ふと流した涙。その涙には深い意味が込みすぎて、もうなんだかわからない状態になってしまっているが、本人稔にはわかっている。
あれから家に帰り、ベッドにねっころがり目を隠すように手を目にやった。こんなにも、何かに悲しんだことはなかったのに。 「チクショウ」 やはり何か悔しさがあるのだ。 なにやら頭がむかむかしており、近くの壁をねっころガッたまま殴った。 ダンッ かなりにごった音がした。手はあまり痛みは感じなかったのだが、何かの違和感がさっぱりしない。
数時間後・・・なんだかシィンとした空気。ずっとそれが続く。 ピンポーン・・ 何かの支えで来たのか、誰かが来たらしく、仕方なく出た。すると、枡だった。なんだか、数日間会ってないように、なんだか本当に懐かしく感じる。なぜなのだろうか。 「やっほ!」 「枡・・なんでこんな時間に?」 「なぁそのことなんだけど、悪いけどチョッと今日止まらしてくれない?」 なんだか焦っている様子だ。 「いいよ。どうしたの?」 「深い理由は中ではなそ?」 「うん」 かなり疑問に思ったが、とりあえず中に入れた。 「親とのケンカ・・そんなんで家で少年か」 アハハハハァとそっぽを軽く見る。確かに、稔には家族ケンカ親子喧嘩は、夢の中のまたの夢・髪の平等に、きつさが出てきた。というか、これは平等ではないだろう。 こんなにも親からの文句やらケンカやら、そんなの家族としていいもんではないか。ここ数十年ケンカというケンカをしたことがない稔は、一回でいいから親子喧嘩をしてみたい。 「そんなんってなにさ!結構きついんだよ」 と、ウソ泣きをしていた。ハイハイと軽く流しながらも、お茶を用意する。 「サンキュ」 「いいえ」 「けど、思ったより話しやすいよなお前って」 「なんで?」 「なんとなく!でさ!俺の親って、何でもかんでもダメと言ういちゃもんつけるんだぜ?もういやになる!」 「そうですか」 「お前のところはどうなの?」 「え?どうって・・・」 「そういう風に生活面とか」 「別に・・・なんもいわれないな。ってか、親なんて居ても居なくても金さえあれば変わんないし」 「え?何だよその言い方。かなり深いことありそう・・・」 「あ・・まぁいいか。枡お前にしか言わないけど、俺父だけなんだ。けど、その父さん だって、一週間に一回顔を合わせるかあわせないか。兄弟もいたんだけど、離婚したときに消え去っていった」 「まじ?なんかいけない話だったかな?」 「いんやぁ〜?そういう話してくれっと嬉しいよ」 と、にっこり笑っていった。なんだか、本当に心のどこかでは、ホッとして安心してるのか、なんだかのほほんとできた。
その夜。やはり親は帰ってこない。だからか、かなりすんなりと家に泊めれた。 部屋で、枕を抱きしめている枡。それをまねして稔も枕を抱きしめる。 「あ!まねしたな!」 「うん」 「このやろう!可愛いぞこのやろう」 といって枡は抱きしめていた枕を、稔に投げつけた。その枕が、稔の顔面直撃。その枕が、ぽろっと落ちると、稔も狙いを決めて枡に投げつけた。 「アタッ・・・なにをぉ!」 と、また戦いの夜だった。
次の日。昨日の格闘が疲れたのか、ぐっすり昼まで寝ていた。丁度休みだから、いいところだろう。 結局目を覚ましたのは、昼の0時ちょっきしくらい。 稔はおきたが、枡はまだ爆睡中だった。軽く着替えて、枡の寝顔を、のんびり見ていた。 近くにあったペンライトを、目の前に思いっきり照らしてやった。なんだか、プチいじめ? 「ん・・・」 なんだかおこしちゃった気がして、なにやらうきうき気分になった。すると、本当におきてしまった。 目を開けた先には、かなりの光り。 「ウワッ」 爆睡中の枡は、寝起きという表情を出さずに、かなり驚いていた。 「なんとなく、爆睡してたから起こしてやろうと思って・・」 「いじめか!」 といいながら、稔の頭をコツンと叩いた。 「アイタ」 叩かれたところを、押さえる。 すると、枡は稔の髪の毛をクシャクシャにした。 「うわぁ〜」 やられると思わなくて、クシャクシャになりかけている髪を、治す。 「面白いなお前っていじめがいがある」 「なくていいよ」 「まぁそういわず。」 「朝ご飯食べるか・・」 「うん♪」 二人は階段を下り、リビングへといった。 「おいし〜!こんなにおいしいの久し振りに食べた」 「大袈裟ぁ」 「イヤ本当に」 と、嬉しそうに言った。そう言ってくれる人なんて居ないから、結構嬉しいことばだった。
それから何時間か家でいじめられるはめになった稔だが、なんだか今日くらいは、こんなに騒ぐのもいいものかとも思う。こんなに遊んでくれるのは、枡ぐらいだ。 けれど、まだ枡の事を許したわけではない。まだ何かを疑っているし、どこかで何か情報を入れようとしているのだろうかと、深々と考えてしまう。 考える癖は、稔の悪い癖だった。なぜだか、いつか忘れてしまうこともあるのだろうか。 神は、すべての人間に平等で、すべての人間に、自由を与えるものだ。なんだか、今の稔は自由なんだか、平等扱いなのかがわからない。 ただ、離婚したというようなことを話したから、優しくされているからなのか。ただ単に優しくしたいや、仲良くしたいと思っている枡なのかも、かなりの疑いの目で見ている。 本当はいけない。本当は楽しくやりたい。そんなこと、友達関係の癖がなっていない稔は、どうすればいいのかわからない。人並み以上に人なれしていないのだ。 こんなんでは先が思いやられる。 「じゃあね。昨日今日はありがと。」 と、玄関先での話。今日でもうバイバイだ。 「うん。楽しかった。こっちからもありがと」 「楽しかったか。それは光栄だ。また遊びに着ていいか?」 「うん。全然いいよ」 また来るらしい。なんだか一日抱けども、かなりの緊張というものを使った。いつもなら緊張しないで居られるのに、枡には気を散らされすぎだ。 部屋にもどり、いろいろと片づけをする。あの明るいところに居ると、一人の空気がなんだかどうすればいいのか、さっぱりわからなかった。
次の日。日曜日で何をするにもなかった。急に仲良くなった枡は、あれでも忙しそうだ。他にも友達がいるだろうに。 てきとうに店の近くを歩き回っていった。なんだか、路地裏とかをちらりと見ると、よくいる悪いやつらだ。本当に居るんだなぁとおもいながら、その場を離れるとき。なにかいやな気がした。 深く考えない。 そのことばを繰り返し自分に言いつけた。 言いつけていると、いつの間にか人気(ひとけ)の少ない場所に居た。さっきのいやな勘が余計に深まっていった。 「おいお前」 急に後ろから声をかけられた。稔は、ゆっくり後ろに振り返った。すると、特に悪そうな人じゃなかった。チョッと安心。 「チョッとこいや」 前言撤回。チョッと不安。 なんだか、恐る恐る着いていくと、なにやらタバコを吸っている人や、チョコをバクバク食っている人。それに、ライターを何本も持っている人や、かなり危なさそうな人までかなり集まっていた。 「緋月(ひづき)そいつ相方?」 「あぁ。こいつが俺の相方」 「俺らももうそろそろ相方探さないとな」 「相方って何?」 もう、さっきまでの緊張がドッとおかしくなった気がした。というか、もうすでにやけと言う言葉も当たっている。 「相方って言うのは、俺らの中での話しだよ。俺ら見たいのには会い方というものが居たほうが色々面倒がなんだよ」 軽く説明されたが、その後たまり場といわれる場所に行くと、もっと深く説明してくれた。 簡単に言えばこうだった。 相方は、とりあえずこういうところにはあまりで歩きせず、外に出るときだけ付いて歩く。そして何をするかといえば、外からの情報をいち早く教えるのだ。携帯で連絡を取り、外の状態を教える。そして、見つからずに出て、自然に群れに紛れ込むというのだ。 まぁ、人によっては勉強を教えたりとかもするらしいが。 結局緋月の相方になった稔。別に嫌という感情は持たなかったが、なんだかなぁ〜と微妙な気分になっていた。 軽く話した後、稔は家に帰っていった。 家に着いたときは、まだ昼の3時だった。思ったより時間がたっていたことにも気付かずに、ベッドにねっころがっていた。 そして、携帯を手にしてみた。開いて緋月のメルアドを見てみた。よく考えてみると、緋月は顔も良いし、性格も案外優しかった。これで彼女が居ないなんていったら、大驚きだ。 緋月は、高校一年生。稔の三つ上の十六歳だ。ついでに、稔は中学一年のまだ十二歳だ。 「緋月か・・・」 いつ連絡が来るかわからない。連絡が来たら、指定された場所の外に行き、状況を説明しなければならない。特に行動期間は夜だそうだ。朝や昼は無いと考えて良いらしい。 結局そのままベッドの上で寝てしまった。疲れてるわけではないのに、すぐに寝るのが稔の癖。 ♪♪♪♪ 何かの音に気付いて稔は目を覚ました。薄っすら目を開けたところで、ハッと思い、急いでメルをみた。 「○○の店の手前 緋月」 緋月からの連絡だ。急いで帽子をかぶって、外に出た。そして、言われたところに向かった。周りを見ると、ゾロゾロ人が歩いていた。こういう仕事らしいものは結構好きだ。 いいタイミングを見計らって、緋月にメルした。何回も説明されたので、理解は出来た。理解力はきっと人一倍はあると思う。 「よしいいか?」 「うん」 いつの間にか出てきていた緋月たち。人の中に紛れ込むと、もう見えなくなってきてしまった。 「バカ早く来い」 そういわれると、すぐに腕をつかまれた。 「ふえ?」 「お前も来るの」 といわれ、稔はチョッと嬉しかった。 「ニヤニヤすんな」 コツント頭を叩かれた。 「あいた」 結局こいつらと一緒にいることになった。けど、結構面白いもので、ゲーセンでカーレース的なものをやったり、おしゃれの店などに行って、いいアクセサリーがないかを探していた。 そして最後は、食品売り場に。主婦的なことでもやるのかな?と思っていると、かごを持ち出し、おやつの場所まで行った。そして、かごいっぱいになるまで入れていた。 「そ・・・そんなに・・・」 「これがまた半日にで無くなるんだわ」 と、苦笑いしながら言っていた。こんな悪な奴らだけど、きちんとお金は払っていくという、良心くらいはあるしい。 「よッしゃいっぱい買い物したな」 稔の頭をクシャクシャにされた。なんだか、あんなたまり場よりも、友達の家に今から泊まりに行きます。というようなようすなテンションだ。けれど、あのたまり場を行くのをとめたりはしない。きっと、何かの理由があるのだから。 そうやってちょっとした笑顔を出した稔。きっといつもだったら、こんなに面白いことはないだろう。それを影で見ていたものがいた。 「あれ?・・・あれもしかして・・・稔?」
あれからは、チョッとたまり場に一緒に遊ばしてもらった。というか、強制だったのだが。その後帰り道、いい道はないかと、色々と散歩状態だった。
良い道が見つからないまま家に帰ってしまった。意外と道探検も、面白いものだと今日知った。家にいたほうが安全で、楽だと考えていた稔が嘘みたいだ。 といっても、帰ってきた時間は朝の三時。ほとんど一日中振り回されてばかりだったが、いちお楽しい一日だった。 結局、四時間くらいしか寝ていない。朝と起きたのは七時だ。目覚ましを入れていないと、一日中寝れそうな勢いだったから、何個もの目覚ましを付けておいて助かった。 眠いと目をこすりながらベッドを降りて、服を着替えいろいろ準備して、カバンを持った。今日は午前授業だから、学校が早く終わる。 むなしいたった一人ではないが、家を出ると、なんだか大賑わいなきがして家から出るのが、ちょっぴりこわくなってきていた。 だが、学校に行かなくてはと思うと、結局は出なければならない運命というものなんだと、稔はなんとなくな気持を捨て、ドアを開けて学校にむかう。するとそこには、いつも通り枡が待っていた。 「おはよう」 「おはよう・・・」 チョッと驚いたけれど、これがいつもだと思えば、何のこれしき。 緋月とあってからなんだか稔の気持が、不思議な方向に動いているような気がする。緋月にはチョッとペースを崩されてる気がする。
学校。ホームルームが何なりとすんなりと進んでいった。ちょっと緋月とメルしたい気もするが、迷惑かどうかが不安だ。 ♪♪♪♪ そんなことを考えていると、緋月からメルが来た。この時間は呼び出しは喰らわないので、ちょっとだけ安心しているが。机の中で携帯を開き、こそっとみる。 「今授業中か?どうだ勉強のほうはわからないときは俺に聞けよ(^^)vって言ってる俺も結局わからないかもしれないがな(-_-;)」 というメルだ。今何をしているかが、かなり気になるのだが。こっちからも返信してやる。 「今授業中。けどちょっと暇だし(^_^) わかんないところ聞いても良いの?なら今度会ったときにでもいっぱい教えてもらうかな?で、今何してるの?学校?」 送ってみた。携帯はあまり使わないので、遅いと思うのが普通だが、悪戯で携帯はよくいじっているので、別に遅いわけではない。 と思っているうちに、すぐにメルが来た。 「俺も学校だよ。いちお学校くらいは行くし(-_-;) 俺学校では良い子にしてるから(^^)v悪い子じゃないもん♪けど、たまに失敗するけどね(^_^;) 今は授業中さ授業中にメルするからの割るだべさ(^_-)-☆」 へぇ〜意外 とチョッとしたことがわかると、嬉しくなってきた。 元々、稔のイメージだったら、学校にも行かないで、たまり場に集まり、へんなやつをつっかえまわしては、金を頂くというものだという勝手な想像だった。 それを帰った後、いつもの緋月達が居るたまり場に行って言ってみた。すると、居た人たち全員に、ゲラゲラと笑われた。 「やっぱり笑っちゃうの?」 「そりゃあそうだよ。まぁ、ある場所にはそうだと思うけどな」 と、緋月は腹を抱えながら答えた。 「え?やっぱりそうなやつらも居るの?」 「あぁたいていはそうだろう。けど、俺たちは違うんだ。」 メガネをかけて、普通にしていれば頭もよさそうで、カッコイイ男の人、たしか宥(ヒロ)が言った。すると、その隣にいるバカ騒ぎの男の人、克哉(かつや)が言った。 「違うってどう違うの?」 不思議そうに聞くと、緋月が細かく説明してくれた。 「それはな、ここのたまり場にはルールっつうもんがあるんよ。でそのルールが・・・」 とこまごまと説明してくれた。簡単に言えばこうだ。 一、学校には必ず行きましょう 二、二十歳未満は酒はやめましょう 三、タバコは十八を過ぎてから 四、親父を引っ掛けるのはやめましょう。簡単に言えば親父狩り禁止。 五、上下関係無しに騒ぎましょう 六、金の奪い合いはダメです。 七、お菓子は大事に食べましょう と、こんなもんだった。もっとあるのだが、基本の中の基本はこうだったのだ。 なんだか、これから何が起きるのか、わくわくだった。
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