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桜舞い落ちる『葉桜』 作者:米沢涼

第7回   収集   終わり!?
「つかれたぁ〜少し休もうぜぇ〜」

 それは、丁度夜須と櫻が山を登っていたときだった。
 この山を登り、頂上まで上れば、後少しその道のりにそり、そして、だんだん降りていく。その道を通らなければ行けないと言われている、村に着かなければいけないのだ。

「まだ咲きなんだぞ?ってか、3分の一も進んでないよ」
 冷たくそういうと、ブツブツと「疲れた」とか、「休みたいよぉ〜」という言葉が、夜須の口から発しられた。
「ってか、櫻は体力ありすぎるんだって」
 力強く夜須は櫻に言った。
 なぜ体力があるかって?それは母の風沙の力を借りているから、ほとんど自分の力ではない。といっても、疲れはあるのだが、並みの人間よりはかなりある。
「夜須は体力無さ過ぎるんだって」
「えぇ〜!それは違うよぉ〜」
 ブーッとフグみたいに膨れだした。
「ガキ」
「なんだとぉ〜!」
 なんだか本当にガキみたいで、櫻は内心楽しんで(遊んで)いた。
「あ・・なら、あそこの岩まで行ったら、少し休もう」
「オーケー!」
 夜須が力強く返事をすると、急いでそっちまで向かって行った。
「まだ平気じゃん・・」
 ブツリと櫻は言って行った。
 結局早く着いたのは、櫻だった。勝者櫻!歯医者じゃなかった敗者・・夜須!

「づかれたよぉ〜水〜・・」
 カバンから夜須は飲み物を取り出した。
「あんまり飲みすぎるなよ」
「なんで?」
「何でって・・・・そりゃ飲み物なくなっちまうじゃないか」
「あ〜そっか・・やっぱり櫻はしっかりしてるな〜」
「別に・・」
 と、そっぽを向いてしまった。
「ありゃリャ」

「さぁてと・・行きますか」
 櫻が、砂をホロ居ながら立ち上がると、「えぇ〜」というような顔で櫻を見る夜須。
「なに?行かないの?置いてくよ?」
「イヤッ行きます」
 急いで夜須も立ち上がった。

 数時間後。何とか頂上には着いた。といっても、とりあえずの目的地は、村だ。後もう一度今と同じくらいの距離を歩く。
 どこかで食べ物を調達し、先に先にと進んでいった。

「ついたぁ〜!」
 村に着くと、道端で前に、バタリと倒れこんだ。
「行くよぉ〜」
「えぇ〜・・・・・チョッと待ってよぉ〜」
 地面に這いつくばっている。
 お構い無しに、櫻は先に進んでいった。置いていかれないよう、急いで着いていく夜須。

 その日は、暗くなりかけていたので、どこかに交渉し、眠らせてもらった。
 さすがにここまでは、まだあの追っ手というものの情報は来ていないらしい。

 次の日の朝。早めに出発した。
 軽く仕事の手伝いをした。すると、色々と食べ物などがもらえた。
 急いで次にと進んだ。
 この村を出ると、すぐそこは、どこかの荒地のようだった。
「ここ・・歩くの?」
「無理だろ。んとね・・・木と木を跳んでいけばいいんだってか、そっちのほうがいい」
 櫻は身軽に木に飛び乗った。
「身軽だなぁ〜」
 感心する夜須。
「いいから早く来いよ」
 櫻は夜須を置いて先に進んでいった。
「バカッ待て!」
 夜須は急いで櫻を追っていった。

「お前・・本当にわかんない」
 ふと夜須がつぶやいた。
 丁度今はチョッと休んでいるときだった。背中を合わせて座っていたら、急に夜須が言ったのだ。
「何が?」
「全部が・・なんでそんなに詳しいのか。何でそんなに強いのか。何でそんなにしっかりしているのか。すべてがわからない」
「わからせない・・絶対に」
 悩むことなく櫻は夜須に言った。
「なんで?俺はもっと櫻の事を知っていきたいんだよ」
 言われた櫻の眉間にシワが。
「知らなくて言い事だって・・いっぱいあるんだ」
 自分にも言っているかのように言った。
 なんだか自分に何かの試練が待ち構えられているようにも感じられてくる。
 ふと思い出した数珠。
 見下ろしてみた。なんだかこの数珠が、櫻の力を制御してくれてるみたいだ。
 先ほどの櫻吹雪きも、昔よりなんだか威力が落ちたというか、力はあまり余っているのだが、何かで制御されているように抵抗があった。
「知らないこと・・・その知らないことってのが知りたい」
 真剣な目で見られる櫻。
「そんな目で見るな・・俺は・・・俺はダメなんだ・・知ってはいけないことまで知っているから・・」
「この戦いから逃げるようなものなんだ・・何かそのことを知れば、もっと櫻の手助けを出来ると思うんだ」
「俺の手助けってか?」
 夜須はゆっくりと頷いた。
「お前に言ったら・・少しはスッキリするのかな」
 力が抜けるように、足がガクッとなり、座り込んだ。かなり声に力がなかったというか、何かのスイッチがフッと切れた。
「お願いだ・・・もっと櫻にはゆっくりしてもらいたい」
「俺は・・俺は殺人だよ・・」
「はい?」
 スッと言われたことに、理解が出来ない。
「俺は人を殺したんだ。親を・・両親を見殺しにしたんだ」
「まった・・落ち着けよ。かなりパニクッてるって・・・」

 砂浜に座り込んだ。少し暗くなりかかっている海は、きれいで悲しかった。
「それはお前が悪いんじゃないさ」
「けど、思いっきりそうだろ・・目の前で行われてることについていけなかった・・・助けてあげれなかった!」
 自分を追い詰めるように叫ぶ櫻。夜須はゆっくりと櫻の頭をなでた。
「なんだよ・・・」
 顔を伏せる櫻。
「お前・・・暫く泣いてなかっただろ」
「暫くも何も・・・ここ数ヶ月泣いてない・・」
「数ヶ月って・・親のときは?」
「いろいろありすぎて泣くことすらできなかった」
 ゆっくりとまた夜須は、櫻の頭をなでてやった。
「ばかッ・・何でなでるんだよ・・弱ってるときにさ」
「いや・・チョッと話してくれて嬉しかったなぁって思ってさ」

 それからは、なにもいわないまま、疲れたからか、櫻は睡眠に入った。そのときふと思ってみれば、夜須とあってからまともに櫻が寝てないということが発覚した。


 何日か経った。
 櫻の表情は、前より豊かになり、コロコロ変えるようになった。そのおかげで、櫻が今どんな状況なのかもわかってきていた。
 きちんとまだ教えてもらっていない夜須には、まだ色々と不安がこみ上げてくるときもある。それを抑え、きちんと櫻に接していけるようにがんばっていた。
「あぁ〜疲れたよぉ〜櫻・・」
「それ・・前にも聞いたような気がするってか、夜須体力無さ過ぎ」

 名前でも呼んでくれるようになってから、夜須は櫻に話かけるのが、前よりも楽しみになってきているのだ。けれど、体力が増えるわけではなく、疲れるのは変わらない。 けれど、普通の龍崎一族よりも、体力が何倍もあることは、櫻もわかっている。

「違う・・お前がありすぎるんだよ」
 この言葉も聞き飽きた。
「ハイハイ。あの村まで着いたら休憩取りますか」
「おっしゃぁ〜!」
 力強く言ったら、急に走り出した。いつの間にやら夜須の姿は見当たらない。
「はやっ・・」
 呆れてそれしか言葉が出てこなかった。

 なんとか櫻もその村には着いた。けれど、問題なのがこれからだ。村といっても、これは本当は町だった。
  レオ・バラスイオ・シティー
 という、なんだか不思議な名前の町だ。なんとも読みにくい。略してレオバと呼んでいるらしい。ここらの人は。

 レオバは人ごみが多く、人と待ち合わせをするには、最低な場所らしい。
 入ったからには出るので精一杯というらしい。
「メンドイな」
 街中でそんな言葉を発してしまうが、皆がそう思っていることなんだろうか。

 歩きやすいのと、探しやすいと考えて、建物の屋根に上った。
「高いところで探そうか・・」
 そう決めたものの、次は高いところを探さないといけなかった。

 あれ?ここであんまり目立っちゃダメでないか?

 ふと思った。
 こういうでかいところだからこそ、追っ手が来そうだった。

 なぜここの人たちは非難とかしないのだろうか?

 そんなことも思ってしまう。
 確かに、夜須や櫻の龍崎一族にとって、こういうところだからこそ、かなりの警戒心を持つものだった。

 まぁいいか

 大雑把な櫻はそんなことを考えずに、屋根と屋根を跳びまわり、高いところを探す。
ふと、展望台が目に入った。というか、ドンドン櫻の性格が夜須とかぶってくる

 あそこなら・・

 結構高い場所だった。
 とりあえずそこにむかっていった。
 近くに行って見てみると、本当に高かった。
「正面から入るの面倒だな・・」


 なんだかんだで、色々とやり、展望台の屋上に着いた。

 高い

 高いのは良いのだが、高すぎて人がアリンコに見える。
「さぁ・・どう探すかなぁ〜」
 こんなときは、頼りの桜だって使えない。人ごみが多すぎる。

「おい・・お前・・・」
 後ろのほうから何か、震えた声がした。
 フッとそっちを向く。すると、大分前に何回か見たことのある服装・・・
「見つけたぞ!」

 追っ手だ・・

「今のうちに捕まえろ!」
 そうそいつが怒鳴ると、あちらこちらからいっぱい出てきた。
「出入り口を塞げ!出られなくするんだ」

 あっちゃ〜・・

 失敗した。
 夜須を探すことしか考えていなかったせいで、こんなことになるとわ。本当に、逃げ場がなくなった。
 言うならば、飛び降りるしかない。
 もしここから飛び降りたら、ひとたまりもない。高すぎる。

 桜を使うか・・

 もしこんなところで下手したら、もうバレバレで余計追っ手が来る。
 どうするべきなのだろうか・・こういうとき夜須がいてくれれば、鳥になったりしてもらえれるのに。

 チッ

 舌打ちをした。久々だろう舌打ちをするのは。
 敵はドンドン近づいてきている。
 人を傷つけるのは、好きではない。
 ついに腕をつかまれた。それと同時に、かなり力が抜けた。足がガクッとなり、座り込んだ。
「てめ・・・なに・・しやがった・・」
 力が本当に入らない。
「これだよ・・・知らないのかい?」
 出されたのは、なんだか黒い珠だった。
「メイロウというものだよ。龍崎一族の力を出させないようにするものさ」
 と、深々と説明してくれた。


 気付いたら、真っ暗な闇の中に居た。
 薄っすらと光がある。

 檻

 檻の中に閉じ込められていた。

 光を・・・

 もっと深い光がほしかった。
 気が狂うのだ。

 怖い・・・くらい・・・闇が・・・恐ろしい

 ドンドン不安がこみ上げてきた。
 閉じ込められる・・・どこかで感じたこと。
 櫻はゆっくりと数珠を握り締めた。
 前と違う力がこみ上げてくる。何か・・・制御ではなく。いままで抵抗されてた分の力が、出てきた感じだ。
 何か・・前と違う何かが・・

 桜吹雪!

 何かわからないが、自分でなぜか起動させていた。

 止まらない・・いや、とめない

 目つきが強くなる。
 櫻はいままで感じていたストレスなどが、こみ上げてきた。すべてを発した。
 暗すぎてどうなっているかは、わからない。けれど、とりあえず、ここがやばいことはわかっている。
 切り刻んだ。建物を壊せるだけ壊そうとした。

 切り傷一つ付かない。今までの力をすべて振絞った。
 切れない。あとがつかない・・
 悔しい
 新しい何かがほしい・・
 光り・・・

 この前取得した光を呼び起こした。
 何とか回りは見える。
 自分の桜が散らばり、傷一つ付いていない壁などを見てみると、何かを思い出す。

 あ!

 暗闇。檻。傷。このすべてがかさぶる場所は、一度来たことが合った。

 母さんも・・・父さんも・・ここで・・

 そう。ここは父と母が殺されるとき、助けに来たときと同じのような気がする。
 あの時は、大きな扉を思い切って開いた。その時は、母と父はまだ殺されていない。いや、殺される直前だった。
 キレてその殺そうとしたやつを殺したが、父と母は違う者によって殺された。そし て、男が父と母から切取った刺青を、収集しているとき、その男も殺した。そして、その刺青を自分のものにした。
 そのときと、形などは正確にはわからないが、同じのようなものだった。

 殺される

 焦った。
 殺されると思った瞬間に、焦りだす櫻。
 どうすればこの檻は壊れるのだろうか、深く考えた。
 焦った気持を落ち着かせる。でないと、考えることすら出来なくなり、体力などが無駄に減るだけだと、学習したのだ。

 どうするべきだ

 櫻は怪力というまでの、力はない。というか、鍛えなくても今までやっていたから、筋力なんてただの人と同じくらい。いや、それ以下かもしれないというのだ。
 筋力がある場所は、足くらいだった。
 今から鍛えたって、そんな数分で鍛えあげられるわけはないのだ。

 集中的に壁を壊せば。

 ふと思いついたことだ。暗くて傷が見えないだけかもしれない。だから、集中的にある部分だけを削ればどうにかなるのではないだろうか。
 
 後ろに振り向いた。
 檻の棒の逆だ。そっちなら、外かもしれない。だが、その壁を削る桜は、どんなのが良いのだろうか。

 また深く考えた。
 いい事は思いつかないだろうか。
 一枚の桜を手にする。
 桜を刃に変えるのは、桜吹雪しか出来ない。なぜ出来ないのだ?
 一枚の桜に集中した。そして、その桜を刃に変える。それは簡単なことだった。
 それをナイフのようにもち、壁を一点集中して削っていく。
 当たっている感触はある。だが、削っているという感触までは、わからない。

 暫く削っていくと、一旦削るのをやめた。
 そして、その削っていた桜を光に変え、削ったところを見た。

 オッ!

 感覚はしなかったものの、少しずつ削れているのがわかった。
 やる気が出て、また削るのを続行した。

 この壁の厚さはどれくらいなのだろうか。

 そんなことも考えずに、それだけに集中していた。

 何時間も変わったことがおきなかった。普通なら、その場で殺されるだろう。なのに、なぜか桜の身には何も起きていないのだ。

「出来た!」
 一点の光が差し込んだ。
 小さいが、穴が出来たのだ。
 これをどうするか。この穴をでかくするしかないのだが。

「さぁてさっきのガキはどうなったかな?」
 誰か来たみたいだ。
 櫻は立ち上がり、穴を自分で塞いだ。
「オヤオヤ・・なんだか元気っぽいなぁ〜」
 クロっぽいマントの下に、色々と複雑な服を着ている人たちだ。
「何もされないから安心してたんだろうな」
 といって、二人は笑っていた。
 今来たのは、二人だけだった。
「俺をどうするつもりだ」
「今からお前の身体から刺青を探す」
「そして、その刺青を収集した後、お前を殺す」
「悪いけど・・死ぬ覚悟は出来てないんでね」
 といって、背中の壁を思いっきりけった。
 壁はゆっくりと後ろに倒れていった。
「な・・なに!」
 そう。さっきまで必要異常な会話の数秒で、何本もの桜でこまめに削って行ったのだ。少しの削りでも、ければどうにかならないかと、人が来たときに思ったのだ。

 まぶしい光の中に、逃げ込んでいった。

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