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暗闇 作者:米沢涼

最終回   ネツ
 一人になったことはあるだろうか。必ずあるとはいえないが、居る人は居るのだと俺は思う。そして、俺はいつまでもひとりで生きていかなければならない人間だと、一人で思わなければならない。
 周りが信じきれる奴でも、俺は考えをあわせてはいけないのだ。いつ日か語ったことがあった。確かに語りたい。これを誰かに訴えたい。
 皆さんは世の中何で回っていると思いますか?
 俺は自分たちで回っているといいたい。誰かが主張すれば、空気が何かにずれていき、どこかに弾みが出来てまた変わる。ボールと同じ。どこかにぶつければ、違うところに着地する。
 間違った世界に足を踏み外しかけているのか、俺は何か皆と違うということを、早めに知ってしまった。
 諒助は言っていた。
 久し振りに聞いたな声
 聞いた声。俺は確かにあまり話さなかったせいか、声を覚えていられていなかったのかもしれない。
 クラスの誰かに電話をして、「俺だよ」と言っても気付いてくれなく、きられてしまうのかもしれない。俺はそんな奴だ。
 そんな俺にも、諒助はついてきてくれた。話してくれた。それだけで、何かが抜けたようにスッキリしている。
 一人を知らない諒助かもしれないのだが、それだから周りに慕われ、尊敬されている。俺はそんな奴の近くに居る資格はないのかも知れない。

 学校に行き、諒助に話をかけられた。軽く話してすぐに席に着いた。まだ話してきた。いやではない。聞くだけ聞いていた。目を合わせたくない。
「隆茄?どうしたんだ?」
「聞いているよちゃんと」
 ボケーッとした顔で言ってしまった。たぶん、向こうにはなにか伝わっていないかもしれない。
「そう?それなら良いけどさ」
 終わった。それで終わるとは思わなかった。どうした?とかは聞かないで、そっとしてくれた。チョッと驚いてしまったが、何か落ち着いていた。
 授業が始まると、すぐに窓を向き、グランドを見回す。
 どこかのクラスが授業をやっていた。
 あのクラスは確か、仲間はずれがないで有名な三年生だった。何かと尊敬されているクラスだったが、つい最近、いじめで問題になっていた気がする。それに、俺が見たところ、三年生のある一部の人が、タバコを校内&校外で吸っていたのを見てしまった。
 俺はそのとき話をかけないで、真横を通っていった。あっちはこっちを見ていたが、俺は無視をしていた。
 たぶん、あの後に喧嘩にならなかったのは、学校にチクッたりしなかったからかもしれない。きっと、あの時チクッていたりしていたら、裏に呼び出され、ボコられていたかもしれない。
 外見からして、顔だけだというやつが多いし、ケンカも弱そうだといわれてきていたが、けんかは得意分野だ。
 なぜか知らないが、いつの間にか鍛えられていた筋肉をフルに使えれるという、何か不思議な俺の力を、皆して知らないというものなのか。
「早く帰ろうよ」
 いつの間にか放課後になっていた。俺は諒助を待つという約束をしていて、ずっと教室にボケーッと野球部をみていた。
「あぁ」
 席を立ち、カバンを持って、窓を背にしたとき。赤い光が俺の背中を照らしていた。そのまま教室を出、玄関に向かった。玄関の戸を空けると、真っ赤な太陽が俺を照らした。
「真っ赤だねぇ〜」
 のんきに笑って言う諒助は、太陽に手を差し伸べるように、手を上げた。
「真っ赤だな」
 聞き流すように俺は、すたすた前を歩き出した。それに急いでついていくように、諒助は急いでいた。
 暫く俺は話さないで、諒助のマシンガントークに付き合っていた。
「俺こっちだから」
 といって、俺はわざと離れた。そっちに行っても、俺の家なんて無い。ただ逃げてるだけ。
「そうか。じゃね。またあした」
 そう言って別れた。
 家の無い道を、てきとうに歩いていた。すると、また出会ってしまった。バカな先輩などに・・。
 けれど、みていないというように、目の前をのんびり歩いていた。すると、後ろから手をつかまれた。反射的に手を勢いよく前に出し、つかんできたやつの体制を崩した。
「何?俺に手出しするようだったら、容赦ないけど?」
 男たち。ざっと五人くらいが俺の周りを取り囲んだ。
「俺たちに勝てると思うのか?前から良く見かけてるぜ?お前」
 睨みつけられているが、特に感じない俺。ドンドン殴りたいという感覚だけが出てきてしまう。
 一人の手に目が行った。その人の手には、なんだか鉄を握り締めているみたいに、キラキラしたのがあった。
 そればかり見ていたせいか、周りを見ていなかった。急に、後ろから殴りつけてきた。丁度頭じゃなく、背中でよかったのだが、なんだかかなり硬いものだった。後ろを振り向くと、どこから取り出してきたのか、鉄の棒を持っている男がいた。
 マジデか
 俺はそれしか思えなかった。いつの間にか、全員して鉄の棒を持っていた。
焦った。
 俺はとりあえずその場を離れようと、人と人との間をすり抜けて、相手が全員前にいる状態になった。
 よしこれで
 これで怖くない。俺は敵が前にいれば、あまり怖くない。
殴りかかってくる。上から振り落とす漢字に。俺は左にチョッくらうごくと、左にいたやつが、胴狙いで横振りに。それをヒョイッと跳びかわす。
「ちくしょぉ〜!ちょこまかと!」
 怒るのもしかたない。
「俺を殴れるったって、何回もやられてたまるもんか」
 アッカンベーと挑発する俺。なんか自分でも馬鹿馬鹿しく思えてきた。
 俺は走った。逃げたわけじゃない。丁度今日は、カバンも思いし、なんだかやる気がおきない。
 元々ケンカ好きなわけじゃない。どっちらかというと、ひとりでのほうが気楽だし、何よりのんびり出来る。
 青い空をながめるのがすきだった。
 完璧過去形だが、俺は今ではなんと言うか、真っ暗な場所にいたほうが、落ち着く。安心するといったほうが良いのかもしれない。
「疲れた。」
 家に帰って、すぐにベッド行き。大の字に天井を向き、目をつぶる。
 目をつぶってそして、また開ける。すると、さっきと違う風景。
 周りが真っ赤。血みたいにドロドロ下へと向かっていた。けれど、次から次へと、赤以外出さない気かというように、ドンドン赤を生み出してくる。
 驚かずに、俺は歩き出した。だけど、俺に赤がつくわけでも、景色がわかるわけでもない。
 ドンドン歩いていった。何も変わらない。なんだか、たった一人の世界に流されていったみたいで、だんだん胸が痛くなってきた。
 黒を・・・
 赤より黒のほうが落ち着く俺は、だんだん足の速さが早くなってきていた。
 いつの間にか走っている俺。額には汗。いろんなところに汗がダラダラ出てきていた。こんなに走っても、いつもなら息も荒れたりはしなかった。
 かなり息が痛くなってきた。
 ハッと目を覚ました。かなり汗がダラダラ出て、息も切れていた。体を起こして息を整える。
「はぁ〜はぁ〜」
 喉の奥で、なんだか息がぬけてるような、ヒューヒューとかすれる音がする。
 時計を見てみると、朝の2時だ。かなり早く起きてしまっていた。
 ベッドから降りて、すぐ近くの窓からベランダに出た。冷たい風がおれを通り過ぎていく。
「隆茄?」
 下のほうから声がした。下を見てみると、そこには諒助がいた。俺は片手を軽く上げた。
 中に入り、温かい格好を軽くして、外に出てみた。すると、待っていたのはやっぱり諒助だった。自転車にまたがって、おれを待っていた。
「何でここに諒助が?しかもこんな時間・・」
「なんか目が覚めちゃったから散歩に。隆茄も行く?チャリドライブ」
「ハハッ行ってみるか」
 といって、おれは諒助の後ろに後ろを向いて座った。なかなかみられない座り方だが、隆茄にとってこれのほうが座りやすかった。
「結構近かったんだね僕たちって家」
「へぇ〜」
 そっけない答え。
 そんなこんなで、てきとうな場所を一周したら、すぐに戻ってきた。
「じゃあね。朝にでも会おうね!」
 別れた。おれはなんだか今日、学校に行く気にはなれない。俺はベッドの上にちょこんと座り、ボケーッとしていた。真っ暗な場所で。カーテンを開けずに。

 トゥルルルルルル・・・
 電話が鳴った。近くにあった子機を手に、電話に出た。そのときの時間は昼の2時だ。
『もしもし・・赤西隆茄君のお宅ですか?』
「ハイ。おれですけど・・」
 なんだか先生というなの人の声に似ていたが・・
『担任の岡宮だが・・今日はどうしたんだい?』
「なんだか身体に力でないんで、チョッと休みます」
 ガチャ
 すぐにきった。面倒ごとはゴメンだからだ。子機をおくと、すぐにベッドに大の字になり、ボケーッと天井を見つめた。
 気がついてみると夜の七時。さっきまで何をしていたのかもわからないまま、俺はベッドに座っていた。おなかには何も入っていない気がする。なんとなく歩く気分になったので、服を着替えてポケットに財布を突っ込み、外に出て行った。
 軽くおなかがなりそうな気がしてきた。それを押さえるように、たまにおなかに手を当てる。
 近くのコンビニで、鮭のオニギリとオカカのオニギリを買って、歩きながら食べて帰った。
 帰る途中、違う道を通ると、この前の海が見えた。ついでだからと、寄ってみた。道路から砂につながる階段をテクテク歩きおり、砂浜をのんきに足を滑らして歩いた。
 海の知覚につくと、座り込み、続きのオニギリを食べた。
 海のにおいがおれを包む。落ち着く感じでまだ寝れそうな気がする。
 全て食べ終わると、靴を片手に持ち、裸足で海のほうへと歩いていった。
 ジャボジャボジャボ・・
 海水に服が入り、水を引きずる感じに音がなる。身体が重くなり、身動きがしにくい。
「このまま死ねるのかな?」
 なぜこんな考えに走っているのかわからない。後ろを振り向いてみると、結構歩いたのか、砂浜が遠く感じる。かすかに足がつかない。
 さっきまでついてたのに・・
 不思議に思いながら、戻ろうと、手でこいで身体を動かしていった。
 何とか砂に足がつくと、ゆっくり砂浜に上がっていった。ビショビショになった俺と服。なんだかスッキリしたようで、逆にモヤモヤが出てきたようだ。
 服を脱ぎ、軽い服装になった。短パンにTシャツ一枚。久し振りにした格好だが、なんだかこっちのほうが軽く動ける。

 それからなん分かすると、俺はその場を離れ、家に帰っていった。真っ暗な夜道を歩いていると、ポツポツついている電灯に目が行く。悲しい道を歩いていく。俺はなんだか、たった一人で生きている人みたいで、何かむかついてきた。
 服を洗濯し、寝る格好になって、すぐにベットに入った。なんとなく、俺は身体が言うことを利かなくなったらしい。

 朝。いつもならてきとうに起きて、てきとうに朝飯を食べるのに、おきることすら身体が受け付けなかった。
 目覚ましはならないが、いつもてきとうな時間になったら、目は覚める。なのに、身体が動かん。どういうわけだが、俺はそのまま二度寝というものをまたしてしまった。
 なかなかおきれない。寝ることはないが、身体をベッドの中で動かすくらいしか出来なかった。
 またなった電話。今の時刻は、朝の十時。手を必死に出して、ベッドの近くにある子機を持って電話に出る。
「ハイ・・・」
 かなり力のない声。
「もしもし?岡宮だが・・」
「今日休みます」
 またいきなりきる俺の電話は、手がまともに動かないからだということもある。
 風邪引いたのかな?
 昨日の海のせいで、風邪を引いたのかと俺は、額に手を当てた。なんとなく暖かいような・・あまり感覚がない。
 身体を起こし、力を入れて立ち上がった。リビングに向かい、体温計を取ると、ソファーに勢い欲座る。
 ドサッ
 疲れたサラリーマンが、ネクタイをスルスルと外しながら座ったみたいだった。

 ピピピッ
 体温計がなる音。ふと見てみると、三十七くらい。あいまいな答えだが、それはそれで仕方ない。熱があることには変わりないのだから。
 てきとうにご飯を食べ、てきとうに薬を飲んで寝た。

 次の日は、何とかだるいのが消え、俺は学校に行った。すると、教室に入ったとたん、皆に囲まれて一斉にこういわれた。
「赤西君大丈夫?」「2日間も連続で休んでたから心配で・・」
 そのみんなの言葉に驚いて、俺は顔がにやけてきた。
 にっこり笑ってしまった俺はついつい言ってしまった。
「ありがとう。もう大丈夫だよ」
 なぜか癖なのか、俺はにっこり笑うと、右に首をかしげるのが癖らしい。
「良かった」
 皆はホッとしたように、気が抜けていた。その中で一番ホッとしていたのは、諒助だった。
「本当に大丈夫?」
 チョッと心配そうな目をして、こっちをみてくる。
「あぁ。大丈夫だよ」
 何でか今日は、機嫌がいいらしい俺。なんかにっこり笑えると、スッキリしてくる。
なんだか、こいつと一緒になってから、俺の固まっていた時計は進みだしたかのように。友達っていいもんだなぁ〜。ふと思った俺は、今日からどうしようかという、真の気持にきづいていきた・・

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Novel Editor by BS CGI Rental
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