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神様の不平等 作者:米沢涼

第4回   兄貴と家族
 色々な事件が起き、そして今がある稔にとっては、邪魔者が出るのが一番嫌だった。
 次の日、学校から帰ってくると、すぐに私服に着替えた。そして、向かった先は緋月のところだった。今日は、違うやつらと会うから、連れとして稔も行くのだ。
 宥や克哉たちも結構騒いでいた。早く会いたいなど。たまに会っているらしく、結構良い奴ららしい。
 どこで会うかというと、やっぱりどこからの裏だったりだ。
 付いていくと、やっぱりやばそうな場所だった。こっちの人数は、たまに来ない人も居るから、ザッと20人前後かな?けれど、緋月に聞くと、30人は軽くいるといわれた。どこから集まってくるのやら。
 ドアを開けると、なんだかワイワイやっているようだけど、人を待っているような人たちが居た。まだお菓子の封は開けていなかった。
「やっほぉ〜!お久し振りっす」
 ここにはいちお先輩や、初めての人や、レベルが上のひとやら、低い人やらが集まっているところだった。
「ひっさシッぶり!」
 いつもよりバカテンションになる克哉。冷静に接する宥等がいた。そして、いつもくらいに堂々としている緋月だった。
「おや?新顔だね」
 そう声をかけられた稔。チョッと内心ビビリ中だが、無理もせず冷静に接した。
「あ・・はじめましてですね」
 と、軽く右に首をかしげる。初めてあった人との癖だった。
「名前は?」
「僕は相沢稔」
「え?相沢?」
 と、皆がこっちを見てきた。緋月たちは知っていることだった。
「相沢って・・もしかして・・・」
「?」
 何がなんだかわかっていない稔だ。
「わりわり遅れてきちゃった」
 と、頭をかきながら入って来たたった一人の男性。そっちにも視線が行った。
「あれ?なんか見覚え・・ある顔・・」
 稔と入って来た男性と息が合った。
「もしかして・・」
 先に解決したのは稔だった。
「もしかして兄ちゃん?」
 と、立ち上がっていってしまった。
「智晴兄ちゃん?」
「もしかして稔か?」
「懐かしいなぁ〜」
 と、その場の空気を忘れて、軽く抱き合っていた。
「どうしてこんなところに居るんだ?」
「え?緋月と・・・」
「お前・・・稔までこんなところに・・・」
「ダメだったのですか?」
 いつもの緋月が、敬語になっていることに驚きだ。
「え?緋月が敬語?」
「何言ってる!智晴様はこの族の一番隊長だぞ!」
「お偉いさんだよ!」
 と、いろんな人から攻められた。
 けれど、兄貴がこういうところに来ているとは、結構意外だった。こういうのには、あまり興味を持たない人だと思っていたから、余計不思議な人と思った。
「まぁ、稔はそういう上下関係は俺らの中ではなしな」
 稔の頭をクシャクシャにしながら、にっこり笑っていった。昔から変わっていなかった。優しいところと、弟の稔には普通の人よりも、接しが良い事も一切変わっていなかった。
 変わっていなかったことに嬉しかったのか、チョッと表情が柔らかくなった。たぶん、今思ってみれば、あえて嬉しかったことにもあったのかもしれない。
「俺らの中では有るんですかぁ〜?タイチョ〜」
「あったぼうよ」
「マジっすか!」
「マジっす」
 なんだかコントをやっているみたく、チョッと面白かったりもする。
 ワイワイガヤガヤ騒いだりなんなりして、おちょくれていた。こういうときには、緋月たちは、あのルールを捨てて、酒を飲むのが習慣らしい。

 気付いてみれば、いつの間にか朝の3時。全然眠くなくて、時計を見たとき自分の心の時計が止まってしまった。
「どうした?稔」
「え?いや・・・チョッともう3時なんだなぁ〜って・・・」
 と、焦って言う。そのせいか、チョッと額に汗だ。
「なにかあるだろ?」
「もしかして稔の家って厳しいのか?隊長」
「どうなんだ?稔」
 時計を手首から外し、テーブルにおいてゆっくり言った。
「この前父に夜遅くまでって・・怒られた。俺気にしないでそのまま寝たけど・・今度何言われるか」
「ならこういうんだ」
 と、智晴が真剣な顔で稔と目線を合わせた。
「何か言われたら、ちょっと夜まで智晴兄さんと話してたって。文句あるならとも張る兄さんのところに言って!って言って不貞寝するんだ」
 稔は、うんと深く頷いた。
「とりあえず今日は帰れ!緋月お前も着いてってやれ」
「ハイ」
 そう返事をして、その場を去っていった。なんだか、兄さんには悪いことをしたような気もする。
 家に帰ると、もう父さんは寝ていた。チョッとそれにホッとして、部屋にまで行ったときだった。
 さっきまで寝ていたはずの父さんが、振り返ったその場所に居たのだ。
「またか。何をしている」
「きょ・・・今日はチョッと兄さんとあって話を・・」
 そういいかけたところで、父さんに平手打ちを喰らった。叩かれた左頬を押さえた。 ヒリヒリして、きっと手形が付いているに決まっている。
「いい加減しなさい!何されるかわかったもんじゃない」
 と、怒鳴られた。耳元で怒鳴られた感じで、もう耳がキィーンとする。
「うるさい・・」
「なんだって?」
「うるさいっていってんだよ!なんでいつもかっつも大人に支配されなきゃ行けないんだよ!自分のことくらい、自分で解決できる!なにかあれば逃げる足だってあるんだそんないっつもかっつもおもちゃみたいに、自分の思ったとおりにいく何で思わないでくれ」
 と、早口で言うと、言い返せないのか汗をかきながら黙っている父を見て、ポケットに全財産を詰め、急いで家を出て行った。
 父が後ろのほうから何かを言っていたが、もう聞こえていなかった。というか、聞き耳持たずだ。

 どこに向かうのかいくあてが見つからなかった。二つだけ行き先は有った。とりあえず、兄貴のところへと足が勝手に動いていた。
 ドアを開けると、まだ宴会は行われていてチョッと安心だった。
「稔!帰ったんじゃないのか!」
「兄さん・・・」
 弱々しい声を出し、智晴のところにゆっくり向かっていった。智晴も都市のところに急ぐ、そして抱きついた稔は離れようとはしなかった。
「どうした?」
「おい稔!お前の左頬・・どうしたんだ?」
 左に居た克哉が驚いた様子でこっちを見ていた。それに反応した智晴は、ゆっくり稔の左頬を見た。すると、赤くなっているのに気付いた。
「どうしたんだ!」
「叩かれた  父さんに」
「なんで!見つかったのか!さっきのことを言わなかったのか?」
「言う前に叩かれた・・」
 そういうと、智晴の右手は拳が握られた。かなりの力だ。
「もうあんなところに行くな!俺のところに来い」
「けど、隊長・・・高校寮生活ですよね?」
 近くにいるやつが、そう突っ込んでみた。すると、握られた拳に力が抜け、がっくりと身体の力が抜けた。
「大丈夫だよ・・」
「じゃあ、僕が預かりましょうか?」
 真剣な目で見てきたのは、緋月だった。
「緋月・・・お前になら安心して預けられる。稔・・どうだ?」
「迷惑じゃないんですか?」
「全然。僕の家気軽な人たちだから。昔単なるへんな人が泊まりたいと家まで来たとき、親にっこり笑顔でオーケーしましたから」
 と、平凡な顔で言った。
「なら稔を頼んでいいですか?」
「はいよろこんで」
 そう何なりと決まった。チョッと不安もあったけれど、緋月の家に行くと、その不安も吹っ切れた。言われたとおり、なんだか気楽な人で、話しやすかった。

 一つ問題があるのにお気づきだろうか。
 それは学校というものだった。授業道具が家に全部ある。持ってきているのは、自分の全財産だけだった。
 とりあえず、一番勝負時が午前中だった。
 緋月とあってから、父の仕事表を見る癖が出てしまった。だからか、いつ父が仕事なのかが知っている。
 明日は丁度午前中と午後からもあり、一番の勝負時だ。家の鍵は、自分で持っているから心配ない。チョッと心配で、きちんとさっき調べたら、財布に入っていてラッキーだ。

 実戦の日
 ちょっとだけどきどきしていた。そのせいか、全然眠れなかった。
朝、メールでチョッと今日学校遅くなるか、行けないかといっておいた。だから、家の前では待たないよう説得もした。
 準備満タン。いちお、緋月も学生で、ルールには、学校は必ず通わなければならない。だから、先に家を出た。
 緋月の母さんは、ずっと家で内職らしい。父は、会社に通っているらしい。いわば、大体が大雑把らしい。
「でわ行って来ます」
「うん。がんばって!」
 そう応援してくれるのは、母さんだけだった。

 自分の本当の家に着くと、鍵を開け、誰も居ないことを察して、けれど外靴は片手に持っていった。何かと、事件などがあると困るので。
 部屋にゆっくり行った。念のため、足音をなるべく鳴らさないようにした。
 カバンに勉強道具をつめ、何でも入るカバンに必要なものをずばずば入れていった。そして、ゆっくり家を出て行った。
 なんもなく楽に成功して、何か物足りなかったが。
 緋月の家に帰ると、玄関に母が待っていた。
「成功しましたか?」
「ハイ。おかげさまで」
 と、にっこりと笑っていった。
「なら、部屋においてきてらっしゃい。そして、学校に行けるのならば、行ってらっしゃい?」
「はい。ありがとうございます」
 深々と礼をいい、設けてくれた部屋においてきた。そして、いつもの指定ジャージに着替え、学校に向かっていった。意外と、学校と緋月の家は、遠くなく、知ったときにはチョッと驚いた。
 それに、いつもの通学路でもあった。

 学校に行き、すぐに職員室に向かった。そして、遅刻しましたと連絡を入れ、教室に向かった。すると、心配そうに稔の机を見ている枡の様子があった。心配してくれるんだなぁ〜とチョッと嬉しかったりもする。
「枡。おはよう」
「稔!よかったぁ〜」
「しんぱいしてくれたのか?」
「あったりまえじゃんか」
 と、軽く頭を叩かれた。すると、何かに気付いたような顔をした。
 授業に入る。もう少しで昼だ。

 昼休み。ふと思い出したことがあった。
「あ・・・弁当忘れた」
「なに?ほんと?やったね!」
 と、なにやら嬉しそうだった。
「何で嬉しそうなの?」
「余分に作ってみました〜」
 2つお弁当を出した。なにやら、どこかの彼女みたいなことをする奴だなぁ〜と、何かのんびり考えていた。
 屋上に二人でお弁当を食べていた。
「あ。枡これ作ったの?」
「うん手料理です」
 自身ありげに言った。
「おいしいよ」
「本当?やったぁ〜!ねぇ、これからも作って良い?」
「うん。それは嬉しいけど、結構朝早くない?」
「全然!平気だよ」
 等と話していると、いつの間にか昼になっていた。
 一日というものは、過ぎるのが早い。
 帰りはチョッと道を変えていった。じゃないと、マスト愛想で怖かったのだ。今日からチョッと用事あるからといって、帰りと朝はバラバラにした。
 いつまで続くのかはわからないが、とりあえず、整うまではこうしておこうかと思った。
 それに、母のほうに戻ろうかとも考えている。

 それから何日も、夜は緋月と向こうにいて、それからは緋月の家に。ずっと緋月と一緒だった。
 もうそろそろ決着をつけようと、土曜日に母の元へと訪れた。
 家に着くと、呼び鈴を鳴らす。すると、ドアが開き、ゆっくりと誰かがひょっこり顔を出した。
 背が小さく、なんだか、まだ小学生くらいの男の子が出した。
「おにいちゃん!」
 智也だった。懐かしくて、しかもチョッとしっかりしている顔立ちだ。計算があっていれば、今は小学校の四年生だ。
 その智也は、パァッと顔を明るくし、ドアから全部出して稔に抱きついた。
「入って入って」
 と、稔を引張っていく。
 何年ぶりだろうか。小学二年くらいに、遊びに来た記憶があるが、それ以降は家がゴタゴタしてきていなかった。感じはすごく変わっており、チョッと気分がどこかへ飛んでいる。
「なぁ智也」
「なにぃ〜?」
「母さんいないか?」
「母さんなら今仕事。もうそろそろ・・・」
 何かを言おうとしていたら、玄関の戸が開いた。
「ただいまぁ〜」
「ほらっ」
 といって、智也は玄関に向かった。
「母さん母さん!稔兄ちゃんが来たよぉ!」
 玄関のほうから、母さんを引っ張り出す。
「と・・稔・・・かい?」
「かあさん・・・久し振り何年ぶりだろうね」
「まぁ・・・こんなに大きくなってちゃんと食べてるかい?」
「うん大丈夫だよ。けど、一つ相談あるんだ・・」
「なに?」
 心配そうな目で、稔の顔を覗きこんだ。
「あのさ・・俺・・・

「稔君大丈夫かしら?」
「大丈夫だって」
 心配そうな顔で外を覗き込んでいるのは、緋月の母さんであった。近くのソファーに座って、のんびりしたように新聞を読んでいるのは、緋月だ。ペラペラと、安心してるように新聞をめくるが、内心ハラハラドキドキで、新聞なんて目に入っていなかった。
 このことを知っているのは、緋月の家族だけだった。これ以上迷惑はかけられないということで、とりあえず母のところに向かった稔を不安そうに心肺する、緋月と母。
 母は最初、「そんな気を使わなくていいんだよ」と、説得はしたものの、説得しぱいに終わり、稔は勝負に行ったのだ。行く前に「無理だったら、戻っておいで」と伝えておいた。笑顔でこちらを向いて、頷かれてそれにはチョッとホッとしているが、まだ不安が溶けない。
「そんなに心配しなくてもいいんじゃない?」
 ちょっとクールに決めてみようと、緋月が母に言った。すると、「そっちのほうが心配してるんじゃない?」とズバッといわれて、チョッと顔が赤くなる緋月。

「あ。そんなの・・全然良いに決まってるじゃない」
 と、母は喜んで言った。稔の頭をくしゃくしゃにして、喜んでいた。満面の笑顔だった。それを見て、稔はチョッとホッとしていた。
「元々あの人には、子育ては向かないと思っていたのよ」
 本当に嬉しそうで、なんだか良い事をしたような気分になった。
 確かに父には、子育てが難しそうだ。けれど、稔的には母のほうが難しいような気もしてきていた。
「いつ頃からなら良い?」
「今日でいいわけど、チョッと待ってて。部屋を準備するわ!ほら智也!手伝って大変よぉ〜」
 母は腕をまくり、かなり気合が入った感じだ。智也は「がんばるぞぉ〜!」とかなり張り切っていた。

 とりあえず、色々支度をしに家に一旦帰らなければならない。その寄り道として、緋月の家によって、報告をしようとした。
「あ。緋月」
 玄関のところに母と一緒に待っていたのだ。
「どうだったの?」
 かなり心配している母が稔にアセアセと聞いてきた。
「大丈夫だって言い寄っていってくれました。今までありがとうございました」
 深々と頭を下げ、丁寧に礼を言う。本当にここには良くしてくれたのだ。
「頭を上げて。これは壮大にパーティと生きたいけど、それはまた今度ね私宅があるんでしょ?」
「ハイ」
「俺手伝ってくるよ」
 緋月が立ち上がった。そして、色々とお礼を言った後、稔は家に帰っていった。
 今日は丁度父は出勤でいないと、きちんと調べはついている。だから、それまでに必要なものだけを、カバンに詰めていた。
 緋月は手伝ってくれて、結構かかりそうだった仕事が、簡単に終わってしまった。
「ありがとう緋月」
「いや・・いいよ。その代り・・」
「そのかわり?」
「今度パーティーするから、その時は絶対にこいよ!」
「うん!」
 約束もしたところで、稔は玄関に向かっていった。すると、開く筈のないドアがゆっくり開いたのだ。
「稔!帰ってきていたのか!」
 父さんだった。かなり嬉しそうにこっちに近づいてきて、肩をゆさゆさと揺らした。
「良かった心配してたんだぞ!」
 久しぶりに見る父さんは、前よりやせ細っていて、ただでさえ細かった顔が、余計たるんでいるように見える。
「なんだ?その荷物・・・」
「俺・・もうここにはすまない。母さんのところに行くよ」
 そう言って、つかまれていた肩の手を振り払い、外に行った。それを追うようにして、緋月は付いていった。
 これでよかったのだと、かすかに拳を握った。緋月からは何も言わなかった。きっと、こっちの気を使ってくれているのだ。
 もう、あのやせ細った顔は、二度と見たくない。
 もう、あの家にはかえらない。
 二つの約束を作ってみた。
 そして、母さんのほうの家に着くと、中に入っていった。緋月は、荷物を半分持ってくれている。
「ようこそ!」
 と、迎えてくれた母と智也。それになんだか嬉しかったが、何か悲しい感じもあった。
「お兄ちゃん!荷物持つよ」
 智也は緋月のほうに行き、荷物を貰うと両手を上げていた。
「あ・・ハイ」 
 ゆっくり緋月は渡した。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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