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| あれから何年経っただろうか。結構経つはずなのに、まだ暗闇はダメだった。 
 怖い
 
 その恐怖からは、必ず逃げ切れないとだけは、今のところだった。
 
 暗くなり、三人で固まって寝た。見つからないよう、木に登り、器用に寝る。けれど、櫻だけは眠れなかった。
 
 暗い
 月の光があるから、震えたり立てなくなったりとかまでは、ならなかったが、ちょっぴり怖い。
 眠れないということで、気から降りてもっと桜の特訓をした。なにかに使えないかと。
 立った一つの桜を出した。そして、それに神経を集中させた。
 
 今ダメなもの
 
 それを深く考えた。
 
 闇
 
 それしか思いつかない。とりあえず、それを克服するためにはどうすれば良いのだろうかと、少し悩んだ。
 今必要なものは、光。桜が光ることなんて、ありえるのだろうか。
 そんな深いところは考えずに、桜に集中させた。
 
 光ること
 
 それを中心に、今回はがんばることにした。
 出来るできないは、後から考える。今はやってみるという時間にした。
 
 暗闇を想像した。
 そして、その中に光る桜を想像した。想像の桜は光り、周りを徐々に明るくしていった。けれど、そこは単に白い部屋。
 白い部屋に、たった一人だけ立っていた。
 
 そんなのを想像して、ゆっくりと目を開けた。
 
 光っていなかった
 
 そんな簡単に光るわけはないとは思っていたが。
 けれど、一回で挫けるわけには行かなかった。
 これでも、根は結構強いほうだということだ。
 
 
 それから何時間たっただろうか。特にこれといった事は起きなかった。桜には何の動きもなかった。
 いつもは桜をこうしてるというのを、深く考え込んだ。けれど、そんな急にはうまく行くものではなかった。
 確かに幼いころから、あんなふうには出来るもんではなった。けれど、多少の事なら、驚かずにやっていた。
 
 なぜだろう
 
 普通なら驚くのが当たり前なのだが、そんなことでは驚かない櫻。むしろ、面白がったくらいだ。
 何か役に立てないかと、色々としていたからか、かなり能力はついた。けれど、これだけじゃ物足りなかった。
 
 その攻撃とかを考えるとき、一番何をしていたのだろうか。
 
 そう考えると、結構簡単なことだった気がする。
 けれど、今になってはそれが出来ない。
 
 
 そんなこんなで、試してからきっと一時間ほど経っている。
 へこまずにがんばって実験してみた。何とか身体では解っているのだが、うまくいかないということだった。
 
 そんな時、ふと幼いころのことを思い出した。
 真っ暗悩みに、たった一人だけで残った部屋。
 人を信じてあんな目にあうとは思わなかったあの日。
 あの日以降。人を信じることが出来なくなった。
 唯一信じれる人は、親だけだった。
 けれど、その親までも死んでしまった今。誰を信じれば良いのだろうか。
 
 ギュッと握り締めた拳。その中にたった一つの花びら。そして、願い。
 その拳には、色々な思いがこめられ、そのこめられた拳は、かなり重いものだった。 しっかりと感じる思いは、拳に締め付けることが出来たと思う。
 けれど、拳には櫻の気持。そして、桜の行動がこめられている。左の拳。
 思い切り握り締めた後、ゆっくりと手を開いた。すると、その桜はだんだんと光り続けていた。
 惑わされず、ゆっくりと願いをこめていった。ドンドン光が増し、この暗闇を消し去るように。
 
 何かスッキリした。少し出来ただけでスッキリした。
 
 少し
 
 けれど、この少しは本当にでかいものだと思う。ほんの少し。ほんの少しが大きく変わる。何か今始めてわかったような気もする。
 
 少しが大きく変わるとき、櫻の性格も変わると思う。もっと、もっと大きくなると思う。だから、一歩一歩進まなければならんといけんことだ。
 誰も見ていないどこかの闇で、うずくまることはダメなことじゃない。
 ダメなことは、それを・・・うずくまることを、ズルズルと続けることがダメなことなんだ。
 といっても、それは誰かが言っていたことだとしても、なんだか自分で言っているように。誰かが教えてくれるってこともいい事かもしれない。
 今櫻を支えてくれる人は、まだ居ないとしても、いつかあの二人を信じれるときが来ることを、願っていたい。
 そのとき櫻は、嬉しかったあまり、数珠を握り締めた。
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