■ トップページ  ■ 目次  ■ 一覧 

桜舞い落ちる『葉桜』 作者:米沢涼

第4回   大きな一歩の光り
 あれから何年経っただろうか。結構経つはずなのに、まだ暗闇はダメだった。

 怖い

 その恐怖からは、必ず逃げ切れないとだけは、今のところだった。

 暗くなり、三人で固まって寝た。見つからないよう、木に登り、器用に寝る。けれど、櫻だけは眠れなかった。
  
 暗い
 月の光があるから、震えたり立てなくなったりとかまでは、ならなかったが、ちょっぴり怖い。
 眠れないということで、気から降りてもっと桜の特訓をした。なにかに使えないかと。
 立った一つの桜を出した。そして、それに神経を集中させた。
 
 今ダメなもの

 それを深く考えた。

 闇

 それしか思いつかない。とりあえず、それを克服するためにはどうすれば良いのだろうかと、少し悩んだ。
 今必要なものは、光。桜が光ることなんて、ありえるのだろうか。
 そんな深いところは考えずに、桜に集中させた。

 光ること

 それを中心に、今回はがんばることにした。
 出来るできないは、後から考える。今はやってみるという時間にした。

 暗闇を想像した。
 そして、その中に光る桜を想像した。想像の桜は光り、周りを徐々に明るくしていった。けれど、そこは単に白い部屋。
 白い部屋に、たった一人だけ立っていた。

 そんなのを想像して、ゆっくりと目を開けた。

 光っていなかった

 そんな簡単に光るわけはないとは思っていたが。
 けれど、一回で挫けるわけには行かなかった。
 これでも、根は結構強いほうだということだ。


 それから何時間たっただろうか。特にこれといった事は起きなかった。桜には何の動きもなかった。
 いつもは桜をこうしてるというのを、深く考え込んだ。けれど、そんな急にはうまく行くものではなかった。
 確かに幼いころから、あんなふうには出来るもんではなった。けれど、多少の事なら、驚かずにやっていた。

 なぜだろう

 普通なら驚くのが当たり前なのだが、そんなことでは驚かない櫻。むしろ、面白がったくらいだ。
 何か役に立てないかと、色々としていたからか、かなり能力はついた。けれど、これだけじゃ物足りなかった。

 その攻撃とかを考えるとき、一番何をしていたのだろうか。

 そう考えると、結構簡単なことだった気がする。
 けれど、今になってはそれが出来ない。


 そんなこんなで、試してからきっと一時間ほど経っている。
 へこまずにがんばって実験してみた。何とか身体では解っているのだが、うまくいかないということだった。

 そんな時、ふと幼いころのことを思い出した。
 真っ暗悩みに、たった一人だけで残った部屋。
 人を信じてあんな目にあうとは思わなかったあの日。
 あの日以降。人を信じることが出来なくなった。
 唯一信じれる人は、親だけだった。
 けれど、その親までも死んでしまった今。誰を信じれば良いのだろうか。

 ギュッと握り締めた拳。その中にたった一つの花びら。そして、願い。
 その拳には、色々な思いがこめられ、そのこめられた拳は、かなり重いものだった。 しっかりと感じる思いは、拳に締め付けることが出来たと思う。
 けれど、拳には櫻の気持。そして、桜の行動がこめられている。左の拳。
 思い切り握り締めた後、ゆっくりと手を開いた。すると、その桜はだんだんと光り続けていた。
 惑わされず、ゆっくりと願いをこめていった。ドンドン光が増し、この暗闇を消し去るように。

 何かスッキリした。少し出来ただけでスッキリした。

 少し

 けれど、この少しは本当にでかいものだと思う。ほんの少し。ほんの少しが大きく変わる。何か今始めてわかったような気もする。

 少しが大きく変わるとき、櫻の性格も変わると思う。もっと、もっと大きくなると思う。だから、一歩一歩進まなければならんといけんことだ。
 誰も見ていないどこかの闇で、うずくまることはダメなことじゃない。
 ダメなことは、それを・・・うずくまることを、ズルズルと続けることがダメなことなんだ。
 といっても、それは誰かが言っていたことだとしても、なんだか自分で言っているように。誰かが教えてくれるってこともいい事かもしれない。
 今櫻を支えてくれる人は、まだ居ないとしても、いつかあの二人を信じれるときが来ることを、願っていたい。
 そのとき櫻は、嬉しかったあまり、数珠を握り締めた。

← 前の回  次の回 → ■ 目次

Novel Editor by BS CGI Rental
Novel Collections