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| いつもは夜。なのに今日に限って朝になってしまった。なにかあったのだろうか。 「あれ?何でこんなところに居るの?」
 急に話をかけられて、身体がビクッと動いた。今は、岑の身体だ。それに、向こうは鈴斗だった。何かからだがブルブルと震えだしてしまった。
 「そっちこそ・・」
 「だってここは、僕の学校だし・・」
 と、えばっているように見える。けれど、向こうは制服。けれど、こちらはいつものヒラヒラの服。このままではヤバイと思い、屋上から身を乗り出した。
 「なにを!」
 「バイバイ」
 そういって、屋上から飛び降りた。小さい頃から、木から落ちることには慣れっこで、着地も上手くなっている。だからか、ためらいも無く降りれる。けれど、校舎の屋上と、木の高さだったら、百%屋上のほうが高い。
 学校は4階建て。そっから落ちているときは、なんだかすっきりして、もうどうにでもいいって感じだ。
 ドンドン地面は近づいていく。風がしたから入って、なんか涼しいという気分だ。
 
 「あいつ。真面目に落ちやがった」
 我を忘れるように、鈴斗は屋上の下を見下ろした。すると、きれいに着地する岑が見えた。
 「よかった・・乖離」
 安心した感じで、ホッと息を落とす鈴斗。けれど、今乖離と岑のことを言った。
 岑は上を向き、やったぞというように鈴斗のほうを見た。
 岑も一安心だった。さすがにあの高さから落ちることに、恐怖感は無いが、着地をしたことが無い高さは、さすがにためらいはある。そんな人間離れした身体をしているのが、乖離なのだが。
 
 なんとか、身体もなんとか乖離に戻り、丁度開いている窓から入った。その窓は、理科室だった。運のいい事に、そのとき、理科室には誰も居なかった。
 入って、軽く中を見回した。
 「本当に不思議な行動ばかりするんだな岑って」
 と、後ろから急に言われた。足音も何もしなかったのに、驚いてこけてしまった。
 「な・・・どうやって」
 「あまりおどろかない岑がそうまでして驚いてくれると、驚かしガイがある」
 「え?けど、あんま会ったことないよな?」
 「あ・・・いろいろと見てるんだよ!」
 隠すようにあわてて答えるのを見て、なんだか不思議に思えてくる。
 「ねぇ、あんた・・本当にここの生徒?」
 聞こうかどうか考えていたが、この際だから聞いてみようと思って聞いてみた。
 「え?うんいちお。そういう岑は?」
 「どうだとおもう?」
 「乖離・・・」
 「え?」
 「俺はお前が乖離だと思ってる・・」
 急に鈴斗は、目つきを男っぽく変えて、こっちをジィッと見てくる。
 「な・・・なんで?じゃあ、私はあなたのこと魁人だと思う・・」
 仕返しのように、訴える目で見てみた。
 すると、ふっと笑う鈴斗。
 「え?」
 「そうだよな。やっぱりここまで言うとわかるよな」
 そういうと、体つきが一気に変わり、魁人の状態になった。岑も、心を落ち着かせて、自分の状態を思い描いてみた。すると、いつのも身体に戻る。
 「やっぱりな。これしってた?二人が真実を解き明かすと、自分をありの自分にできるって言う言い伝え。」
 「うん・・あの後姉から聞いた。ちゃんとしたことはまだ良くわかっていないって」
 「そうか。」
 「いたいた!魁人!」
 そう言って、急に女子たちが理科室の中に、たくさん入って来た。こう見えても、魁人は女子からの人気c純唐セからな。
 集団から身体をだし、離れたところにある椅子に座った。なんだか、こう見てみると、何か胸の向こうがギュウッと引き締まる痛みが出てきた。
 「なんだ?この気持:」
 
 昼休みも軽々と終わり、なんだかその昼休みも休んだという気持になれずのままだ。放課後。魁人は部活で体育館に行っている。それを見に行く、女子集団。バスケなんて興味ないのに、魁人だけのために行く女子は、なんだか馬鹿みたいに見えてくる乖離。 そのまま乖離は帰っていこうとした。
 けれど、なんだか昔を思い出して。教室で待ってあげたりとかしてみた。ちょうど、いつも魁人は、カバンを教室においていく癖があり、必ず教室に戻ってくるのだ。
 
 「あれ?乖離・・・・。待っててくれたのか。ってか、もう寝てるしかわいいやつ」
 そんなことを言いながら、魁人は乖離に近づいた。もう部活は終わっていた。けれど、疲れていたのか、眠っている乖離を見ると、魁人まで眠くなってくるのだ。
 とりあえず、上着を脱ぎ、そのまま乖離にかけてやった。そして、窓の外を覗いていた。この時間は魁人の場合、もう鈴斗の状態になっている。
 けれど、今日の理科室でのことがあり、もうなることは無かったのかもしれない。
 「あれ?・・魁人?もしかして!寝てた?」
 目をこすりながらゆっくりおきたかと思えば、いきなり体を起こして立ち上がる。すると、くらっと身体が揺れた。それを上手くキャッチする魁人。
 「ばか。そんな急に立ったらふらりと来るのはわかってるだろ!」
 軽く怒鳴る魁人に驚いたのか、魁人のほうをジッと見た。
 「なに?」
 「いや、なんか昔よりもしっかりしてきたなぁって思って」
 「そりゃ成長してるし」
 と、ドドーンという。けれど、身長はまだ負けているという現実だ。それにはチョッとショボ。
 「じゃ。帰ろうか」
 と、カバンを持って乖離は立ち上がった。
 「あぁ。」
 急いでカバンを持って魁人も乖離と教室を出た。
 
 帰り道。女子からの目が、背中から、かなり痛い視線でつき破かれそうだ。チクチクチクチクいたがゆい。
 「どうかした?」
 何か不安な顔をしていたのか、魁人は乖離の顔を覗きこんだ。
 「え?あ。いんやなんでもない。ちょいと考え事や」
 「そう・・?」
 あわてて隠すようにした。なんだか、付き合ってるわけでもないのに、苦しい気分だ。
 
 「じゃあね。」
 もう家の前についていた。軽く手を振り家に入っていくと、重い荷物を置いた気分のように、どっと肩が軽くなった気がする。
 「どうしたの?そんなところで」
 丁度姉が帰ってきたみたいだ。
 「いや・・なんでもない。ってか、そういえばさ、この変身するのって、どうしたらならなくなるの?」
 「え?そんなの簡単よ。好きになった人を思いっきり愛して、ハッピーエンドになったら、勝手に消えるわよ。元々その力があるのは、自分に好きな人が現れたからだし」
 好きな人が現れたら出るらしい。
 「え?じゃあ、いまうちは恋を実行中ってこと?」
 驚いたように、転げ落ちそうになる乖離。それを呆然と姉は見ていた。
 「そうよ?自覚無いの?」
 「ない・・」
 フラフラと、力が抜けたように部屋に戻っていった。
 「なんなのかしらあの子」
 と、不思議になりながら、中へと入っていった。
 
 部屋に戻った乖離は、疲れたようにベットに倒れこんだ。そのままぐっすり眠れる気がする。
 ―今好きな人が居るってことでしょ?
 そういうことです。ってことは誰かと、かなり自分の中で追求してみた。けれど、たった一人の顔しか、思いつかない。それは、魁人だった。
 すると、急に顔がポッと赤くなって、ポットみたいに、シューッと力が抜けた。すると、なぜか岑になっていた。
 「あ〜ぁ・・」
 なったことに気づくと、もうどうでもいいやという感じになってしまった。
 そのままベッドに入って寝た。
 
 次の日。丁度土曜日になった。
 「ん〜・・・」
 まぶしい日光が当たり、そのせいで目が覚める乖離。体を軽く起こしてみると・・・
 「えぇ〜・・・」
 まだ身体が岑のままだった。とりあえずおきて、リビングに行き、ご飯を食べててきとうにのんびりしていた。
 まだ日光をまともに受けてないなと思い、外に出た。すると、なんだか人ぞろいが・・それは、なんだか家の前である決まった日になると、祭りをやるのだ。その決まった日が丁度今日だったりする。
 「あ・・そうなんだ。」
 ポケットに手を突っ込むと、あるはずのないお金がちゃっかり二千円ほどあった。ラッキーとおもいながら、てきとうに歩いてみた。さすがにこの服は、目立つのかチラミされたりが多かった。
 てきとうにフランクフルトを買って、軽く食べてみた。すると、後ろから話しかけられた。
 「ねぇ、今一人?」
 「ちがいます」
 軽く答えて、てきとうに歩いた。なんだったんだ?とでも思っておけば、どうにでもなるのだ。けれど、さっきのは聞かれて一秒もかからず、即答したから何を聞かれたのかほとんどわかっていなかった。
 にしては、この祭りの列は長い。いろいろなものがずらりと並んでいる。ほとんどこれは、駅から学校までという歩いて十五分以上もかかる道を、ずらずら店が並んでいるから、かなり長い。
 とりあえず、この状態はかなり目立つからどうにかしたい。と、乖離は魁人を探すが、近くには居ない。まだ近くに魁人の家がある。とりあえず、一か八かで入ってみた。
 「おばさん!魁人居る?」
 魁人家と、乖離家はかなりのお知り合いだから、結構話しやすい。特におばさんは。
 「いるよぉ〜ってか、まだ寝てるから起こしてきてもらえるかい?」
 ―ラッキー
 「はい。」
 と、笑顔で答えた。
 テッテケテーと階段を上って、急いで魁人の部屋に入った。すると、魁人はすでにおきていて、ベッドの上でボケーッと座っていた。
 「なにやってるの?」
 「ん?」
 もう何も聞こえてないように、目をかいていた。
 「ったく。ってか、何で鈴斗なの?」
 「わっかんない。いつの間にか。だから、部屋を出るにも出られない・・ってか、何でここに居るの?」
 「え?だっておば様が・・・って・・え?なんか知らんけど、おば様わかってたよ?私が乖離だって・・・」
 「まぁ、わかってたんじゃない?話し方で」
 「え?」
 「意外と乖離って、話し方に特徴とかあるから。それに、俺の母さんの事、おば様とかおばさんとか言うのって、乖離ぐらいだし」
 すぐに呆然となる乖離の癖。それにクスクス笑う魁人。
 「何で笑うんだよ!」
 「だって・・わかりやすいんだもん」
 腹を抱えて笑う。それにチョッとピキッときて、近くにあったクッションをいっぱい投げつけた。
 「はいはいはいはい」
 そういって、魁人は乖離に近づき、乖離の頭をゆっくりなでた。
 「な・・なに?」
 投げていた手は止まり、不思議な顔で魁人のほうを見た。
 「いや・・かわいいなぁって」
 そういうと、すぐに顔を隠した。
 「え?どうしたん?」
 乖離は、魁人の肩をチョンチョンと軽く叩いてみた。
 「いや・・・」
 一切こっちを見てくれなかった。
 「いいから祭り行くぞ!」
 と魁人は、乖離の手を引張っていった。
 
 またあの長い祭りの中を手を繋いで歩いた。なんだか、恥ずかしくて、顔を見上げれない。
 
 それから何週間かたち、あれからというもの、前よりも大分魁人と乖離の中が、かなり良くなった。学校でも、登下校も一緒にすることが多くなり、結局部活を見ていたりとかもする。
 なんだか背も、乖離に近づいてきている。それに、他の女子からの視線が、大分前より比べ物にならないくらい痛くなっている。
 「ほら早く帰ろ!」
 部活が終わり、魁人のカバンを魁人に渡して玄関まで向かった。すると、玄関に待ち伏せていた女子が、数人いた。
 「ねぇ、乖離さんだけと話したいんだけどいい?」
 感じの悪いやつら。なんとなくそういうのには、なれてきている。
 「いいよ。魁人先に帰ってて。後から追うから!」
 「待ってるよ」
 「遅くなるかもだよ?」
 「待ってる」
 「わかった。出来るだけ早めに終わらす」
 といって、人目につかないところに連れて行かれた。それはどうでも良いのだが、早く終わってほしい。
 「ねぇあなた魁人とどういう関係?」
 「幼馴染」
 「幼馴染でそこまでする?」
 四方八方からの痛めつけ攻撃?なんだか、こういうのは、数日前からおきている。
 「うるさいな・・で?本当の用件は何?」
 「わかってるんでしょ?余計に魁人に近づかないで」
 「ふん・・・馬鹿馬鹿しい」
 そういって乖離は、かばんをもって玄関に戻った。にっこり笑って魁人に
 「早く帰ろ!」
 といって、一緒に帰った。
 最近は、自分でなろうとしたら、岑になれるようになれた。コントロールがついてきたのだ。
 それに、最近になって気づいたのだが、髪が前よりもだんだんと伸びてきていることだった。だから、岑になったとき、余計に長い。けれど、なんだか切るにももったいないという気持もある。
 次の日。
 学校に行くと、周りの女子から痛い目でこっちを見てくる。そりゃそうだよなと、ほとんどあきらめ状態。まぁ、これから何を言おうと、変わることは何もないと思う。
 昼休みは魁人と弁当を食べ、放課後は魁人とかえる。これ以上の幸せはない。
 「ねぇ、今日も待ってていい?」
 「あぁ。全然いいよ」
 と、にっこり魁人は言ってくれた。
 ゆっくり体育館のギャラリーに登り、いつもの特等席で見ていた。なんだか、バスケも上手くなった魁人を見てみて、なんだか、昔とがらりと変わってしまって、なんだか悲しい気持もしてきていた。
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