今日は早く帰れる事になったので、本屋へ行こうか誰かを誘って飲みに行こうか、 色々思案する。
何となく人恋しい時は、なるべく一人で居たい方かも知れない。 誰かと遊ぶのもいいんだけど、自分の物寂しさみたいな感情とひっそり向き合い、 大事にしたいとも思うのだ。
だってそうゆう時って感受性も強くなっている訳だから。
せっかくなら本を読んだり、綺麗な物を見たり聞いたりしたら過ごすのも、 とびきり贅沢なんじゃないかって思ってしまう。
ひとりだからこそできる事。したい事。
そう思った瞬間、ふっと閃いた。 こうゆう企みを思いついた時は、何だかワクワクしてしまう。
Yahooで目的地を入力すると、一瞬でHPが開かれる。 ふむふむ。 閉館時間は22時。 全然余裕で間に合うじゃない。
もしも帰りに本屋で目当ての本と出会えたら、それを持ってこの場所へ 行こうと決めた。 あたしは一人で何かを行動する時に、「もしも○○ならば」と言う制限を 幾つかもうける。 例えば明日晴れたらとか、おまじないみたいな些細な事なんだけどね。
本屋に入ると、すぐに見つかった。 江國香織さんの『東京タワー』。 あたしはこの本を購入すると、浜松町で下車する。 この本を東京タワーで読むために。
東京タワーの夜景を見てから、展望台にあるカフェでのんびり本を読むなんて、 考えただけでワクワクしません?
会社の最寄り駅からいつも小さく輝く東京タワーが、ぐんぐんと大きく 近づいていくとあたしの足も速くなる。
あたしは電線とか鉄筋とかも凄く好きなので、エレベーターに乗った瞬間 ワクワクした気持ちになる。
特別展望台はさすがに狭くてカップルばっかりだったけど、 あまりの綺麗さにそれどころではなかった!
展望台に戻り、お気に入りの場所でしばしぼうっと夜景に見とれる。 おもちゃ箱をひっくり返したような景色に、思わず酔ってしまったのだ。
忙しなく流れ続ける車の列とか、間隔を開けて羽田を離着陸を繰り返す 飛行機を眺めていると、しばし時間を忘れてしまう。
夜景を十分堪能したあとは本日のメイン。 東京タワーの展望台にあるカフェで、22時まで『東京タワー』を 読み進める事にした。
もう。凄い贅沢なのよ。 文字を目で追いかけながら、ふと視線を上げると眼下に東京の 夜景が一面に広がる。 飛行機を見つけたらのんびり窓の外を眺めてみたり、キャラメルラテの 甘さとほろ苦さに酔いしれながら、閉館まで素敵な時間を過ごしました。
残念だったのが、東京タワーに行く途中に一目惚れしたお店のラストオーダー が終わってしまっていた事。 かなりハマりそうなので、また仕事帰りに何か本を持って寄りたいなと思いました。
そうそう。 せっかく「東京タワー」を読んだ帰りだったから、あたしも年下の男の子と デートをする事に。 あたしのよく知っている6つ下の男の子に、澄ました声で携帯から電話してみた。 「夕飯がまだなら一緒に食事でもと思ったんだけど」 そう言ってから、詩史さんになったつもりで言葉を続ける。 「あ、でも、あなたお酒飲める?」 まぁそんな訳で弟にご飯をおごって、ちょっとだけワインなんかを飲んでから 仲良く帰りました。
何だかゆったりと時間が流れる素敵な夜でした。
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