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春夏秋冬 作者:米沢涼

第2回   夢の人物
 あれからなぜか仲良くなった夏。まだ、自分の親のことは、言っていない。言ったほうが良いのだろうかと、何回も悩んだりしていた。けれど、言わないほうが身のため、自分のためになるだろうと思って、言わないことにしておいた。
 なんだか、海に行って、ボーっとしたりしたときもあった。けれど、思ってみれば、夏休みももうそろそろ終わりに近づいてきているころだった。
 今は一人で部屋にこもり、夏休みのたまった宿題を、のんびり茶菓子を食べながらやっていた。
 こんなに心が安定してきて、なんだか安心して自分でも、うれしくなってきているころだった。
 あの後惟はというと、仕事仕事で、移住してしまっていた。それで、何かと重いものを捨てた気分になったのだ。
 ズズズッと吸うお茶が、静かな場所での出来事過ぎて、悲しくなってきてしまう。
 あと何日かで学校が来て、そしてまた、つまらない毎日を過ごさなければならないのかと思うと、気が遠くなってきていた。
 ピンポーン
 そのとき、一つの呼び鈴がなり、秋はのんびりドアを開けた。
「やっほ」
 元気な夏だ。なんだか、こうしてみると、秋より少し背が高い。秋の身長が百六十だった大体だが。
「秋?どうしたの?」
 ボケッと夏のほうを見ていたからか、なんだかへんな人に見られたらしい。
「あ。いや。なんでもない。よく来たね。上がってきなよ」
 急いで中に入れた。リビングの中は、当たり前のように、特にこれといったものが置かれていない。それに、台所だって、なかなか使わないから、ある意味も無いような気がする。
「なんか、スッキリした感じの家なんだね」
「うん。親なんていっ・・・あんまり帰ってこないし」
 ヤバイ。本当のことを言ってしまうところだった。危ない危ないと、心を落ち着かせて、お茶をテーブルに出した。
「ねぇ、学校って、どこの学校行ってるの?夏休み明けに俺転校するんだ。松前中学に」
「へぇ〜同じところだね」
「そうなん?」
「あぁ。俺も松前だよ」
 と,お茶を飲みながら、言うと、喜んだようににっこり笑っていた。
「じゃあ、学校でもよろしくね」
 それだけいいに来たかのように、お茶を飲みほすと、のんびり帰っていった。それから秋は宿題を終わらせた。

 何日か経ち、夏休みが終わって、始業式のため、学校に向かった秋。
 体育館でいつも通りと思われていた始業式が始まる。教室に向かい、のんびりしていると、先生がやってきた。
 少し話すと、転校生がどうのこうのという話になり、入ってきたのが、やっぱり夏だった。
 さすがに同じクラスになれるとは思っていなかった。
 その日は午前授業で終わり、帰るとき、一緒に帰った。
「良かった。秋と同じクラスになれて」
「あぁ。俺もよかった。暇な学校が、楽しくなりそうで」
 にっこり笑って放す二人、本当に良かったのかとこっちにまで伝わってきてしまう。
「じゃ。おれここだから」
 そう言って、指を刺した家は、二階建ての結構高そうな(お金が)家だった。夏が家に入るのを見届け、秋は家に帰っていった。だが、途中でコンビニにより、軽くオニギリを買っていった。そして、家に帰ってオニギリを食べた。なんだか、あまりおいしくなくてがっかり。
 そして、目が動いた。その先は電話。また昔のように、電話を待ち、そしてしょぼくれる毎日を住みそうだった。けれど、今日から秋は、絶対にそんなことは無いのだ。なぜなら、仲間といえるのか、夏がいるから。

 それから何日も過ぎ、夏と秋はクラスの人気者だ。昔から秋は隠れ人気者だったのだが、その時はあまり口数が多かったわけではないのだ。だからか、周りからは暗い人間と見られていたのかもしれない。
 けれど、今では夏と並ぶとかなりの目がこっちに向いてきて、もちろん一人でも歩きにくい。
 今はなんだか、明るい性格になってきたと、コソコソ話を良く聞く。それからというもの、人と話すことが、楽しくなったり、面白くなったりで。
 昼休み。屋上で弁当を食べていた。
「なんか、最近こわいな。人の目が」
「だって、夏はカッコイイもん。背が高いし。」
「それ言うんだったら、秋のほうが格好良いし、かわいい:」
「カワイイは余計」
「そうか?」
 といって、笑いあうのが毎日だった。けれど、なんだか、暇な毎日。夏と同じクラスだから、少しは楽しいかと思っていたが、何かが足りない気がしてきた。

 そんなことを行っている間に、もう秋になっていた。葉は落ちかけていてなんだか、その落ち葉かきれいなのだ。
「もうこんなじきか。君の時期だね」
「君の時期はもう過ぎた?」
「もう過ぎたよ。夏なんて。けど、今年はあまり暑くなかったね」
「その代り冬寒かったりして」
 と、クスクス笑っていた。
「あ。落ち葉が・・」
「ついた?取って」
 と、夏は姿勢を低くした。頭にくっついた落ち葉は、丁度赤く燃えている色だった。それをそっと取る秋は、見方を受け止めてあげた気分になる。
「取れたよ」
「ありがと」
 とにっこり笑ってくれた。
 もうそろそろ、親がいないってことを知ってくれても良いのかな?なんて思ってしまったりもする。けれど、本当にもうそろそろいいかもしれない。
「ねぇ、俺ね。言ってなかったけど、小さい頃の今頃に・・・両親死んじゃったんだ」
「え?」
 空を見て、のんびり話す秋に対して、かなり驚いている夏。今までそんな話をしたことが無かったから、余計びっくりしているのかもしれない。
「いままでそんなはなし・・・」
「困ってたんだよ。話せるタイミングをずらしちゃいけないって。けど、丁度今日、両親の死んだひだから。」
 深刻な話は意外と苦手な秋は、なにかおもしろい話題は無いかとか考えた。けれど、なかなかいいものは思いつかないものだ。こういうときに限って、どんな話が最適なのかもわからない。
「だからなんだ・・病院でのことば」
「あぁ。覚えてたんだ」
「うん。なんか、かなり印象的なことばだったからね」
 印象的なことば。いろいろ話して今は、この話をして。なんだか、昔の自分が馬鹿みたいに思ってきたりもしてくる。
 小さい頃に亡くしたせいか、無口だったからあまり、クラスのことにも執着が無かった。けれど、今は夏がいる。それだけを支えに生きているみたいだ。
 またもやしんみりと・・どうしようか考えていたけれど。もういいやと投げ出しだ。

 あれから家に帰り、屋根に上って空を眺めていた。けれど、何かやっぱり秋といえば、季節で2に悲しい季節だなぁ〜と思っていながら、いつの間にか寝ていた。
 気付いてみればいつの間にか真っ暗な空を見ているだけだったのだ。身体をムクッと起こし、眠たい目をこすってみた。すると、一気にあくびが出てだんだん眠たくなってきた。部屋に戻り、風呂に入ってそのまま布団にもぐりこむと、五秒で夢の中。
 その日の夢
 真っ暗な世界に閉じこまれた秋。秋は座っていた。その身体を起こし、思いっきり伸びをして、回りをキョロキョロ見回した。目県にシワを寄せてじっくり見ても、何も見えなかった。あきらめて、回りをまた見回した。
 けれど、何もない。すると、急に目の前に現れたたった一つの明かり。そこに行こうとすると、その光の中に、いきなり見知らぬ人が居た。びっくりして二・三歩戻った。
 そこにいた人は、髪が腰くらいにあるきれいな髪で、しかもその髪は真っ白できれいだ。
「ねぇ」
 何回も声をかけた。けれど、目線がこちらに来なかった。近づこうとすると、向こうの足が動き、向こうに向かってしまった。置いて行かれないように、急いで付いていくけれど、離れるばかりだ。
 はっと気付いてみれば、天井だった。もうすでに朝で、小鳥が鳴っていた。身体をムクッと起こし、カーテンをザッと開けた。すると、まぶしい太陽が入ってきた。時計を見てみると、もうすでに九時を回っていた。
 思いっきり遅刻だ。学校を遅刻することは、めったに無かったのだが、しちゃったものは仕方ないでしょうということで、そのままカーテンをも一度閉め、二度寝をした。疲れていたからか、すぐに寝てしまった。
 また目が覚めたのは、丁度お昼0時になっていた。なんだかおなかが減ってきたということで、冷蔵庫から何かを取り出した。すると、なんだかわけのわからないトマトというものが出てきてしまったではないか。
 なぜ嫌いな食べ物が、自分の家の冷蔵庫にあるのかも不思議だった。も一度冷蔵庫を覗いてみると、後残ってるのは、牛乳と苺があった。そういえば、その苺は、隣の家の人が、おすそ分けをしてくれたものだった。たまにそうやって、おすそ分けしてもらったりもする。
 ボケーッと苺を食べながら、テクテク家の中を歩いて見た。一人だから余計なのか、この二階建ての家が、一人にしてはでかいとまたもや実感。
 なんとなくおなかがいっぱいになってきたところで、あまった苺は冷蔵庫にしまって、牛乳を飲み、また部屋に戻った。やることが無いので、勉強をのほほんとしていた。

 次の日そして次の日と、日にちは止まるのを知らないで進んでいった。
 あの後、あの夢を見ることは無くなったが、かなり気になる夢だから、忘れることは無かった。
 そして、季節が変わり、白いものが落ちてくる季節。その白いものは、冷たくて息までもが白くなり、ふわふわ落ちるときがある。天候が悪ければ、前も見えなくなり、学校が臨時休業となるときもある。
 白いものを見ると、あの夢を思い出す。その人は、本当に髪の色がきれいなくらい白かった。
 暖かいコートを着て、カバンを持っていつも通り学校に向かった。なんだか、また新たな問題を抱えて出たくらい、重く感じる身体がなんだか、むかついてきていた。そのとき、ふと思い出したまたあの夢。何でか引きずっているみたいだ。
 学校に着き、席に座り大きなため息が出る。
「どうしたん?」
 心配してきてくれたのは夏。悲しい顔で秋の顔を覗きこんだ。
「いや、なんか重いものが開放された気分だけど、身体がやっぱりだるい・・」
「失礼・・・」
 そう言って、夏は秋の前髪を上げ、おでこに手を当てた。すると、夏の表情はかたまり、軽くデコピンされた。
「痛い・・なんで?」
「ほらたって!」
 怒っているように、怒鳴りつけられた。そして、秋の手を引張っていく。階段を下り、どこへ行くのだろうか。
「夏?どこ行く気?」
「いいから」
 そう言って、着いた場所は保健室。戸を軽々と開け、秋を中に入れていった。
「先生・・ここに病人がいます」
 といって、ベッドに座らせ、体温計をだして脇に刺した。
 暫くすると、ピピピピッとかわいい音が鳴り、取り出してみると、夏はまた固まった。
「38度五分・・・」
 ボソッと言った夏の言葉に、これまたおどろき。そして、結局ベッドに寝ている結末に。

 何時間目かわからないが、保健室の戸が開いた。その音で、秋は目を覚ました。保険の先生はいなく、入ってきたのは、髪が長く真っ白くきれいな男の人だ。一瞬女の人に見えた。それに、身長が高い。
 ジィッと秋はその人を見つめていた。
「なに?」
 その人は、急にことばを発した。
「あ・・いや。ちょっと。ごめんなさい」
 何に謝ったのかと不思議な顔でこっちを見ていた。
「どこのクラス?」
 秋から質問してみた。
「3クラス」
「あ・・二年生?」
「うん。」
「転校生?」
「うん。」
 二年の三クラスといえば、秋と同じクラスだった。転校生って言うことは、やっぱり知らない。けれど、見覚えはある。なにかといえば、あの夢だった。
「名前は?」
「そういうお前は?」
「俺は志摩秋」
「俺は、寒沢冬(かんざわ ふゆ)」
「そう。よろしく。同じクラスだよ」
 と、片手を差し出してみた。けれど、出す気はなさそうだ。
「ねぇ、どうかしたの?」
 とりあえず手を引き、聞いてみた。
「いや、別に。勉強が嫌だったから来てみた」
「そう・・・なんだか悲しい目をしている。なにかあった?」
「うるさい!」
 急に怒ったような口調と、怒ったような表情で怒鳴られた。
「ご・・ごめん」
「悪い。なんか家がゴタゴタしててストレスたまってたんだ」
「ゴタゴタ?あ・・・言いたくないんだったらいいけど」
「いや、なんか君・・・秋には言えそう。あのよ・・一昨日両親病気で死んじゃったんだ。前からわかってたことなんだけどな・・」
「そうなんだ・・・ゴメン。本当に聞いちゃいけないことだったね。」
「いや。良いんだ。秋は」
「え?おれだったらいいの?」
 不思議そうに、顔を上げて秋は聞いた。
「あぁ。なんか秋は良い。安心する。はじめてみるのにな・・」
「俺は初めてじゃないよ。」
「え?」
「あ・・いや・・あのな。この前夢みたんよ。冬の夢。なんか、置いてけぼりにされたんだ。なんか、だからかな?いっぱい話そうと思ったのは」
「そうなんだ。じゃあ、初対面じゃないんだ」
 なんだか冬は、それを聞いたとたん嬉しそうに笑った。
「なぁ冬。俺らともだちだよな?」
 と明るく聞いて見ると、うんと頷いてくれた。安心して、ホッとため息がでた。
 それから、かえる時間。一緒に帰った。あの後、夏と冬も会い、仲良くなったのだ。
 帰り道。ふと思い出したこと。
「なぁ、冬って由来なに?」
「名前?ん〜と・・確か春夏秋冬だったはず」
「へぇ、なら俺らと同じ仲間だな」
 嬉しそうにいった夏。そうだ。秋と夏も、春夏秋冬から貰ったのだ。なんだか、ほんとうに面白くなってきそうだと、しみじみ思う秋。仲間が増え、自分も話すようになり、なんだか一石二鳥には当てはまらないが、そんなもんだ。
「あ。俺ここ」
 といった冬。そこの家は、なかなか立派だった。
「へぇ〜今度遊びに行って良いか?」
「うん。おいでよ」
 と、約束もして日曜日。約束どおり遊びに行った。家の中はなんだか静かで、何かがありそうだった。てきとうに遊び、しかも冬の部屋にはテレビつき。なんだか豪華。と思う。
 変えるとき、ある言葉を聞いた。
「どうするつもり?冬を・・・」
「俺の家で預かる。一人では過ごせないだろ」
 なんだか、どこかの親戚の人たちが集まっているらしい、思わず秋は立ち止ってしまった。冬はそれに気付き、押すように行った。
「冬・・お前どこかに預けられるのか?」
「あぁ。実はな。この家売るんだってよ」
 深刻な話になったが、そこで良いことを思いついた。
「なぁ、俺とすまない?冬さえ良ければ」
「え?けど、親いるだろ・・・」
「あ・・」
 秋は思わず言われた言葉に、どうしようか迷った。ここで本当のことを言うものなのか。
「いないし・・・」
「え?」
 言ってしまった秋。けれど、後悔はしない。
「おや。俺のところもいないんだ。しかも親の顔なんて忘れてるんだ俺」
 と。泣きそうな顔で言った。すると、後ろから慰めるように抱き着いてきた。
「どうする?俺のところに来るか?」
「いいのか?秋さえ良ければそうさせてほしい」
「じゃあ、決定だな」
「うん。」
 離れて、どこに行くのかと思えば、親戚の集まっている部屋の戸を勢いよくあけて、こう怒鳴りつけた。
「俺は物じゃないから居場所くらい自分で決めます」
 そう怒鳴りつけて、急ぎ足で秋を引張って外に出た。
「暗いし送っていくよ。」
「ううん。いいよ。きちんと話してきなさい。今の話し方だったら、へんな誤解等あると思うし」
「うん。わかった。気をつけて帰れよ」
「うん。」
 双手を振って帰っていった。秋だった。
 冬は家の中に戻り、先ほどの部屋へと向かった。
「私は先ほどいらした志摩さんのお宅で世話をさせてもらうことになりました。」
「そうなのか・・なら学費はどうする?どこの家で出そうか?それとかは、こちらで決めてよろしいか?」
「ハイ。」
 なんだか、意外とまるくおさまった。それから荷物をまとめ、冬は秋の家へと向かった。すると、察していたかのように、秋は玄関の前で待っていたのだ。それに嬉しくなり、にっこりと笑っていた。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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