今向かっている先「フォーサフトォーム」に向かう、櫻と夜須。この二人は龍崎一族。
「つかれた〜」 もうすでに都会らしい場所から離れ、田舎の中らしい。ここは、普通の人も農作業で、よく人とすれ違う。少しだけそれで安心する。 たまに農作業をしている人のお手伝いをすると、食べ物を分けてくれたり、お金をくれたりだ。お金をくれるくらいだったら、物がほしいくらいだ。ただでさえお金は有り余っているが、店に入れないという悲しさだった。 これまた農作業も楽しいものだった。 「ハイお疲れ様ほら。これもって行きなさい。ここら辺は、あまり変わった人が通らないからね。」 渡されたものは、何かの数珠だった。 「これは・・?」 何か不思議間を持っていた。それは、櫻が触ったときに、ピリッときたものだった。 「それはね、代々龍崎家に残されたものなんだって。それを持ってる人は、何かのご利益があるとか何とかって。わたしゃ龍崎家じゃないから、きっとご利益もくそも無いと思ってね」 と、笑いながら言っていた。 さっきピリッと来たものの意味がわかったような気がする。龍崎家の者だから、何かに反応したのだろうか。それとも、父の防御「壁斗(へきと)」に反応したのだろうか。 もう一度その数珠を握り締めてみた。けれど、何も反応はなかった。けれど、何か力が沸いて出てくるのはわかった。 握り締めるのをやめ、数珠をキチンと手首につけた。きつくもなく、ゆるくもない。 何か身体にヒットしてて、チョッと気分が良かった。 「おばちゃんありがとう。これメッチャ嬉しいわ。大事にする」 と、真剣な顔で言った。そしたら、にっこり笑ってくれた。 「さぁて。次行きますかな?」 夜須が、槌に座ってたのから、ゆっくり立ち上がりながら言った。 「おばちゃん。またここに遊びに来てもいいかな?」 「あぁいつでもおいで。仕事がはかどるよ。今度は、もっとゆっくりお団子でも食べような」 「ありがとう」 と、お礼を言って、その場を離れていった。 一刻も早く、フォーサフトォームに向かわなければならない。食料も十分たまったから、何とかなりそうだった。 向かうフォーサフトォームの場所は、もう確認済みで、いろいろと道はある。できるだけ、追っ手に追われるずに、早くそこに着きたいという気持が大きかった。
人気のなさすぎる森に入っていた。 この森を越えて、その向こうにある山を越えてと、かなり辛い旅になると思う。けれど、刻一刻と追っては来ているということは、夜須が言っていた。 けれど、夜須の力を知らない櫻だった。 「人が来る」 一言夜須がつぶやくと、櫻は戦闘態勢に入った。いつもこういうものだった。
シュッ
何かこの前を思い出させる。ナイフだった。 木に刺さり、夜須はそのナイフを取った。櫻は桜の花びらを四方八方に察知できるよう飛ばし、どこにいるかを探す。 「いたっ」 見つけると、すぐに桜で攻撃を開始する。けれど、それはまたもや交わされた。けれど、かすかにかすったらしい。前よりも、腕は上がった。夜須のおかげで、色々と特訓したのだ。 後ろに回りこまれて、蹴りで相手の腹を思いっきり蹴った。すると、いいとこ入ったのか、かなり遠くまでぶっ飛んでいった。それを夜須は、爪で相手の背中を引っかいた。 この前の特訓のときも、そんなことをしていた気がする。 櫻は、相手の胸倉をつかんだ。 「お前・・・この前の」 そう、この前帽子をかぶっているやつだった。 「お前龍崎一族なんだろ?」 「なんでそれを!」 「は?何でって、見ればわかる」 「わかった。こいつ半人前だな。自分の力は使えても、敵味方が見当つかないやつ」 と、何かがわかった櫻は、思ったとおりのことを言った。 「く・・るしい」 「あ・・・」 胸倉をつかんでいることを忘れていて、ゆっくりおろした。けれど、その手は放さなかった。 「お前名前は?」 威嚇するかのように、櫻のほうを睨んできた。 「名乗れ」 怒鳴りつけると、ビクッと震えた。 「りゅ・・龍崎芯(しん)」 「芯ね・・・わかった。で?何で俺らを攻撃してきた?」 「敵だと・・・思ったから」 「半人前が」 と、かるく言ってやった。 「どこに向かうつもりだ?」 「フォーサフトォーム」 「行く先同じか」 「あぁ」 返事を返されると、櫻は芯の腹を蹴り、思いっきりぶん投げて、木にぶつけた。強かったのか、気絶をしてしまったらしい。 「いこ」 「いいのか?」 「いいんだ」 と、歩いていった。
「なぁ、お前の能力っていうのか?なんなんだ?」 歩いているときに、不思議と聞いてみた。 「あれ?言ってなかったっけ?」 櫻は、うんと頷いた。 「俺は獣の能力っていうのかな?獣を操ったり、身体の一部が獣になったりするんだ」 「へぇ〜便利だね」 「おまえは?お前のもまだ良くわかってない」 チョッと考え込んだ。やってはいるけど、確かに説明などはしたことがなかった。 「俺は・・桜かな?」 「櫻だから?」 「たぶん」 櫻は手を差し出して、その上で桜を遊ばせる。 「こういう風に遊ぶことも出来る。自由なんだ」 「へぇ〜」 すごいなというように、頷いていた。 「それと・・・」 「まだあるの?」 「うん。けど、やっていくうちにわかると思うから」 と、そこは逃げた。まだ信用になっていないこいつに、ペラペラ話すわけにはいかないのだ。
暗くなっても、てくてくと歩いているうちに、ふと目の前にたった一つの明かりが見えた。 「なんだ?」 こんなところになぜ?というような顔で、夜須は見ていた。ふと立ち止まる夜須。なぜ止まるのだろうかと、振り向くと、かなり驚いているような顔をしていた。櫻はゆっくり目線の向こうを見た。 櫻と夜須は固まった。 額からは冷や汗というのか、かなり汗が染み出てきている。 そこから見たものとは・・・・ 「え?飛んでる・・・」 そう。人が飛んでいるのだ。空を円書くように、クルクル大きく回っていた。それは、感覚的に、龍崎一族だということは確かだった。 「なんだ・・?」 櫻はきつい目つきでそっちを見ていた。 ハッと何か思いついたように、手を叩いた。すると、自分の桜が櫻の周りを舞い、その桜は徐々に上がっていった。そして、結局のところは、クルクルまわっている人の所に行った。そして、その人を囲むように桜は動く。 それに気付いたのか、その人は止まり、周りを見回していた。 櫻たちに気付いたのか、ゆっくりとこっちに向かってきていた。 地面に足が着くと、もっと近づいて来た。 「オマエも・・・龍崎一族か?」 櫻は黙って頷いた。 思ってたよりも、子供っぽい顔つきだが、身体はがっちりしていて、しかも背は櫻より高かった。 「よかったぁ〜仲間が全員死んじゃって」 かなり安心したように、身体が崩れ落ちるかと思うと、急に櫻を抱きしめた。 「うわぁ・・」 驚いた櫻は、チョッと後ろに一歩行ってしまった。 「君は・・・飛ぶ能力?」 一旦抱きしめるのはやめて、櫻の肩をつかんだまま、ウンウンと頷いた。 「君たちは?」 「言うわけにはいかない」 そう言って、手を振り払い、先に進んでいった。いつ追っ手が来るかはわからないからだ。 「そんな・・・なら一緒にいない?俺と居れば、きっと役に立つと思うけど」 と、自身満々に言っていた。けれど、そんな自身いっぱいだからこそ、余計信用しにくい。けれど、こいつを利用する価値はあるだろう。 「お前・・名前は?」 「龍崎壱(いち)」 「そう」 後ろを向き、夜須のほうに近づいていく。 「お前はどうしたい?」 「お前の好きにしてくれていい」 「そうか」 すべて櫻に任せるというものだ。けれど、なぜこの男は、口出し一つしないのだろうかと、疑問に思っていた。 「なら、いちおな・・・」 「なに?いちおって・・・まぁ良いやじゃあヨロシク。あなたについていきます!で?なんて呼べばいい?」 「櫻」 「俺は夜須でいいよ」 「わかった。俺のことは好きに呼んでね☆」 気軽に言うが、本当に信じていいものだろうか。けれど、必ず信じない。 そう。櫻は、信じることが命を捨てるものだという考えだ。昔にいろいろあったことからして、一番嫌いなのが信じることだった。 信じる=死ぬ という考え。誰もしないだろうけれど、こういう世界だからこそ。こういう時代だからこそ信じるということは、すべてにおいて終わりだと、櫻は思うようになってしまっていた。だが、これは父と母の受け売りだが。 「なぁ、櫻。何でお前はそんなに仲間を作りたくないというんだ?」 急に夜須からの質問だった。それと同時に、貰った数珠を握り締めた。 今の話をするにも、何かとあれだからか、チョッと考えて言った。 「単に邪魔なだけだよ」 そう言って、すぐにそっぽを向き、先に進む。 顔が何かきつくなったが、そんなこと櫻は気にしなかった。 それに疑問を持った夜須。けれど、置いていかれるかと、急いで付いていった。
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