ああ。くれてやる。ただし、お前が負けたら、やったチョコレートの数だけ俺の命令を聞くんだぞ」
 
 
 
  
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