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作者:米沢涼

第4回   桜と中心十瀬
 今の俺は、楽しい高校生活を送っていた。
 昔と違く、友達付き合いも良くなったと、親にも兄にも言われた。それはものすごく嬉しいことだった。
 新しい友達とは、よくメールをやったり、遊びに行ったりして、今よりはよくなったと思う。

 桜を見るとき
 俺の心は桜に目が止まる
「オイ十夜。早く行こうぜ」
「お・・おう」

 桜散る その日はいつに 心咲く

 咲いてくる 花々空を 舞っている

 大空を 見上げてごらん 木の下で

 遠くを見るように、俺は空を見た。
 それは木の下で見ていた。すると、いつもと違う青ではなく、ピンク色で染まっていた。
 新しい人生とは、今つくるこの時間で決められる。
「十夜!本当に早く行かないと置いてくぞ」
「うわぁ・・・ごめん〜」
 俺は走って友達のところに行った。ふと振り返ると、桜が悲しんでいるようにも見えた。


「そんなに桜が好き?」
 ふと声をかけられたのは数日後。
 学校の中で、あの頃の俺は桜を見ているのが癖になった。
 かけてきたのは、隣の席にいる、楠木春菜さんだった。
 特にこれといって話す人ではないが、人付き合いはいい人なのだ。だからか、いろんな人に話せれる人。すごいなぁ〜これぐらいしか思えない十夜。俺だった。
「好きって言うのかな?なんか落ち着く・・」
「へぇ〜お気に入りってわけか・・」
「たぶんね」
 なんだかこうしてみると、前よりは話すようになったと、自分でもわかるようになってきていた。けれど、まだまだだなぁと感じる。

 きちんとした考えを持って、新しく望める春

 桜という名の花を見ていると、落ち着いた漢字になれる春

 涼しく回りのことをきにしないでいられる春

 すべてにおいて新しい春

 授業中も、ずっと桜ばかり見ているせいか、あまり授業はわからないが、家での宿題とか、家庭学習とか、自主とかでやれば、なんとなくわかるし。なによりも、頼りになる兄が居て、十瀬も居る。
 小学生に戻った感じで、なんだかスッキリする気分だった。
 新しいことが今からでも送れそうな気もしてくる。


 今。俺は高校というのは、また新たなものだった。
 いる友達も、雰囲気も全然違うものだ。ある晩、どこかの路地裏で酒を飲んだり、けんかをしたり、ゲームセンターというところで、暴れまくったりする生徒もいて、そういう話を聞くのは面白かった。

 やめなよ

 とかいう、善良な言葉は出てこない。

 へぇ〜・・・そうなんだ〜・・・いいなぁ〜・・・面白そう・・・

 こういう言葉しか出てこない今。けれど、また未来に変わっていくと。

 なぜあの時あぁおもっていたのだろう。

 こう思っているかもしれない。けれど、あるいはこうとも思っているかもしれない。
 
 やっておけばよかったなぁ〜あの時期に・・
 
 と思っていたりとかもするわけだ。
 成長と共に・・・進む方向と共に、考え方は人それぞれになっていく。
 それなのに、親は子供にあ〜だこ〜だ言うらしい。

 確かにしつこいときとかもある。
 友達からよく聞くことは、春で新しいんだからもっと部屋をきれいにしなってどなられたりだそうだ。
 〜なんだからという言葉が大っ嫌いな子供に対して、かなり嫌な文句だった。
 女なんだからあぐらかくんじゃないとか、男なんだからもっときりっとしなさいとか・・そういうのを、人は差別と呼ぶのではないだろうか?
 大人なんだから・・・子供なんだからとか、〜なんだからという言葉に対して、不安や悩みを抱える人は少数ではないのではないのだろうか?

 大人の人も子供に戻ってみてほしい。

 お姉ちゃんなんだから、しっかりしなさいとか。
 姉がなんだって話ではないか?
 ただ単に、早く生まれてきてしまっただけなのに。なら、もう一人産まなければ良かったじゃないかとか。そういう風にとらえてしまう子供なのだ。

 夏なんだから、もっと涼しい格好にしなさい。

 この言葉もいやだ。
 自由ではないのだろうか。
 あの人の体温はこうだ。この人の体温はこうだというように、感じる感覚も違うものではないのだろうか。

 他人は他人自分は自分

 親がこういうくせに、こういうところも「他人は他人。自分は自分」の言葉を使っても良いのではないだろうか?
 子供という不便で便利なところを使う。その言葉を言うと、よくあ〜だこ〜だ矛盾した事を言われる。

 あなただってそうではないか?

 言ってる側から、人の事をいえない人だっている。よく親がそうだからだ。
 だからよく子供は、「だって・・・」とか「だったら・・・」とか言う言葉を使う。それに対して大人は、「だってじゃない」とか言う人が多い。
 文句を言ってくるのだから、それに疑問を持ったり、言い返したりとかするのも、これまた子供っぽい良い所ではないか。なのに、親なんてそういう言葉を聞き入れない。子供に選択肢なんて無いのだろうか。
 もしかして、その親がそうだったから?だから自分の子供にもそうきつく当たっているだけなのだろうか。

 子供からしたらどういうだろうか。子供はどう思っているのだろうか。

 そんな疑問を親は持ってほしい。
 言葉よりも考えだ。
 今の中学生活が、一番考えどころだ。
 反抗はするし、疑問を持つ。そして何より、考える力が一番ついているころだからだ。
 そんな話をよく高校に入ってから聞くようになっていた。


「子供の何がわかるんだよ!」
 俺は聞き役だった。
 また言ってる。高校の友達は、いつも俺にべったりついてくる。それが俺にとって嬉しいことだった。
 なぜ嬉しいか?って?そりゃあ、頼りにしてくれてるとか、なんだか嬉しいのだ。とりあえず。
「子供の事知らないでよく言う親は嫌だよね・・・」
 と、少しその話題に深くなるように、告げ口を入れるだけだった。
 結構こんな愚痴というのか、親のことだとか、友達の事だとか聞くのがかなり好きなのだ。
 俺からは話さなかった。話すも何も、何を言えば良いのかがわからなかった。
 親との接触なんて、高校入ってあまり無かった。中学の頃なんて、あまり話さなかったから親になんてあまり近づかなかった。一番近づいていくのは、兄貴だけだったが。


 今日も授業が何なりと終わった。
 この頃は本当に楽しみといったら、メェルと十瀬だけだった。
 十瀬といるときは、かなり落ち着くし、何でも話せる。
 十瀬とのメェルのやりとりは、たいそうな時にしかなかった。すぐ隣だから会えたというのもあるだろう。
 勉強だって、たまに教えに来てくれるというのだ。
「あぁ〜今日も面倒だったなぁ〜」
 疲れたように、肩の力が抜け、ブラ〜ンブラ〜ンとカバンを持った手を揺らしていた。
「今日十夜のところでねよぉ〜」
「いいよぉ〜」
 たまに十瀬は、自分の部屋じゃ寝れないと、来るようになったのだ。
 来た日は、かなり話題がためられていた。どこから作ってきたの?というように、いろんな話が聞けて、俺も気に入っていた。

 家に帰ると、即行十瀬は俺の部屋に来た。
 俺の部屋に来ると、即効学校でのことを言う。俺の席の後ろだから、ほとんどわかるが、言い方が面白いのだ。
 クラスの担任がはげているオジサンなのだ。その人のことを十瀬はこういう。
「あの蛍光灯ジジイ!いつも俺のことばっかり使って・・・そのせいでかなり腕力とか ついたんだぜ!いらねぇよ腕力なんて!」
「蛍光灯ジジイ。ツルピカジジイじゃないの?」
「それは!世間一般でしょ〜だから蛍光灯みたいに頭が光るから、蛍光灯ジジイ。黒板の蛍光色高いんだから、自分の頭使っちゃえば良いのに」
 と、笑いながら言ってくる。
 そんな、人と並外れたことが大好きな十瀬と、どういう会い方をしたのか、たまにふと忘れる。けれど、そういうのをたまに忘れても良いんじゃないかな?と、ここ最近思う俺。
 
 次の日の朝も、起きたら「こんな夢見てさぁ〜」と、夢の話をしてくれたりもする。それがまた嬉しくて、笑いながら聞く。チョット嘘っぽいが、それこそ夢だなとも思う。
 今思ってみれば、そのときよりも、笑える話だった。
 そのときじゃないと、話せなかったような話も、たくさんしたし、飽きない話ばかりしていた。
 そんな俺でも、十瀬や紳がいてくれて、良かったと思う。


 今は、高校になって別々になった。と言いたかったが、十瀬は実際さっきから、「早くしないと」など言ってるのが十瀬だったりもするのだ。
 元々、俺が今の高校に入りたいといったら、十瀬がついてきた感じだった。けれど、そのとき俺は、十瀬が行くところを狙っていたが、レベルが高くて無理だったのだ。だけれど、入れる十瀬が、そこよりレベルが低い俺のところに来たのだ。


「あぁ〜・・今日の授業面倒なのしか入ってないんじゃない?」
 布団の上に大の字になって、子供のように駄々をこね始める。
「なにあったっけ?」
 しらばっくれるような言い方だが、本当に十夜は忘れていた。
 キラッと十瀬の目が光り、十夜のほうを見た。
「何言ってるんだ!疲れる体育は二時間続き!しかもその後は、眠たくなる国語に、ビシビシいく数学・・その後昼休みで次が頭の疲れる社会!そして担任がへぼすぎてわからない理科!そして・・・やっと帰れる・・・・キツイ・・・・とっぱじめから体育とかありえんし・・・けど、昼休みの前に家庭科じゃないだけチョットだけの救いかな・・」
 こんなマシンガントークを聞いている俺。
 面白いところがいっぱいで、毎日が飽きない。
 一旦十瀬は家に戻り、外で待ち合わせをする。いつもどおりの生活が始まるかと思った。

 二時間目の体育。
 ある問題が起きてしまった。
「十夜!」
 体育は球技をやっていた。チョット遊び半分が入った先生は、気晴らしと言うことでドッヂボールをやっていた。

 何があったのかというと、運動がダメというか、球技が嫌いな十夜は、端のほうでポケーッとしていた。
 すると、それを狙ってきたガタイのでかい男は、即座にそっちに強いボールを投げた。
「十夜!」
 十瀬は同じチームだった。
 十瀬が怒鳴ったが、反応が遅かった十夜は、想いっきり硬いボールが耳よりチョット高いところに辺り、ばたりと倒れてしまった。
 即十瀬が保健室に持って行った。

 その後目が覚まさないのと色々で何とか病院に連れて行かれた。
 当たったのは、左側のところだった。
 病院の結果、左耳に影響し、聞きにくい又は聞こえないと気があるというのだ。
「いいよ。あんまり私生活に問題なさそうだし」
 と、その当時の俺は通した。けれど、かなり権(ごん)次郎(じろう)(ボールをぶつけた人)と十瀬は、かなり心配していた。

 今の俺も、実際ほとんどと言うか、全然左耳は聞こえていない。
 中三になる前は、時々聞こえない時があったなぁ〜だが、中三になってからは、本格的に聞こえなくなってしまった。
 本当に最初言ったとおり、全然私生活には問題無しだ。たまに左にいる人の声が聞こえないが、ほとんどの人は、このことを知っているので、大体は右に居てくれる。
 大人数で歩くときは、ほとんど十瀬が右に立ち、他の人たちは、後ろだったりだ。
 それでも人が多かったら、あまり話さない人が左に立ち、話すときは誰かに言ってもらったりだった。
 自分の私生活に支障は無いが、他の人にはかなり迷惑かけているということは、きちんと知っていたから、あまり大人数での行動はしないことにしている。
 結構周りの人は、気を使ってくれる。だからこっちは迷惑をかけないようにしている。こう考えると、周りの人というのは、思ったよりいい人ばかりだった。


 ある日俺は、暖かい日の下で空を見上げて寝ていた。
 暖かくて、右から聞こえる川の音。
「十夜・・・どうかしたのか?」
 そして、急に右から聞こえる十瀬の音。すべて十瀬に助けられているような気がする。今だって、なんだか一人で悲しかった。
 あまり一人でいないものだから、一人はきつかった。
 昔は何のこれしき、いつも一人だったのに、十瀬が居てくれたからこそ、俺は今、一人じゃない。すべてが十瀬中心に回っていたのかもしれない。
「ううん。なんとなく川の音が聞きたかったから」
「ほぉ〜なら静かにしぃてよ」
「え!なんか話に来たんちゃうの?」
 いつもの十瀬の話が聞けると、チョット期待していたのに、話してくれないというと思って、十夜は十瀬のほうを見た。
 何かニコニコしていた十瀬。何をたくらんでいるのかわからない。
「そう言ってくれると何か嬉しいな」
「だって十瀬の話面白いんだもん」
「ならいっぱいお話しても良いの?」
「お願いします」
 俺は静かに十瀬のマシンガントークを聞いていた。
 一番面白い時が、十瀬の話だった。たまに同じ話をするが、これまた面白いのだ。ネタが飽きないほどたくさんあるのか、次から次へと楽しませてくれる。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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