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帰る居場所と友 作者:米沢涼

最終回   なぞのビン
 不思議に思いながらも、勇は学校に行く。家にいたときは、ずっと舅と健人が勇を守るように、ずっとくっついて歩いてくる。
 登校中だって、猫として交互というように、くっついてきた。何かから勇を守るように。勇は何かと不思議な気持を持って、学校に向かう。
 授業中は、グランドの近くに舅と健人が一緒にいるのを見た。窓側ということで、グランドを見るには最適な場所でもあった。
 昼休み。屋上に上って、舅(シュウト)と健人を探した。なかなか見つからなくて、諦めたが。ご飯を食べているとき、ちゃっかり人間姿で現れた。
「どうやってきたんだ?」
 ちょっとした不思議に答えてくれるような素振りはしてくれない。なんだか、逆にホッとしているようだった。
「どうしたんだよ。朝から変だぞお前ら二人とも」
 ムッとし始める勇。それになんだかソワソワし始める舅たち。答えようか答えないかを考えるようだった。
「それは・・」
 やっぱり何かを焦らしているようだった。
「いいよ別に。話さなくて」
 なんだか舅と健人にむかついて、勇は弁当を片付け、急いで教室に戻った。すると、俊二がいた。
「どうしたんだよ・・なんか。今にでもケンカしてきましたみたいなふくれっ面」
「べつにぃ〜」
 といって、すぐに席に着く。なんだか、本当にけんかしたあとのような、きげんの悪さが襲ってきた。
 放課後。教室に残る勇。いつもなら即行帰っているのだが、何か気になって頭を動かしていた。

 部活が終わる時間。たぶんこの時間には、外に出ないといけないのに。なかなか足を動かす気にはなれなかった。
「勇」
 またふと聞こえた。後ろを急いで振り向いたが、誰もいない。椅子から立ち上がると、急だったからか、椅子がガタンと倒れた。
 いろんなところを見ても、誰もいない。それに、また声がすると思ったが、一切声がしない。
「なんなんだよ」
 ため息をつきながら、椅子を戻した。すると、椅子の足もとに何か落ちていた。それをゆっくり拾ってみた。
 それは、なんだかネックレスのようなものだった。チェーンがかなり薄く、その下にぶら下がっているものは、キラキラ光、猫型の銀だった。
 ゴクリと息をのんだ。なぜだかわからないが、かなりの鳥肌が勇を襲う。
 ネックレスを、強く握り、ポケットに突っ込んだ。そして、勢い欲たち、カバンを持って教室を出た。
 そのままいつもの海に向かっていった。そこでネックレスを出してみた。海を背景にしてみると、本当にキラキラして見える。
 猫といえば、舅。特にそのネックレスは、舅に似ていた。
 ふと海方に目をやってみると、何かが流れていた。
 ――なんなんだ今日は・・
 何かとつながられているように、いろいろなことが起こりすぎていて、なんだか疲れてきている勇は、流れてきているものを、手にとって見てみた。
 なんだか、透明なビンだった。その中に、何か手紙が書いてあった。それを取り出そうと、ふたを開けようとしていた。けれど、ドンだけ力を入れても開かない。そのビンは、持ち運び便利な小さいビンだ。
 あきらめて勇は、ビンをポケットにしまった。
 そのままカバンを持って、ゆっくり家に帰った。

 机に向かって、ずっとビンと睨みっこだった。今日はなぜか舅も健人も来なかった。だからか、こんなにのんびり出来るのは。けれど、いつもより暇している。いつもなら、舅が相手してくれているが、その舅がいなかった。
 ガチャ・・
 玄関の戸が開く音がした。この空け方は、親だ。勇の両親が帰ってきたのだ。何かいやな気もするが。
「勇・・勇!」
 ダンダンダンダン・・・
 階段を力強く歩いてくる父親が、勇の名前を読んでいる。それに気付いて、勇は急いで部屋を出た。
「なに?」
「いや・・いるならいいんだが・・」
 かなりの額に汗。焦っているのだろうか。勇は心配になって聞いて見た。
「どうしたん?」
「いや・・ちょっといま、外に知らない奴が居たから勇は居るかなって」
「外に?」
 急いで部屋の窓を開け、下を探してみた。けれど、遅かったのか、誰も居なかったし、居るような気配がしなかった。
「誰もいなかった・・」
「そうか・・気をつけろよ」
 それだけいって、気が抜けたように階段をテクテク降りていった。また机に向かって、ビンと向き合っていた。
 いつの間にか暗くなっていることに気付き、着替えてその日はねた。なんだか疲れたような、疲れていないようなで、微妙な気分というのも、自分的にどうかと思う勇。
 次の日の朝も、なんだか起きる気がしなく、ずっとベッドにいた。ふと目を開けると、すぐそこには昨日のビンが置いてあった。
 なんで?とおもい、体を起こしてみると、丁度勇が横になって寝ていたからだった。チョッとどきどきしている気持を抑え、ベッドから降りて着替えた。
 なんとなく、行きたくないと、不登校児になってしまっていたが、いやいやと学校に向かった。
 学校に来て思ったのが、家に誰もいないんだから、サボっても良かったな。だった。本当にサボりたかったらしい。
 あれから舅や健人に会っていないから、余計家にいるのが暇で、しかもなんだかムカムカした感じになる。たぶん、寂しいという感情もあるのだろうか。
 授業も、ほとんど聞いていなかったし、いつの間にかテストをしていた。手は動くのだが、頭が働かない。この前もあったような気がする。こんな気持。
 こういうときこそ、舅や健人がほしい。なのに、こんなときに限って、ヒョンとでてこなくなってきたりとかもする。
 前々から舅と健人は不思議だ。
 猫が人間になったり、人間だと思ってたら猫だったり。しかも、健人なんて、いつの間にか家にいて、いつの間にか姿を消している。そんな俊足・・猫くらいしか出来ないだろうと、今更思ってきた。
「ねぇ」
 ふと、誰かが勇に声をかけてきた。ふと、曲がっていた背中をピンと伸ばし、後ろを振り向いた。誰もいるはずのない、後ろを見てみるが、誰もいない。大分前にもこんなことがあった。
 もしかして・・・
 思ってしまって良いのかと思ったが、思ってしまうことに対して、仕方がないと思ったが、さすがに、この前焦らしていた舅と健人のことを思い出した。
 なんだか、俺は舅と関わってきてから、身の回りが不思議になるだらけだ。
 放課後。のんびり教室から野球部を見ていた。視線は野球部だが、頭はどこか違うところにぶっ飛んでいた。
 なんだか、こうしていたら、昨日の事を思い出してきた。昨日のペンダントをポケットから取り出し、首に付けてみた。
 すると、その猫型のペンダントが、急に光出したのだ。
 さすがの勇でも驚いて、立ち上がった。けれど、教室全体が黄色い光で満たされていくと思ったら、ドンドン光が戻っていった。けれど、なにかの変化に気付いた。
 なんだか、机が大きく見えた。急いで立とうとしたら、すぐに後ろに倒れてしまった。何でかと思い、手を目の前に出してみると、勇は石になった。
 ボーッと放心状態プラスに意味不明という感じで、勇の時計は止まってしまった。

 なんとか、状況を飲み込めた勇は、走った。カバンをくわえて四本足で走った。なんとなく、行動が出来るようになってきており、何とか校門を離れることが出来た。
 カバンをくわえながら、いつもの海についた。起きてしまったことを、特に変えようとはしないが、どうやったら戻るのだろうかという、不思議と焦りが見えてきそうだ。
 何が起きたのかというと、なんだか手を見ると、猫という感覚だった。それでなんとなくわかった。自分が猫になてしまったんだということは。
 けれど、猫も良いもんだと思うときもある。
「こっちに来て」
 ふと聞こえたことば。そちらを振り向くと、白い猫がこちらだけを見ていた。近づいてみると、ゆっくり歩き出した。それに付いていった。いろいろな獣道を通り、たどり着いたのは、人間こなさそうな場所だった。
 けれど、なんだか広々していて、ゆったり出来そうだった。座ろうとしたとき、後ろから大きな声がした。
「勇!早くその場から逃げるんだ!来るんだ!」
 振り向いた先には、舅と健人の猫状態がいた。やっと会えたと、ついつい走っていってしまった。抱きつくようにすると、なんだかホッとしていた。健人にずっとくっついてから、なんだか背中にくっついていて、そのまま健人が走っていった。
 先ほどまでいた海に戻ってくると、全てにおいて力をなくし、バタリと勇は倒れた。 すると、勇の体は、瞬時にでかくなり、人間に戻った。
 勇が気付いたのは、自分の部屋だった。そこには、人間の舅が心配そうな目で見ていて、健人が何かに困っているような顔で椅子に座っていた。目を開けると、舅は良かったと安心して、健人を呼んだ。
 ゆっくり体を起こすと、健人が心配そうな顔で見ていた。
「大丈夫か?勇。悪かったな暫く顔出さなくて」
「いや、良いんだ。それに、この前は言いすぎてごめん」
「お前は悪くない」
「そうだ!何で俺猫になったわけ?」
 勇は、ハッと健人の服をつかんで、必死に聞いた。
「このペンダントのせいだといっても良いかも知れんな」
「あ。そうだペンダント」
 ふと探したが、身の回りにはないそうだ。
「ここ」
 と、首のちょっとしたの方を見た。すると、埋め込む感じになってあった。
 こんなの漫画の世界にしかないはずだが、こんなことが本当にあると・・とかんがえていた勇は、もう現実逃避してるってことだけ。という考えになった。何事にも、てきとうさがある勇は、そこが長所なのかもしれないな。

 それから数年後。舅はもう、大人になり、健人ももう結構な大人だった。もう、猫になるコツなどもわかり、舅と健人のことも少々わかった感じだった。
 けれど、わからなかったことが、一つある。親のことだ。自分のことは成功したのだが、親のケンカはどうなったかと言うと、その数年で、回数は減っていった。
 結局の原因は、勇の周りにあったらしい。なんだかんだ言っておいて、両親は、一番に勇のことを考えすぎていたのだった。
 なんだか、ケンカというものがなんなのかがわからなくなってきていた。
 勇も、だんだんネコというものを理解できていたような気がする。たぶん、舅を捕まえていなかったら、自分の帰る場所が見つかっていなかったのかもしれない。それに、友達だって、あれから何人も出来た。
 人との接し方も、健人に習い、結構な勉強になった。
 なんだか、不思議な世界を行き来するものが友達になるというのは、本人だからどうなのかはわからないが、気持悪いと思うのだろうか?けれど、勇はこのことを教えず、全てにおいて今までどうりに生きていこうと決めたのだった。
 たった一つ変わらなかったものは、なぞのビンたった一つだった。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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