■ トップページ  ■ 目次  ■ 一覧 

桜舞い落ちる『葉桜』 作者:米沢涼

最終回   夜須
 あれから数年たち、櫻はもう立派な大人と言っていいのだろうか、十八歳になった。
 きちんとした仕事が出来るようになり、いつの間にやら村人たちが、櫻のために大きなものを作りましたという連絡が入り、櫻は言われた場所に行った。
 そこは、大きな草原の中だった。

 呆然と立つしかなかった。
 櫻の目からは大粒の涙が出てきた。
「櫻様!どうなされました?」
「どうもこうも・・・・これが・・なけないで居られるか」
 優しいこの村人たちのおかげで、櫻の表情がコロコロ変わるようにもなった。
「この・・大きな桜を・・」
 そう。櫻の目の前には、多くくそだった桜の木だった。
「ここの王。我々を守ってくれる王。櫻様のため作ってみました・・・」
「ありがとう・・ありがとう皆」
「王様・・そんな泣かなくても」
 櫻はしゃがみこみ、目をこすりにこすって、涙をふき取った。
「こんな・・いいものを・・ありがとう!」
「優しく慣れたのは、櫻王だったからですよ」
 村人にはこんなにも優しくされていた。
 そのおかげで、無理に悩むことがかなりなくなったのだ。


 夜。
 寝る前に窓を開けた。そして、ベランダに出た。すると、なんと嬉しいことか。あの 大きな桜が丁度見えるのだ。
 それを見て思い出す。
 夜須の顔。
 どうしても夜須は櫻にとっての人となったのだ。

 夜須
 帰ってきてくれ。何で・・お前は俺の見方についてくれた・・俺は・・まだ本心を言っていないのに

「夜須〜〜〜〜〜〜!」
 ベランダから思わず怒鳴ってしまった。
「うるっさいなぁ〜そんな怒鳴らなくても聞こえてるよ」
 櫻はフッとした瞬間に、後ろに振り向いた。
 夜須がいたのだ。
「何で・・・ここに?」
「こいつを脅した。」
 指を刺す向こうには、あの高かった背が、想いっきり夜須の脇に挟まっていた。その人物とは、櫻の能力(チカラ)制御してくれていた、ヒューセイだった。
「こいつ・・乱暴すぎ・・」
 かなり苦しそうだ。
 そんなの無視に、櫻は夜須に飛びついた。
「夜須!ありがとう。夜須が・・夜須がいてくれて・・こんなに嬉しい・・もう・・・」
「日本語しゃべれ。けど、俺も久し振りに会えてよかったよ」
 なんだか側から見たら、おかしな人たちだったが、それもそれで良いのかもしれない。


 夜須・・ありがとう。夜須のおかげで闇がもう怖くない

 来てくれて本当に嬉しかった。
 仲間ってこんなにいいものだとは・・本当に夜須のおかげでわかった。
 俺のすべては夜須を中心に回っていたのかもしれない
 ありがとう
 やっと入れる日が来た

 「夜須。最高の仲間だ」

← 前の回  ■ 目次

Novel Editor by BS CGI Rental
Novel Collections