三人は順調に進んでいけた。最終目的の海に到着したとき、三人の顔は引き締まってしまっていた。かなり緊張した感じだった。 ここに来れば、フォーサフトォームにきたようなもの。 「なぁ、ここからはどうするんだ?」 「きな」 櫻が先頭になり、一歩歩き砂浜に足をつけたときだった。 バンッ
ピストルが放された音がした。櫻は振り向いた。すると、そこにはかなりの人数の追っ手が来ていた。 「まじかよ・・・」 漆が驚いていた。 「二人とも・・・怪我は?」 「まだないよ」 夜須と漆は息を合わせていった。 真剣な目つきになる夜須と漆を見たのは、初めてでチョット怖かった。 「観念しろ」 追っ手のやつらはそう言ってきた。けれど、何を観念すれば良いのかがわからなかった。 「お前らの向っている先はわからないが、お前らを放って置くわけには行かない」 銃を構えられながら言われる櫻たち。どうすれば良いのかはわからなかったが、無理して動かないほうが言いというのだけは確かだった。
近くに古い木で造られた、海の家らしきものが櫻の目に入った。 「下手に動くと・・やれ」 今まで話していたやつの隣にいた、少々ガタイのでかいやつが、空気を横に切るように腕を振った。するとその海の家らしきものは、炎にまかれも燃えてしまった。 「その力・・龍崎」 「そうだ・・奪った力だ。どうだ?お前らの力も、こうやって使われる破目になるんだ」 「世界を作るためにか?自分のものにしたいんだろ?世界をだからこんなことを・・」
バンッ
櫻が怒鳴っていたら、どこからかピストルの弾が飛んできた。頬をかすったくらいで、少々しか血は出てこなかった。 「だからなんだ・・・あまり今のうちに反抗するのは止めとかないか・・・死ぬぞ」 威張った男が言ってきた。 「何を言っても無駄なようだな」 櫻が挑発に乗るように言ってやった。けれど、実際は挑発になんか乗ってやって居ない。なんだか、その気にさせてやろうかと頭にきているだけだった。 「櫻・・どうすればいい?」 ボソッと夜須達が聞いてきた。 「もし向こうが本気でやりあってきたら殺せ。容赦なく。息の根を止めるんだ」 「了解」 「どうするんだ?やりあうか?」 「こっちから向うつもりは無い。もしそちらが遣り合おうとでも言うならばやってやってもいい。死んでも良いならな」 「確かお前は・・櫻だっけか?名前」 「さぁ?」 「その三人では一番年下らしいな・・大丈夫なのか?お前ら二人はそいつに任せてしまって命を」 「俺たちはこの人に従っていくと決めた」 二人やはり息が合った。そう言ってくれた櫻は、チョット内心照れている。 「それに、俺も居るよ」 どこからか声がした。 櫻は探さなかったが、追っ手のやつらはキョロキョロ見回した。 シュッ
櫻たちの目の前に背を向け、追っ手のほうを向いているやつこいつは・・確か芯とか言うやつだった。 「お前・・」 「敵じゃないから・・あなたはだから・・手を貸すくらいは出来ると思うんで。あなたの合図で戦いに行きます」 「わかった。」 体格を見てわかった。 芯はこの前会ったときよりも、成長したと。 「オヤオヤ・・どこに隠していたのかね?そんな仲間を・・・一人二人増えたところで大差は無い!」 「うるっせぇな・・・そんな大声出さなくても聞こえてるっつうの」 指で耳栓をしてやってきたのは、いつしか倒したと思っていた壱だった。 「壱・・・・お前・・・どうやって」 「悪いけど、俺もあなたさまのお役に立てば・・・」 そう言って、櫻に背を向けてたった。 「どうやってそんなに従えたかは知らんがな、お前ら殺してやる!行け!野郎度も」 「そういうお前らはそれをどう従えたのやら・・・気が済むままに!」 指を鳴らした櫻。すると、周りの夜須・芯・壱・漆は気が済むままにという命令で動く。 櫻は基本的に、遠距離タイプなのだ。だからあんまり近距離船にならないよう、その場にとりあえず待機した。けれど、敵は漆たちに止められていて、こちらにはなかなかきそうも無い。
ならばこっちから仕掛けてやる
出来るだけ最後尾のやつらを狙う。 櫻は両手をサイドに広げた。
「桜舞い散り・・・・・桜吹雪き・・・・桜占用桜欄鬼!」
呪文と唱えるように言った。すると、桜が櫻を覆い、角度をつけて飛んでいった。 「ハッ何をしたどこに飛ばした!狙いが外れて残念・・・・ 怒鳴りかけていたやつ・・・そいつは口から血を流し、前にばたりと倒れてしまった。
この技を・・・使ってしまう時が来るのは、薄々気付いてはいた
悔やむ。かなり悔やんでいた。 力を制御できなくなる可能性もあるのだ。 「俺は運がいいぞ!」 漆が叫んだ。何かに気付いたらしい。 「俺の後ろをよぉくごらんよ!」 漆がそう怒鳴ると、漆は数歩後ろに下がった。 「龍崎一族さんたちよ!出来るだけ砂浜のほうによってくれないか?出来るだけ俺に近く」 そういうと、漆は構えたまま櫻の隣に来て、櫻を引張ってドンドン海に近寄らせた。 「何を?」 「いいから見てろって」 言われたとおり龍崎一族は来た。何かが起こると察した追っ手立ちは、一歩ずつ森のほうに近づいていった。 「そっちは地獄!地獄舞い戻れ!津波」 そう怒鳴りつけると、後ろの海が、かなりの壁を作っていた。そして、その壁が倒れた。 「櫻さん悪いけど俺らの周りに防御を入れてくれないか?」 「OK」 そういうと、櫻は数珠を手首から取りその数珠をまるくして、自分の目の前にした。 「壁斗!」 すると、周りはその数珠のように丸い壁が出来た。そして、海の壁はそれを突き抜ける。 追っ手共は、必死に森のほうにと走って行った。 「もう遅い!」 漆は「気が済むままに」の命令を良くわかっているらしく、チョット櫻にとって嬉しい存在の人でもあった。
砂浜にかなりの水分があるが、そこに座った龍崎一族の人たち。 「どうなったのだろうか・・・」 呆然となっていた。どうなっているのかもわからない。ただ、津波の波が海に引き戻ってきている。 「とりあえず、今のうちってことは確からしいな」 櫻は立ち上がり、早歩きで歩いて行った。 「よし」 皆も立ち上がり、急いで付いていった。
「ほぉ〜逃げるのか?」
櫻の足は止まった。 聞き覚えのある声だった。
「このまま逃げて良いの?あの人たちはまだどこかに生きている」
ゆっくりと振り向く櫻。 「櫻?」 夜須は不思議な櫻に気付いた。何も聞こえていないのに、夜須は櫻のほうをジッと見る。 「お前らは先言ってて」 夜須が命令した。 櫻の隣に立った。 そして、耳元でぼそっとつぶやいた。 「どうかした?」 「だ・・・て聞こえない?この・・・ひとたちのこえ」 ゆっくり指を刺す向こうに、櫻は母と父が見えていたのだ。 「どこだ?」 だが、夜須達には見えていなかった。 「夜須・・・行こうか・・・」 もう・・櫻にも見えていなかったのだ。 「あぁ・・・」
駆け足で走って行く。 「どこだ?」 もっと奥。
岩の多いところをおくに進んで行くと、獣道がありそしてまた岩になり、そしたら洞窟が何個もあった。 「ど・・れだ?」 櫻が誰よりも先に一歩を出した。 すると、上から何か落ちてきた。 「誰だ!」 かなり警戒する櫻たち。 落ちてきたのは、二十五歳辺りの人だと思えるぐらいの身長と、体つきだった。なんだかがっしりしているが、筋肉質の人でもなさそうだ。 「お前らにここを通すわけには行かない。通るなら・・この中の誰か一人に絞るんだ」 「ひと・・・り?」 「あぁ。ここは元々一人しか行けないのだが。けれど・・俺が見る限り。その一人は・・・お前だ」 そういわれ、指を刺されたのは櫻だった。 「俺・・?」 「あぁ。なぜお前はここまでの道を知っている?」 「・・・わからない」 「だろ?ただ頭にインプットされているだけだからな。もちろんここに来た事はないだろう?お前だって」 櫻は、少し考えながらうんと頷いた。 「もし・・他のやつらが通りたければ・・その櫻を殺すまでだ」 「俺の名前を!」 「当たり前だ。俺はお前の誄だからな」 「誄って?」 その男は、ゆっくりとため息を出しながら、なんだか呆れているみたいだ。 「そんなことも知らないのか・・・悪く言えばお前の下僕?俺はお前に使われているものだ」 「俺は誰も使ってなど居ない・・・」 「本当か?その・・・数珠もか」 櫻の目線は数珠に向った。手を伸ばし数珠を太陽に輝かせる。 「お前の能力(ちから)を制御している。お前は能力(ちから)がありすぎる」 「夜須・・漆・・・壱・・・芯。俺・・どうすれば良いかな?」 「このままのんきにしていると、追っ手が探しに来るぞ。まぁ、ここはそう見つからんが・・時間の問題だぞ」 「けど・・・ここは龍崎一族以外・・見えないんじゃ・・」 「これは見えている。だが、フォーサフトォームが見えていないだけだ。扉も開かない。けれど、その中の誰かが死んで、刺青を取られたりでもしてみろ・・身体に合わなかったらまだ良いけど、もしあってしまって取られたら・・この扉はその人の手で開く。」 「なら俺らは・・櫻を無事フォーサフトォームに行けれるように、ここで守備する」 夜須は力強く言った。 漆たちは、うんとゆっくり頷いた。 最初は壱や、芯は気に食わなかった。その考えは、すぐに消されてしまい、守備に向くことにした。
深いお別れをした。運がよければまた会える。というか、全員をこっちに来れるようになると、その男は言っていた。 その男も、一旦守備にまわることにした。けれど、その男確か名前は、ヒューセイは櫻から離れると、櫻を制御できなくなる。 「もう制御する必要はないだろう」 そう言っていた。けれど、本当に信じて良いのだろうか。不安になりながらも、真っ暗な道を走っていった。 道もインプットされていた。 ほとんど迷路みたいになっていたが、身体が勝手に曲がる。曲がるだけ。走っているのは櫻自身。 「風沙・・・」 母の名。そのおかげで今走っていられる。今走らないでいつ走る。 なんとなく櫻だってことは、この時わかった。もし、母が死んでいなかったら母なのだろうか。 昔に戻りたいなど、今更は考えていない。けれど、何かを戻してみたい気分だ。
暗闇におびえてる暇ではないんだ!
怖い
けど走らなければ
皆のためだ
克服せねば
心に強く突き求めていた。すると、目の前に出口なのか、明るい光が入っていた。 速度が上がった。 その光を越えた。
ガシャン
ビクリと身体が動き、後ろを振り向いた。 あの暗闇が無かったかのように、全面が真っ白だった。 青いものがふわふわと浮いていた。いや・・・白いのが浮いていたのだ。 「フォーサ・・フトォーム・・・ここ・・が?」 もう足はつかれきっていて、動かなかった。ということは、ここが最終地点だということなのだろうか。ヘタリと座りきってしまって居る櫻。 息もままならなかった。 櫻は踏ん張ってたった一つの桜を出した。力を込め舐めた。 整わなかった息も、ゆっくりと整ってきて、足の疲れも大体癒された。 ゆっくりと立ち上がり、深いため息をついた。 ゆっくり・・ゆっくりと一歩一歩歩いて行く。すると、したにはきれいな町並み。それが海に囲まれている小さな建物たちがあった。その空に立っているようなものだった。 「きれい・・」 そうブツリと言った。 「ようこそいらっしゃいました・・・」 どこからか聞こえてくる、きれいな女の人の声。 「誰ですか?」 「私はフォーサ・アンリュー。フォーサフトォームを守っているものです」 「どうも・・僕はこれからどうすれば良いのですか?」 「まぁまぁ、とりあえず座ってください。」 そういわれた瞬間、どこからか椅子があった。さっきまでなかったはずなのに。 文句を言わず座った。 「あなたはこれから、あの星に向ってもらいます。あれは春。あの星には名前もなく、まだ未発達です。王も居ない。気ままな生活をしています。」 「僕に・・王になれと?あの星の・・」 「そうです。よく今の説明でお解かりになっていただけましたね。でわっ。あの星に名前をつけてやってください」 「星・・ヨウオウ・・葉っぱの桜で葉桜」 「いい名前ですね。サクラ」 そういわれると、周りが光に覆われた。
一体これから・・・どのような『葉桜』が作られることやら。 楽しみにしてますよ・・サクラ・・周りに惑わされないサクラ。櫻。桜。風に舞い落ちる桜は誰の邪魔も無く、行けますでしょうか。
頼みます 櫻 そして・・・風沙&壁斗 ありがとう三人とも
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