■ トップページ  ■ 目次  ■ 一覧 

桜舞い落ちる『葉桜』 作者:米沢涼

第2回   飛人
 今向かっている先「フォーサフトォーム」に向かう、櫻と夜須。この二人は龍崎一族。

「つかれた〜」
 
 もうすでに都会らしい場所から離れ、田舎の中らしい。ここは、普通の人も農作業で、よく人とすれ違う。少しだけそれで安心する。
 たまに農作業をしている人のお手伝いをすると、食べ物を分けてくれたり、お金をくれたりだ。お金をくれるくらいだったら、物がほしいくらいだ。ただでさえお金は有り余っているが、店に入れないという悲しさだった。
 これまた農作業も楽しいものだった。
「ハイお疲れ様ほら。これもって行きなさい。ここら辺は、あまり変わった人が通らないからね。」
 渡されたものは、何かの数珠だった。
「これは・・?」
 何か不思議間を持っていた。それは、櫻が触ったときに、ピリッときたものだった。
「それはね、代々龍崎家に残されたものなんだって。それを持ってる人は、何かのご利益があるとか何とかって。わたしゃ龍崎家じゃないから、きっとご利益もくそも無いと思ってね」
 と、笑いながら言っていた。
 さっきピリッと来たものの意味がわかったような気がする。龍崎家の者だから、何かに反応したのだろうか。それとも、父の防御「壁斗(へきと)」に反応したのだろうか。
 もう一度その数珠を握り締めてみた。けれど、何も反応はなかった。けれど、何か力が沸いて出てくるのはわかった。
 握り締めるのをやめ、数珠をキチンと手首につけた。きつくもなく、ゆるくもない。
 何か身体にヒットしてて、チョッと気分が良かった。
「おばちゃんありがとう。これメッチャ嬉しいわ。大事にする」
 と、真剣な顔で言った。そしたら、にっこり笑ってくれた。
「さぁて。次行きますかな?」
 夜須が、槌に座ってたのから、ゆっくり立ち上がりながら言った。
「おばちゃん。またここに遊びに来てもいいかな?」
「あぁいつでもおいで。仕事がはかどるよ。今度は、もっとゆっくりお団子でも食べような」
「ありがとう」
 と、お礼を言って、その場を離れていった。
 一刻も早く、フォーサフトォームに向かわなければならない。食料も十分たまったから、何とかなりそうだった。
 向かうフォーサフトォームの場所は、もう確認済みで、いろいろと道はある。できるだけ、追っ手に追われるずに、早くそこに着きたいという気持が大きかった。

 人気のなさすぎる森に入っていた。
 この森を越えて、その向こうにある山を越えてと、かなり辛い旅になると思う。けれど、刻一刻と追っては来ているということは、夜須が言っていた。
 けれど、夜須の力を知らない櫻だった。
「人が来る」
 一言夜須がつぶやくと、櫻は戦闘態勢に入った。いつもこういうものだった。

   シュッ

 何かこの前を思い出させる。ナイフだった。
 木に刺さり、夜須はそのナイフを取った。櫻は桜の花びらを四方八方に察知できるよう飛ばし、どこにいるかを探す。
「いたっ」
 見つけると、すぐに桜で攻撃を開始する。けれど、それはまたもや交わされた。けれど、かすかにかすったらしい。前よりも、腕は上がった。夜須のおかげで、色々と特訓したのだ。
 後ろに回りこまれて、蹴りで相手の腹を思いっきり蹴った。すると、いいとこ入ったのか、かなり遠くまでぶっ飛んでいった。それを夜須は、爪で相手の背中を引っかいた。
 この前の特訓のときも、そんなことをしていた気がする。
 櫻は、相手の胸倉をつかんだ。
「お前・・・この前の」
 そう、この前帽子をかぶっているやつだった。
「お前龍崎一族なんだろ?」
「なんでそれを!」
「は?何でって、見ればわかる」
「わかった。こいつ半人前だな。自分の力は使えても、敵味方が見当つかないやつ」
 と、何かがわかった櫻は、思ったとおりのことを言った。
「く・・るしい」
「あ・・・」
 胸倉をつかんでいることを忘れていて、ゆっくりおろした。けれど、その手は放さなかった。
「お前名前は?」
 威嚇するかのように、櫻のほうを睨んできた。
「名乗れ」
 怒鳴りつけると、ビクッと震えた。
「りゅ・・龍崎芯(しん)」
「芯ね・・・わかった。で?何で俺らを攻撃してきた?」
「敵だと・・・思ったから」
「半人前が」
 と、かるく言ってやった。
「どこに向かうつもりだ?」
「フォーサフトォーム」
「行く先同じか」
「あぁ」
 返事を返されると、櫻は芯の腹を蹴り、思いっきりぶん投げて、木にぶつけた。強かったのか、気絶をしてしまったらしい。
「いこ」
「いいのか?」
「いいんだ」
 と、歩いていった。

「なぁ、お前の能力っていうのか?なんなんだ?」
 歩いているときに、不思議と聞いてみた。
「あれ?言ってなかったっけ?」
 櫻は、うんと頷いた。
「俺は獣の能力っていうのかな?獣を操ったり、身体の一部が獣になったりするんだ」
「へぇ〜便利だね」
「おまえは?お前のもまだ良くわかってない」
 チョッと考え込んだ。やってはいるけど、確かに説明などはしたことがなかった。
「俺は・・桜かな?」
「櫻だから?」
「たぶん」
 櫻は手を差し出して、その上で桜を遊ばせる。
「こういう風に遊ぶことも出来る。自由なんだ」
「へぇ〜」
 すごいなというように、頷いていた。
「それと・・・」
「まだあるの?」
「うん。けど、やっていくうちにわかると思うから」
 と、そこは逃げた。まだ信用になっていないこいつに、ペラペラ話すわけにはいかないのだ。

 暗くなっても、てくてくと歩いているうちに、ふと目の前にたった一つの明かりが見えた。
「なんだ?」
 こんなところになぜ?というような顔で、夜須は見ていた。ふと立ち止まる夜須。なぜ止まるのだろうかと、振り向くと、かなり驚いているような顔をしていた。櫻はゆっくり目線の向こうを見た。
 櫻と夜須は固まった。
 額からは冷や汗というのか、かなり汗が染み出てきている。
 そこから見たものとは・・・・
「え?飛んでる・・・」
 そう。人が飛んでいるのだ。空を円書くように、クルクル大きく回っていた。それは、感覚的に、龍崎一族だということは確かだった。
「なんだ・・?」
 櫻はきつい目つきでそっちを見ていた。
 ハッと何か思いついたように、手を叩いた。すると、自分の桜が櫻の周りを舞い、その桜は徐々に上がっていった。そして、結局のところは、クルクルまわっている人の所に行った。そして、その人を囲むように桜は動く。
 それに気付いたのか、その人は止まり、周りを見回していた。
 櫻たちに気付いたのか、ゆっくりとこっちに向かってきていた。
 地面に足が着くと、もっと近づいて来た。
「オマエも・・・龍崎一族か?」
 櫻は黙って頷いた。
 思ってたよりも、子供っぽい顔つきだが、身体はがっちりしていて、しかも背は櫻より高かった。
「よかったぁ〜仲間が全員死んじゃって」
 かなり安心したように、身体が崩れ落ちるかと思うと、急に櫻を抱きしめた。
「うわぁ・・」
 驚いた櫻は、チョッと後ろに一歩行ってしまった。
「君は・・・飛ぶ能力?」
 一旦抱きしめるのはやめて、櫻の肩をつかんだまま、ウンウンと頷いた。
「君たちは?」
「言うわけにはいかない」
 そう言って、手を振り払い、先に進んでいった。いつ追っ手が来るかはわからないからだ。
「そんな・・・なら一緒にいない?俺と居れば、きっと役に立つと思うけど」
 と、自身満々に言っていた。けれど、そんな自身いっぱいだからこそ、余計信用しにくい。けれど、こいつを利用する価値はあるだろう。
「お前・・名前は?」
「龍崎壱(いち)」
「そう」
 後ろを向き、夜須のほうに近づいていく。
「お前はどうしたい?」
「お前の好きにしてくれていい」
「そうか」
 すべて櫻に任せるというものだ。けれど、なぜこの男は、口出し一つしないのだろうかと、疑問に思っていた。
「なら、いちおな・・・」
「なに?いちおって・・・まぁ良いやじゃあヨロシク。あなたについていきます!で?なんて呼べばいい?」
「櫻」
「俺は夜須でいいよ」
「わかった。俺のことは好きに呼んでね☆」
 気軽に言うが、本当に信じていいものだろうか。けれど、必ず信じない。
そう。櫻は、信じることが命を捨てるものだという考えだ。昔にいろいろあったことからして、一番嫌いなのが信じることだった。
 
     信じる=死ぬ
 
 という考え。誰もしないだろうけれど、こういう世界だからこそ。こういう時代だからこそ信じるということは、すべてにおいて終わりだと、櫻は思うようになってしまっていた。だが、これは父と母の受け売りだが。
「なぁ、櫻。何でお前はそんなに仲間を作りたくないというんだ?」
 急に夜須からの質問だった。それと同時に、貰った数珠を握り締めた。
 今の話をするにも、何かとあれだからか、チョッと考えて言った。
「単に邪魔なだけだよ」
 そう言って、すぐにそっぽを向き、先に進む。
 顔が何かきつくなったが、そんなこと櫻は気にしなかった。
 それに疑問を持った夜須。けれど、置いていかれるかと、急いで付いていった。

← 前の回  次の回 → ■ 目次

Novel Editor by BS CGI Rental
Novel Collections