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帰る居場所と友 作者:米沢涼

第2回   守護者
 ピンポーン・・
 あれから何回もなる呼び鈴。頑張って頑張ってきたところは、部屋を出て少し歩いたところにある、怪談の頂上。そこから先は動かなかった。
 舅が、何か訴えるように、階段を走って降りていった。
「あ。こら舅。」
 つられて勇まで降りて行ってしまった。
「ったく。」
 気付いてみれば玄関の前だった。
 つばを飲み込み。ゆっくり玄関を開けた。すると、なにか見覚えがあった。
 クラスのやつらだった。それを見たとたん、勇は足をガクッとまげ、気が抜けた。
「どうした?霧島」
 それを支えるクラスのやつら。
「いやっ・・なんでもない。どうしたの?」
 体勢を整えて、勇は皆に聞いた。皆といっても二・三人だ。
「ここら辺だなぁって思ってチョッとよってみただけなんだ。」
「そうなんだ。」
「なぁ、今から軽く外歩かない?」
「店とかよっていこうよ。」
「あ・・うん。」
 財布をポケットに詰め、外に出て行った。舅は玄関にほったらかしだが、どうにかなるだろうで住んでいる。

 いつの間にか暗くなっていた。こんなに他人と話したりなんて、何年かぶりだからか、ワイワイしていた。まぁ、付いていっただけだったのだが。
 かなり遅くなって走り、家に帰った。
「今何時だと思ってるの!」
 一番先に出た言葉がそうだった。母からだった。母たちは、特にあの日のことを根に持っている。だからか、夜中に出歩いたりなんかは、絶対させない人たちなのを、皆といるときは、すっかり忘れていた。
「すみません。」
 リビングで出てくる、大きな声に負ける小さな声。
 勇が悲しい目で親を見る。
「気をつけろ」
「ハイ。」
 やっぱり根に持っている
 こういうことがあると、すぐにわかるのだ。
 トボトボ二階に上がると、部屋の前に舅がちゃっかり座っていた。
「舅・・・ヨイショっ」
 舅を持ち上げ、部屋に入っていった。すると、窓が開いており、ベッドの上に誰かが座っていた。
「誰・・・」
 驚く前に、誰?と聞きたかった。勇。チョッと常識人じゃない勇である。
「驚かないのか」
 勇は首を縦に振った。舅を放さなかったのは、自分でもどうしてかはわからなかった。
 そこにいた人は、男の人だった。エリが長い。というか、なんと言うか口が隠れるくらい。よくセーターにあるような服だ。けど、チャックの服を着ていた。黒い服で、自分を隠すかというような人。
 背は結構高いほうだと思う。男っぽくて結構カッコイイ。
「誰なの?」
「俺?俺は健人(ケント)」
「そうなんだ。で?何で健人はここにいるの?」
 急に健人はクックックと笑い出した。
「なに?」
「い・・イヤッ。本当に冷静だなぁって思って。俺たち友達にならない?」
「いいけど。たまに来れるの?」
「うん。」
「そう。」
「いいのかよ。」
 勇は、軽くにっこり笑ってやった。
「お前。やっぱり友達いないのか?」
「いる。舅が・・」
 そう言って、修斗の頭をなでてあげた。

 次の日。目を覚ませば、そこには健人がいた。ベッドの中に健人だ。
「ベッドの中に入るなよ。」
 そういいながらも、ゆっくり体を起こした。
「何で驚かないの?」
「いちいち驚いてられっかよ。それよりお前いくつ?」
「十八」
「ふぅ〜ん」
 話しながらも、制服に着替えた。舅が勇の足にくっついてくる。その舅を持ち上げ、部屋を出ようとした勇。けれど、一回立ち止まり、ふと健人の方を振り向いた。そしてこう聞いた。
「お前どうするの?」
「俺?ここで帰ってくるの待ってる。それか、そこらへん歩いてる。そこらへん歩いてるときは、きちんと鍵閉めとくから安心して」
 と、手をヒラヒラ振っていた。
「なぁ、俺の部屋から出るなよ俺いないときは。」
 それだけ言って部屋の戸を閉めて階段を下りていった。
「じゃあね舅」
 猫とお別れ。学校に向かう勇。学校には友達がいない。だから一人でいる。何か、周りからはへんな人見られるかもしれない。けれど、最近になって、勇に話をかけてくるやつが多かった。
 それに関しては悪いことではない。逆に、うれしいのかもしれない。
「おはよう」
 登校中、後ろからポンッと背中を叩いてきた人がいた。振り向いてみると、同じクラスの人だった。にっこり言ってくれたので、勇もかすかに笑うように、「おはよう」と一言言った。
「えっと・・霧島だよな?」
「勇で良いよ」
「そうか。なら勇、学校にもうなれた?部活とかって入ってるの?」
「いや。学校にはなれたけど、部活は入ってないよ。紺野君は?部活とか・・」
「俺のことは俊二で良いよ。部活は野球に入ったよん」
 元気のいい俊二君?確かに、こういう性格の人は、たいてい野球とか運動系に入りそうだ。
 結局俊二と一緒に登校した。
 教室ではいろんな人が挨拶をしてくれて、なんだか機嫌がよかった。
 昼休み。
「勇。弁当一緒に食おうぜ」
 俊二が、勇に近づいてきた。
「うん。食べよ?」
 ついついにっこり笑っていった。すると、呆然とした顔で俊二はこっちを見ていた。
「どうした?」
「いや。笑ってたら勇かわいいなぁって思って」
「は?かわいいってオイオイオイ」
「ごめんごめん」
 前の人の椅子を動かし、こちらを向いてきた。
「そういえば、あんまり勇って人と話さないよな?」
「そう?俺は話しかけられれば、話すけど?」
「そうなんだぁ〜」
 なんか、モヤッとが解消されたように、さわやかな笑顔が俊二から出てきた。
「なに?」
「いや。意外だなぁって思ってさ。最初夕のこと見てたら・・・」
「ねぇ、漢字変換間違ってる」
「オウ本当だってそんなのどうでもええよ」
 ナイス突っ込み。ついでにナイスボケだったよ。
「見てたらさ。なんか話にくいなとか、重大な秘密でも抱えてそうで」
「あ〜そんなん無い無い」
 と、笑いながら答えた。けど、実際はそんなに重大でもないのだが、いちおあるには変わらない。
 放課後。俊二は野球部に入ったということで、終わるまで教室で待ってることにした。
「お前・・学校でも一人なのか?」
 誰もいないはずの教室なのに、急に後ろから声がした。しかも聞いたことのある声だ。ゆっくり勇は後ろに振り向く。
「やっぱり・・・あんたか」
 普通に健人が立ってグランドのほうを見ていた。
「よくノコノコこんな所までこれるな」
「まあな。俺はどんなところでも現れる」
「そう。」
 視線をグランドに戻す勇。
「あいつ?俊二が気になるの?」
「気になるっつうか、なんか俺が許したの。何でだろう。あいつは友達だ。」
「あいつを待ってるってのかい?勇」
「ああ」
「そうか。なら俺は戻ってるな」
 は?と思い、健人のほうを向くと、もうすでにいなかった。
「早いなぁ・・・」

 部活が終わると、俊二は教室に戻ってきた。
「待っててくれてサンキュウな。帰ろうか?」
「うん」
 家に帰ると、舅と遊ぶ健人が見えた。
「お前って猫好きなの?」
「あぁ結構ななぁ、こいつの名前ってなんだっけ?」
「舅」
「こいつ・・メスだぞ?」
「いいの」
「かわいそうに。じゃあ、こいつが人間化したらどうする?」
「ハッ。猫がするわけ・・・
 ボンッ!
 煙幕か。急に、舅からかなりの煙が・・。
 よくみてみると、なんだか人間が増えたような気がする。
「ハイ。人間化させました。」
 さすがにこれは呆然とする勇。本当に、女の子が健人の前・・言うなら舅がいた場所に現れた。
「へぇ〜猫って人間になるんだぁ〜」
「突っ込む場所そこ?」
 ボケに突っ込む健人。
「はじめまして。勇様」
 改まった感じにその女の子は言った。そのこは、後ろに二つ縛りをしていて、腰くらいまで髪はあるだろう。身長はチョッと低い感じかな?百五十pくらい。そして、真っ黒な服を着ている。
「舅?」
「はい」
 首を縦に振る女の子ってことは、その女の子は舅ということになる。
「そうか。舅って人間だったのか」
「イヤッ。だから違うって」
「え?だって現に今人間に・・
 ボンッ
「また?」
 すると、舅が小さくなり、猫になってしまった。
「へぇ〜面白いね」
 そういいながら、勇は舅の頭をなでなでなでた。
「お前はなぜ驚かない?」
「何でだろうね?驚くことにはもう慣れちゃったのかもしれないな」
 ガシャーン
 いきなり下から大きな物音がした。
「なんだろう・・・」
「行って見るか?」
「うん。ちょっちいってくるね」
「俺も行くよ」
「え?あぁ。良いよ。」
 良いのか?もし親だったら、なぜそこにそいつがいるのか不思議になると思うのに。
 恐る恐るリビングの戸を開けた。すると、そこには母たちがまた乱闘していた。それには呆れた。
「またか・・・」
 ボソッと言った勇の言葉に健人は聞く。
「また?」
「うん。よく争うんだあの二人。最近なくなったかと思ったんだけどね」
「へぇ〜いっちょ言ってくるか」
「え?」
 いきなりドアを思いっきり開けると、中にズンドコ入って行った。
「ねぇ、何やってんの?こんなところで子供の前だというのに。恥ずかしいとか思わないの?」
 ――あいつって、結構根性あるな・・
 確かに。学校に堂々と土足でいるし。人の家でドンと王様気取りだし。
「な・・誰だお前は!」
 取り乱す親。と、健人のほうに指を指す。
「俺?俺は勇の守護者健人です」
「守護者?何だそれは!」
 一方的に怒鳴りつける父。それにピキッと来る勇。それを見届ける舅。それを受ける健人。
「父さんやめて!」
 急に止めに入った母。
「なんだ?俺は・・」
「勇に友達が出来たというなら良いじゃないですか!いままでいなかった勇に友達が出来たんですよ?」
 強気な目で訴える母。健人は、エッヘンというように、強気で立っている。勇は今にでも泣き出すか、とりあえずわめきたくなる。舅は、人間化し勇の方を、ポンポンッと叩いてあげた。
「舅・・」
 ふと舅のほうを見る勇。にやっと笑ってくれるその笑顔には、ぼろ負けだった。
「俺は勇を自然にしてあげたいし、不自由なく過ごしてあげたい。けど、今の勇の私生活はどうだ?俺的には、縛り付けてるしか言いようないけどな」
「な・・なんでお前にそんなことを言われなければいけないんだ!」
「だから〜俺は勇の守護者だから!」
 かなりの強気な健人。こんなに強気なのもどうかと思うが。さっきから言ってる守護者という意味が知りたい。
「勇行こう」
 いきなり振り向いてきて、腕を引っ張り、階段を上って部屋まで行った。
「おい?」
 部屋に入り、ベッドに座ると、健人は疲れたように、おでこに手をやり支えていた。
「どうかしたのか?」
「俺は勇の守護者だから・・この体制でいるのはつらいんだ・・・」
「どの体制が良いの?」
 健人の背中に手をやり、ポンポンッと軽く叩いてあげた。
「俺を前から抱きしめてくれ。」
「?うん。」
 言われたとおり、立って健人の前から抱きしめた。すると、健人は急に光りだした。そのままギュウッとしていると、その光はなくなる。俺はゆっくり身体を離すと、なんだか、小さい子猫になった。
「・・・」
 チョッと無言が続く。舅は勇の顔を覗き込むようにみてきた。
「かわいい」
 結局勇の口から出てきたことばはカワイイだった。出てきたのは、茶色に所々黒が混ざってる猫。その猫は、こっちをジィッとみていた。
 勇はゆっくりその猫をなでた。
「お前・・健人か?」
 薄っすらと笑う勇。本当に驚かないという勇は、どんな生活をしていたのだろうか。 舅は、急に人間化し、勇の頭をバシッと叩いた。
「イタッ」
 頭を押さえて、ゆっくり舅のほうを見た。
「な・・なに?舅」
 ジィッと見つめる舅に、勇は不思議に思う。
「どしたの?舅?」
「少しは驚いてあげないよ」
 まじめな顔して舅に言われると、なんともいえない。
「驚く意味がないしなぁ〜それに俺猫好きだし」
 といいながら、勇は舅の頭をクネクネとなでた。
「それより健人。質問があるんだけど・・」
 ポンッ
 急に人間化になる健人に、チョッとびっくり。
「なんですか?」
「健人が行ってた守護者って何?」
「僕は勇を守るために、生まれてきたものだ」
「それがわかんないんだけどなぁ〜」
 と、頭をかきながら言った。
「まぁ良いや」
 ポンッとなり、すぐに猫に変わった。
「俺が抱きついた意味はあったの?」
 ボソッと突っ込む勇は、なんだか不思議な気持になっていた。
 それに、ドンドン現実逃避しすぎていることに、作者気付いた。
 俺はその後、チョイ暖かめなタオルを二枚ほど用意し、かご二つに、一枚ずつやわらかくなるよう入れた。その中に舅と健人をいれ、勇は寝る準備をした。

 ベッドに入ると、なんとなくスヤスヤとなりやすい勇は、すぐに目が閉じた。
 その日の夢は、真っ暗なところに、薄っすらと明るい場所があった。その場所にだんだん近づいていくと、誰か人が二人たっていた。
 よくみてみると、それはなんだかみたことがある人影だった。
 急ぎ足で近寄ってみると、それは、母親と父親だった。こっちをみていて、けれど身体は向こうを見ている。
 勇に気付くとフイと向こうを見て、ゆっくり歩き出してしまった。勇は急いで走って行ったが、歩いている親に対して、全然追いつけない。というか、逆に遠くなってい く。すると、いつの間にか暗闇に襲われた。
 ハッと気付くと、薄暗い部屋にいた。よくみると、この部屋は自分の部屋。そして、ベッドの中だった。
 上半身だけを起こし、額に手を当てた。かなりの汗をかいていて、ベッドリだった。窓を開け、涼しい風を送り出した。
 ベランダに出て、窓を閉めた。風に当たっていたら、ガラガラと、ベランダの窓が開く音がした。ゆっくり足元を見てみると、舅だった。こっちをジロリと見つめてくるので、何でか舅を勇は持ち上げた。
 まだ薄暗い時間帯。いまは午前二時だ。なんだか、人通りが少ない道の前に建っているが、こんなにも人がいないと、なんだか悲しくなってくる。けれど、これ以上の悲しみを勇は知っている。
「もうはいろ・・寒い」
 舅を担いだまま、勇はベランダから部屋に戻る。窓を閉めるとき、ふと急な寒さを感じた。窓のほうに振り向くが、特に何もない。気のせいだと思い、勇は窓をきちんと閉めて、カーテンも閉めた。
 きちんと起きた朝。なんだか、起きる気がしないという体の抵抗もありながら、服を着替え、パンを一口一口食べた。
 ポケーッとしたまま部屋に戻って、学校に行く準備をした。ふと学校に行こうと、部屋から出ようとしたとき、声がした。
「行くな」
 後ろのほうからかして、ふっと振り返った。けれど、健人がいるわけでも、何もいなかったのに。それに、その声は今まで聞いたことがなかった。男の子の声だった。
 気のせいだと、勇は学校に向かった。
 けれど、早朝の事といい、さっきの事といい、また何か来るのかと考えながら学校に向かった。
 授業中も、そればかり気になっていて、ほとんど話は聞いていなかった。
 帰り道だって。今にでもこけそうなくらい不安定な歩き方。
 そのときだった。勇は道を変えて歩いた。向かった先はというと、この前の海。一度舅を放ってしまった場所だ。
 砂浜に座り、砂を一握りして海に投げた。すると、なんだか気持がスッキリした。なんだか面白いと、それを続けていた。
「何している」
 後ろから聞きなれた声がした。なんだかきつい目つきをしている健人だった。
「砂投げて遊んでる」
「面白いの?」
 健人は勇の隣に立ち、海に向かってみた。
「気持ち良いよ。スッキリした感じで。健人もやってみなよ」
 勇がそういうと、健人はまねするように、そっと砂をすくい、海に放り投げた。かなり遠くまで行って、勇はそれ以上を目指すと決意して、二人でやりあっていた。
 気付いてみれば、もうすでに周りは暗くなっていた。
「もう帰るか?健人」
「ハイ」
「そんなに堅くなるなって」
 カバンを持って立ち上がりながら言うと、健人はかなりキョトンとしていた。
「どうした?健人」
「いや・・・なんか表情が柔らかくなってるなぁって思って」
「そうか?」
 自分では気付かないのか、健人に言われてから勇は、いろいろ話すようにもなった。 けれど、今朝の事は言わないで置いた。
 次の日。特に変わったことがないまま朝を迎えれると思った。が、おきたすぐには舅と健人が人間化していた。まぁ健人はいつも人間化しているが、舅までも珍しくだった。
 特に不思議にはならなかったが、なんだか深刻そうだった。
「こっちへおいで」
 誰もいないはずの、後ろの窓から声がした。ふとしたことで、後ろを振り向いた。
「勇?どうかした?」
 舅は心配そうに勇に聞いた。
「え?あぁイやなんでもない」
 向きなおして平気な顔した。
 またあの声。昨日の朝に聞いた声と同じだった。

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